「うつ病」を発症するとどれくらい「薬」を飲み続けるかご存知ですか?【医師監修】

うつ病は薬で治るのかと疑問を抱く方が少なくありません。気分の落ち込みや意欲の低下が長く続くと、日常生活にも支障をきたし、放置すると再発を繰り返す可能性もあります。うつ病は脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こる医学的な疾患であり、適切な治療が必要です。

近年はSSRIやSNRIなどの抗うつ薬が主流となり、気分の安定や意欲の改善を目的に用いられています。薬物療法は効果が現れるまで数週間かかることもあり、副作用や服用期間にも注意が必要です。この記事では、うつ病の薬の効果と服用期間を解説します。

※この記事はメディカルドックにて『「うつ病」を発症するとどれくらい「薬」を飲み続けるの?副作用となる症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 佳宏(医師)

・和クリニック 院長
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。

うつ病の薬の効果と服用期間

うつ病の治療で用いられる薬の種類を教えてください

主に用いられる薬の種類は以下のとおりです。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

三環系抗うつ薬

モノアミン酸化酵素阻害薬

ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬

上記の薬剤は症状や効果によって使い分けられます。治療の効果が乏しい例では非定型抗精神病薬の併用、電気けいれん療法なども検討されます。非定型抗精神病薬は通常、統合失調症で用いられますが補助的にうつ病でも使用される薬剤です。電気けいれん療法では、脳に電気刺激を与えて症状の改善を目指します。

うつ病の薬の種類別に効果を教えてください

うつ病の薬の効果を種類別に解説します。

薬の種類 効果

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) セロトニンの再取り込みを選択的に阻害し、シナプス間隙のセロトニン濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。

セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、気分の安定と意欲の増加を促します。

三環系抗うつ薬 セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。

モノアミン酸化酵素阻害薬 神経内でセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンを分解するモノアミン酸化酵素を阻害し、濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。

ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬 ノルアドレナリンとドパミンの再取り込みを阻害し、報酬系を活性化して意欲や集中力を高めます。SSRIとは異なり、眠気や性機能低下が少ないです。

上記のような効果があり、症状によって使い分けます。

参照:『うつ病の薬物療法』(昭和学士会誌)

うつ病の薬はどの程度の期間飲み続けるのですか?

薬を飲み続ける期間は個人差がありますが、研究ではSSRIを服薬した患者さんのうち50%は6週間以内に寛解しています。そのため、1ヶ月以上の服薬が必要です。途中で服用を中断すると、再発のリスクが高まってしまいます。症状が改善した後も維持療法として少なくとも 1年から3年ほど服用を続け、再発予防を図ることが大切です。複数回再発経験がある場合や重症例では、さらに長期間の継続も検討します。

参照:
『うつ病の薬物療法と電気けいれん療法』(昭和医会)
『うつ病のアルゴリズム治療』(精神経誌)

編集部まとめ


うつ病は気分の落ち込みや意欲低下、睡眠、疲労などの症状があり、日常生活に支障を来す疾患で治療が必要です。主に薬物療法と心理療法による治療が基本で、中等症以上は併用、重症では電気痙攣療法(ECT) や 反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)も検討します。

薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬などを症状に応じて使用します。副作用は吐き気、頭痛、眠気、不眠、性機能障害、体重変動、口渇、便秘、めまいです。依存性は通常ほぼありませんが、急な中止で離脱症状が出るため自己判断の減量は避けましょう。

参考文献

『うつ病の薬物療法』(昭和学士会誌)

『うつ病,うつ状態の薬物療法・心理療法』(心身医)

『うつ病のアルゴリズム治療』(精神経誌)

『うつ病の薬物療法と電気けいれん療法』(昭和医会)