なでしこジャパン ニルス・ニールセン監督退任、アメリカ遠征メンバー発表 宮本恒靖会長と佐々木則夫女子ナショナルチームダイレクター会見要旨
日本サッカー協会(JFA)は2日、都内で記者会見を行い、日本女子代表(なでしこジャパン)のニルス・ニールセン監督の契約満了による退任を発表した。また、今月中旬に行われるアメリカ遠征のメンバー24人も発表。狩野倫久コーチが監督代行を務める。
記者会見は、第1部でJFAの宮本恒靖会長と、佐々木則夫女子ナショナルチームダイレクターが登壇し、ニールセン監督に関する質疑に答えた。第2部では佐々木氏のみがアメリカ遠征に関する質疑に答えた。
【第1部】
●宮本恒靖会長
「なでしこジャパンのニルス・ニールセン監督は、昨年の頭から指揮を執っていただいていた。26年のアジア杯までの契約が満了したということで、このタイミングでその契約を延長しないということを、こないだの日曜に行われた理事会で決議した。ニルス監督はなでしこで初めての外国人の監督ということで、新しいアプローチ、チャレンジをして、色んな新しい空気も生まれたと思っている。プラス、先月のアジア杯の優勝もあった。だが一年間の戦いぶりであったり、日曜に発表したJFAの成長戦略にうたっている、女子戦略の根幹となる主要な国際大会で優勝するというところを考え、いろんな総合的な判断をしたときに今回の決議に至った。後任の監督に関しては、さまざまな手続きが必要になってくるので、ここでは皆さんにお伝えすることはできないが、すでに着手はしている」
●佐々木則夫女子ナショナルチームダイレクター
「私自身も女子委員長という形で、これまでニルス監督と約一年間なでしこジャパンの活動を見ていたなかで、会長が今お話しされたような状況を踏まえて(決断をした)。もちろんシービリーブスカップでいきなり優勝し、またアジア杯優勝という成果から言うと、皆さんもなぜという気持ちになるかと思う。来年にはW杯もある。この一年間、一緒に活動していくなかで、本当に彼は温厚な性格で、非常に人間としてはすばらしく、僕自身も性格は大好きだった。ただ、W杯で優勝するということから逆算したなかで、私は一年間彼との活動のなかで見てきた。どうしてもサッカーに対する指導が少しぬるいというか甘かった。もっともっと突き詰めたトレーニング、アプローチ等々も必要な要素のなかで、彼も僕自身がW杯を優勝した監督としてリスペクトしていただきながら、よく話をしてくれたり、アドバイスをしてくれという状況のなかで、私も一年間一緒に戦ってきた。そのなかで、やはり彼自身もコーチとして修正できるところとできないところがあったという現状があり、途中から狩野コーチが主導で活動するなかで、監督にもっともっと深く入ってサポートする状況にカナダ戦から変わった。非常に選手たちのパフォーマンス、戦術的な要素、チームビルディング等々も変化してきて、ここのところまで来ていた。しかし、やはり今後そういったものを踏まえたなかで、じゃあニルス監督がさらにまたなでしこジャパンにどういうプラスアルファをしてくれるのか、というところでは、本人と話をしたなかで、なかなかW杯に向けてそこまでの情熱というか、技量が足りないということに至った。そこで先日その理事会で決議した瞬間に、僕はデンマークに出向いて彼と話をした。そのなかで(ニールセン監督)本人も、そういう状況であれば私は3月末までの契約の期間だったのでその分についてはわかったと。今回ニルス監督は3月末を持って満期ということになった。今後のことについては、すぐアメリカ遠征がある。狩野コーチが実際にニルス監督の右腕となり、彼もそのなかでこれまで日本で行われたカナダ戦以降は主導でやっている。アメリカ遠征については彼に指揮してもらう方向で十分にやっていける。そこは心配しないで決断をした。次期監督については、色々協会内で理事会を通していかないといけないので、今ここでは皆さんにお伝えすることはできない」
──「指導の甘さ」という言葉は具体的にどのような点にあったか。
佐々木氏
「スペインら強豪国とやった際に、かなりイニシアチブを持たれたなかでの敗戦という経過があった。もっともっと今のなでしこジャパンに修正しなければいけない要素を強く打ち出していくこと(が必要)。性格的なところもあるので、(甘さという言葉が)誤解されるといけないが、実質的に改善しなければいけない要素があり、あまりにも選手たちに対してアプローチが弱いという表現になる」
──昨年11月末のカナダ戦から狩野コーチが主導ということについて。
佐々木氏
