犯罪被害者にも「アニマルセラピー」、飼い主「心閉ざす人の癒しに」…愛媛県警が嘱託犬3頭に感謝状
犬が犯罪被害者やその遺族らに寄り添い、傷ついた心を癒やす「アニマルセラピー」を、愛媛県警が全国に先駆けて導入して、今春で丸5年となった。
「嘱託セラピー犬」たちの貢献をたたえて県警は先月、感謝状を贈った。被害者支援への期待が増す犬たちの訓練を取材した。(氷見優衣)
「ステイ!」
松山市土居町の「ドッグガーデンでぐま」。飼い主の指示に、犬たちがピタリと動きを止める。好物の餌を見せられても、勝手に動き出すことはない。犬たちの練度の高さがうかがえる。
犬など動物とのふれあいには、心が安らぎ、痛みやストレスが緩和される、アニマルセラピーの効果があるとされる。医療や介護などの分野で活用されてきたセラピー犬を、県警は2021年度、犯罪被害者や遺族らの精神的ダメージを和らげ、元の暮らしに戻るサポートとすることを目指して導入した。
県警の嘱託セラピー犬はいずれも、一般家庭で飼われるペット。犯罪被害者支援室が窓口となり、被害者らの要望に応じて派遣される。25年度は、広報目的も含めて延べ17頭の嘱託セラピー犬が活動。被害者らと一緒に散歩するなどの支援活動は10件を数える。
刺激に慣れさせる
ドッグガーデンでぐまでは現在、20頭がセラピー犬のための特別講習を受けている。犬のほえ癖やかみ癖に悩む飼い主をサポートする「K9Japan」(松山市土居町)が教室を運営。永木光さんら講師の指導を受けた犬と飼い主の中から、それぞれの試験を経て嘱託セラピー犬として認定される。認定された後も、様々な刺激に慣れさせるため、月に1回以上の訓練を続ける。
K9Japanの鳥飼和樹代表によると、被害者支援に携わるには、通常のセラピー犬よりも多様な訓練を施すという。
通常のセラピー犬は、屋内など活動場所がある程度限定されるのに対して、被害者支援の活動では公園を散歩するなど範囲が広がる。そのため、車の音や野良猫など外界の刺激に興奮しないようにする訓練が重要になる。
3月17日、県警は被害者支援に貢献したとして、嘱託セラピー犬と飼い主、K9Japanに感謝状を贈った。
表彰されたのは、トイプードルとキャバリアのミックス「チョコ」、ゴールデンレトリバー「ラブ」、トイプードル「未空」。制度が始まってからの5年間に、3頭が携わった被害者支援と広報活動は延べ約80回に上る。
チョコの飼い主で宇和島市の会社員、上田恵理子さんは、被害関係者の男の子がチョコと公園で散歩した後、家族から「久しぶりに子どもの笑顔を見た」と聞いたことが忘れられない、と振り返る。未空の飼い主で東温市の西尾美智子さんは「犬は言葉を話せないけど、そばで触れて体温のぬくもりを感じたり、散歩をしたりするだけで気持ちが和らぐ。これからも心を閉ざしている人への癒やしになれたら」と話していた。
