アマゾン、アップルはなぜ伸びたのか…〈多くのベンチャー起業家〉に共通する「根拠のない自信」と、成功する企業にしかない“決定的な要素”
久野康成氏の著書『現金10億経営 会社をキャッシュリッチに変える経営戦略』(幻冬舎メディアコンサルティング)によれば、起業家は大きく2つのタイプに分かれるといいます。ひとつは「新しいアイデアに基づいて挑戦する人」。もうひとつは「過去の業界で培った知識・技術・経験を活かして始める人」です。起業において重要な要素の1つが、自分の成功を疑わない「根拠のない自信」です。とりわけ新しいアイデアに挑むベンチャー型の起業家に強く見られるこの自信は、大きな原動力となる一方で、企業の命運を分ける要因にもなり得ます。なぜ同じ資質が、成功と倒産の分岐点になるのでしょうか。財務、規模拡大、組織化という視点から、起業家が陥りやすい落とし穴を探ります。
「起業にリスクは伴うのか?」
もし、あなたがこれから起業したいと思っているなら、これを自問自答してください。リスクがあると思うのなら、起業はやめた方が無難です。
そもそも起業して成功する人は、自分の成功を疑わない「根拠のない自信」がある人です。根拠のない自信は、圧倒的な行動量につながります。行動のプロセスのなかで失敗しても、自分の成功を疑っていないので成功するまで実行を続けます。
また、あなたが起業したいと思うのなら、母親に相談すべきではありません。必ず反対されるからです。根拠のない自信がある人は、人に相談などしません。勝手に行動するパワーのある人だけが起業に成功できるのです。
しかし、この根拠のない自信こそが、成功後に倒産する要因になります。
起業家は大きく2つに分かれる
経営は、常に変化し続けることが試されます。根拠のない自信は、企業の創業時点では重要な要素ですが、継続的に発展するためには、根拠のある自信(高い戦略性)が必要になります。
起業家は、「新しいアイデアに基づく人」と、「過去の業界における知識・技術・経験を活かして始める人」に分かれます。
最初に、「新しいアイデアに基づき始める人」は、社会起業家とも呼ばれ、世の中にないものを生み出すため、爆発的に大きくなる要素があります。たとえば、アマゾン、アップル、テスラ、マイクロファイナンスのグラミン銀行などです。
新しいアイデアを世の中に出すためには、非常にお金がかかります。事業も赤字スタートするため、ベンチャーキャピタルからの資金調達も必要です。
ここでの最大のリスクは、自分のアイデアの良さに自分が惚れ込み、盲目的になることです。自分のアイデアが良いと思わなければ、人に伝えることもお金を集めることもできません。
多くの株主を魅了してお金を集めた起業家が陥る失敗は、「財務」です。
非常に甘い財務予測は、投資家をも魅了しますが、多くのベンチャー起業家は、ここで失敗します。世の中にない商品は、魅力的かもしれませんが、そのような商品を開発するコストだけでなく、マーケティングにも多大なお金がかかります。
「製品が完成すれば売れる」と信じている起業家は、調達した資金の大半を製品開発につぎ込みます。しかし、顧客は自分が最初のモルモットにはなりたくないのです。
新しい物好きなイノベーターは、世の中の2.5%しかいません(イノベーター理論)。
大半の顧客は、様子見をします。この顧客を動かすためには、多大なマーケティング・販売コストが必要です。場合によっては、新製品の開発コストに匹敵するお金が必要なのです。「お金がない」ことに経営者が気づいた時には、もう手遅れです。
良いアイデアにお金を出す人はいても、売れない製品にお金を出す人はいません。
そして、ベンチャー企業は、倒産していくのです。
「過去の知識・技術・経験の延長線上で起業する人」は…
次に、「過去の知識・技術・経験の延長線上で起業する人」は、かなりの確率で成功します。それは、大手よりもリーズナブルな価格で高品質のサービスを提供できるからです。このパターンで失敗する人は、自分に知識・技術・経験があると勘違いしていたか、顧客とのコミュニケーションスキルに大きな問題を抱えている人です。
また、典型的なつまずきのポイントとして、「規模」の問題があります。多くの人が実質フリーランサーのような状態になります。この問題が起きる理由は、起業時に抱く成功の定義にあります。
多くの人は、雇われ時代より年収が多くなることが目的で起業します。そして、確かに「フリーランサー」になって年収は多くなるかもしれません。
しかし、問題は年収という概念に囚われているところにあります。起業で重要なのは、年収ではなく年商です。
年収1,000万円稼いでいた人が、起業して年収2,000万円稼げるようになったと考えれば、確かに成功したかに見えます。しかし、経営者として見れば、たかが年商2,000万円の企業の社長です。
そんな吹けば飛ぶような企業で正社員として働きたいと思う人はいません。私も最初の正社員を雇えるようになるまで2年半かかりました。
また、自分の年収にこだわる人は、人を雇い入れることによる自分の収入減を嫌います。結果として、自分一人でやった方が良い、正社員を入れるよりアルバイトで十分とも考えます。その結果、会社は一人親方のまま成長しません。
大半の起業家はこのトラップに陥るのです。
また、起業家があまりにも優秀なケースもトラップになります。顧客がその起業家のみにつき、組織化ができないことが起きます。私は、これをアーティスト型トラップと呼んでいます。
分かりやすく、画家を例にとってこのトラップを説明しましょう。
ピカソの絵は、ピカソ以外に描けません。模倣すれば、偽物です。特殊な技術を持つ弁護士、心臓外科医、建築家、料理人、経営コンサルタントなどは、優れた技術ゆえ、アシスタントは雇えても、事業を拡大することが難しくなります。宮崎駿や手塚治虫は、プロダクションを持っても一代限りとなりました。
これに対して、ウォルト・ディズニーは、自分がプロデューサーに転換することで組織化に成功し、長く繁栄を続けています。
また、自分が「現場で仕事をするのが好き」という人も結局、組織化に失敗します。これは、「経営」が好きなのではなく、「仕事」が好きな人が陥るトラップです。
賢者の教え
起業には、自分の成功を疑わない「根拠のない自信」が必要。
しかし、この「根拠のない自信」こそが、倒産の要因にもなる。
持続的な経営には「根拠のある自信(高い戦略性)」が必要。
起業家があまりにも優秀だと、組織化が遅れる。
これがアーティスト型経営者のトラップである。
久野 康成
久野康成公認会計士事務所 所長
株式会社東京コンサルティングファーム 代表取締役会長
東京税理士法人 統括代表社員
公認会計士・税理士・社団法人日本証券アナリスト協会検定会員
