消費税20%に「一律20万円給付」現役世代の過重な世代間負担緩和のためひとつの大胆策を提唱する
前編「2年間限定の「食品消費税0%」より「国民一人に4万円給付」の方がまだマトモだというべき理由」で解説したように消費税を巡る議論が迷走している。
そもそも社会負担に対する国民の不満の根源は、高齢社会を迎え引退世代の社会保障財源を支える現役世代の負担が過重なものになっていることがある。もし消費税を使ってこの負担を平準化しようとしたら、減税とは真逆の発想があり得るのだが……
「五公五民」ではない
消費税というと、「消費税なんてもともとなくていいんだ」という考え方をされている人も結構多い。私は、消費税は必要な税制だと思っていて、逆に元々消費税の減税なんてやるべきではないとの立場だ。
政府に税金を納めている主体を、現役世代、引退世代、企業と、3つに単純に分けて考えてみよう。法人所得税を払っているのは企業、個人所得税を払っているのは主として現役世代、消費税を支払っているのは主として現役世代と引退世代ということになるだろう。企業の実務からすれば、消費税は第二法人税のように感じられ、その負担は重いと感じることにもなるが、そのあたりのことは一応除外して考えよう。
今、大きな問題になっているのは、支えなければならない引退世代が増えているために、現役世代の負担が重くなっていることだ。現役世代の負担をどうすれば軽くできるかは、特に若者たちの中では関心が高い。
社会保険料がかつてない大きさに達していて、国民負担率が5割近くになっていることを、江戸時代の税制になぞらえて、「五公五民」だという人もいる状態だ。ではなんでそんなに大きな負担を強いているかといえば、引退世代が増えて、その医療費や年金が非常に大きくなっているからである。つまり、悪徳政府が働く国民を不当に苦しめていることによって生じているのではなくて、大きく増えた引退世代を支えるために、政府は現役世代から搾り取らないとやっていけなくなっている構造だ。こうした構造を考えた場合に、「五公五民」という評価は、相当にミスリーディングだと感じる。
現役世代の強烈な負担
さて、地域差なんかもあって、一概には言えないが、月額30万円の給料の人の場合、社会保険料はそのうち5万円程度、所得税と住民税は合わせて2万円程度だろう。併せて7万円くらい引かれてしまって、手取りは23万円くらいかと思う。これで、東京で生活をし、賃貸住宅の家賃も払うことを考えた場合に、実質的な生活費は16万円か17万円くらいになってしまうのが普通だ。大学時代に借りた育英奨学金の返済なんかがここに重なってくれば、本当に厳しい生活になってくるだろう。
この非常に重たい現役の負担を軽くするには、引退世代の負担を増やすか、企業の負担を増やす以外には、やりようがない。そしてここで企業も実は結構大きな負担をしているところにも目を向けたい。というのは、月額30万円の給料の人が支払っている社会保険料が5万円だという場合に、企業も同じ5万円を社会保険料として負担していることになるからだ。社会保険料率がどんどん上がる中で、名目の給料は伸びなくても、社会保険料負担が増えることで、企業が支払う人件費はずっと上昇してきた。
なお私は、企業には人件費の負担能力はもっとあるとは思っている。ただ、労働市場をもっと流動化させないと、せっかく人手不足になっているのに、市場原理が働いて給料が増えていく圧力が強まらないので、給料を高めるためには、この点の改善も極めて重要だと思っている。また労働市場を流動化させないと、企業が従来のあり方を大きく変えることが難しくなる。これだと企業に生産性を向上させるのを難しくさせ、これが結果的に給料の上昇を抑制する働きをしていることにも目を向けるべきだと思う。ただし今回は消費税の話をしているので、この点の深掘りはやめておくことにする。
マイナンバーと銀行口座の紐付けさえ出来ていれば
それはともかくとして、現役世代の負担を軽くして、引退世代にその分を負担してもらおうとした場合に、消費税くらいしかいい手段がないというのは実際のところだ。消費税をなくせば、引退世代の負担をなくしてしまうことになるので、その分の負担を現役世代がさらにかぶることになってしまう。それはやるべきではないだろう。
本音で言えば、消費税率を20%にしてもいいと、私は思っている。「なんてとんでもないことを言っているんだ!」と怒り心頭の人も多いだろうが、冷静に考えてもらいたい。私は決して貧しい人からも高い税金を取り立てるようにしたいと考えているわけではない。豊かな消費生活を送っているゆとりある人に、もっと多くの消費税を支払ってもらえばいいではないかと考えているだけだ。貧しい人に対する対策は別途講じればいい。
最低限の生活を送るためには、年間100万円くらいの消費はどうしてもせざるをえないと見なしたとしても、おかしくはない。だから、こんな人たちからも20%もの消費税をむしり取るのは、当然過酷だということになる。
それで、100万円の20%に相当する20万円について、政府は国民に一律に戻してやったらどうかと思うのだ。低所得者層限定ではなく、国民に対して一律に戻してやるのだ。これはマイナンバーと銀行口座の紐付けができていれば、簡単にできる。
消費税を年間20万円を支払った人は、国からの給付金20万円を受け取れば、実質負担は差引ゼロになる。消費税を年間30万円を支払った人は、国からの給付金20万円を受け取れば、実質負担は10万円で済む。消費税を年間40万円支払った人は、国からの給付金20万円を受け取れば、実質負担は20万円となる。これであれば、低所得者層に対してはむしろ負担軽減になるのがわかるだろう。
消費税には、受け取る収入に対して掛かる税の割合が、貧しい人ほど高くなるという逆進性が指摘され、それがあるから消費税の増税はとんでもないと叩かれてきた。だが、こうした政府からの給付を加えれば、この逆進性の問題が解消されることがわかるだろう。
一人20万円の給付を行うと、年間で24兆円が必要になるが、これを計算に入れても消費税20%は増税になる。ただ、これと中所得層以下を中心とした所得税減税を組み合わせることで、現役世代の負担を引き下げることは十分にできるだろう。
社会保険料問題の究極の解決策とは
ところで、現役の負担をもっともっと下げるためには、社会保険料に手をつけざるをえないが、これは高齢者に対しての医療給付を引き下げないと、どうにもならない話だ。これに対する解決策はなかなか見当たらないのが現実である。
私は、70歳くらいまで生きたのであれば、そこから先は自然の摂理に従って当然じゃないかという死生観を、みんなが持つようになってもいいんじゃないかと考えていて、これにより高齢者医療に極めて大きい公的負担が生じてしまう今のあり方に、大きな修正が図られるべきだと考えている。
若い頃にもっと人生を楽しめるようにし、その代わり高齢者になったらジタバタしないというのがいいんじゃないかという価値観が、最終的には広がっていかないと、この問題は解決しないだろう。
消費税をなくせ、現役世代の負担を軽くしろ、高齢者医療を守れという意見は、一見、人間的に見えるであろうが、これらは矛盾する要求でしかない。
消費税をなくせば、引退世代の負担も軽くする。これをやりながら、現役世代の負担を軽くしろは無理なのだ。この上で高齢者医療を現状維持しろとか、さらに拡充すべきだなどというのは、無茶な要求にしかならない。
キレイゴトばかりでごまかす今の政治の在り方はそろそろ卒業すべきではないか。議論を感情的に扱うのはやめにして、日本の進むべき方向を冷静に議論できるようになりたいものだ。
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