「本人曰く、実父から『よそで働いている場合じゃない。ウチがこれだけの社会問題を起こしたんだ。これ以上、会長の顔に泥を塗る前に辞めてこい」と厳命されたそうです。

 家業は火の車でしょうから、本来なら給料をもらえるサラリーマンを続けるべきだったんでしょうけど、最後は身内の不祥事で自ら幕を引かざるを得なかった」

 辞表が受理され、役員室から出てきた彼の姿を、三好さんは偶然見かけました。

 そこには、入社当時の鼻持ちならない覇気は欠片もなく、ただ肩を落としてうつむく、一人の心許ない若者の姿がありました。

「最後、荷物をまとめて会社を出て行く彼の後ろ姿を見て、少しかわいそうな気もしましたが……。でも、これが社会の厳しさだとも思いましたね」

 彼が去った後、職場にはようやく本来の平穏が戻りました。モンスター新人の短すぎる社歴は、周囲に教訓だけを残して幕を閉じました。

 三好さんは今、かつての静寂が戻ったオフィスで、今日も海外への建機輸出の指揮を執っているそうです。

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営