「主導というのも、狩野コーチがすべて勝手にやっているという表現ではない。(ニールセン監督だと)どうしても通訳を通して伝えなければいけないということ。語学的に選手も何人かはストレートにわかる感じはあるが、ミーティングとかトレーニングのなかでのテンポで、日本のコーチがストレートに言葉が伝わる。そこは狩野コーチがすべて練習の計画をして、選手の配置をするということではなく、ニルス監督と相談したなかで実施するということ。これまではニルス監督が主導でほとんどやり、8対2でニルスさんがやっていたところを、五分五分だったり、4対6くらいに変わっていった」
──後任は未定だが、日本人監督でいったほうがベストと考えているか。
佐々木氏
「今回、海外の指導者を招へいしたなかでの状況だったので、そこはやはり日本人が指揮したほうがいいのではないかと現状のなかでは思っている。時間のないキャンプ期間で、しっかりとディティールを瞬時に伝えないといけないという状況があった場合に、現状はそちら(日本人)のほうが効率的かなと思っている。もちろん世界にすばらしい指導者がいるので、それはすべてではない。タイムリーに判断していかないといけない要素であれば、やはり日本の指導者がよろしいのかなと考えている」
──英語によるコミュニケーションの問題は予測できたが、想定よりもスムーズに回らなかったのか。また任命責任はどう考えているか。
佐々木氏
「私自身にも任命責任はあると思う。なでしこのチームを率いるなかでの戦術的な要素や、選手たちの特長を生かすための選考するときに、彼はなでしこジャパンの戦術を熟知していた状況もあったので、それは選考の大きなファクターだった。実際にやってみると、もっともっと細かくなでしこが世界に対してやらなければいけないディティールを落とし込めなかった。その判断をしたのは私なので、私に責任はある。その責任ゆえに、このままではどうなのかということを踏まえたなかで監督の契約満了を決断した。技術委員会に諮り、そこで話もしっかり納得していただいたなかで、会長等々にお伝えしながら、そしてその(契約満了の)状況に至った」
──契約は女子アジア杯までということで、彼に与えたミッションはW杯出場だったのか。契約延長は2段階で考えていたのか。
宮本会長
「ミッションとしては、もう一度世界一になりたいということを、彼とオンラインでミーティングをしたときから話していた。W杯出場権(獲得)というものではなかった。そのなかで2段階というか、もちろん監督を招へいするにあたって初めての外国人監督というところで、ある程度の期間のなかで判断できるような軸を持ちたいということがあったので、アジア杯までの契約期間にした」
──日本の女子サッカーに初の外国人監督がもたらしたプラスの面はあるか。後任の監督にはどのような基準を求めていきたいか。
佐々木氏
「外国のコーチがすべてニルス監督のようだとは限らないが、実質的にニルス監督は非常に選手に対しての優しさがあり、けっして選手たちがニルス監督と揉めたとか、そのような強いものがあったわけではない。ニルス監督の日ごろの活動のなかで、スタッフも選手も非常に滑らかなアプローチをしていただいたなかではコーチ陣にも学びがあった。選手たちも気持ちよくサッカーができたというところはあったと思う。後任に(求める要素)は、しっかりと選手たちになでしこのスタイル的な要素を熟知しているというところの要素を把握し、そしてそれを世界大会で通用するようなものに、フィジカルに強さはないが連係連動するとか、そういったものを巧みにアプローチをかけていくとか。われわれはどちらかというと、11人が連係連動した細かいディティールで世界と戦わなければ、なかなかトップトップのクラスには勝ち切れない。それを熟知した指導者に指導してもらい、戦略的な要素も踏まえてやっていただくというところが重要だと思っている」
──いつの時点で退任という相談をしていたのか。
宮本会長
「去年の活動の報告を受けるなかで、シービリーブスカップから始まりスペイン遠征など、都度どういった状況であるかと聞いていた。最終的にはアジア杯を終えてから、佐々木さんのほうから話をいただいた」
──今後の選考はどういうやり方で行うか。またこれまでの選考は、プロセスの詳細を決めてから選考はしていたのか。
佐々木氏
「もちろん、そういった要素はニルス監督を選考するにあたっても話はしていた。ニルスさんの戦術的な要素を、直には見ていないが、一度何回か会合したときのものを参考にしながら選考した経緯もある。今後も、先ほどの要素をしっかりと具現化して表現して選手に落とし込みができる方を選考にするというところは、はっきりしている」
──宮本会長はその方針を受けて理事会で決議を取る。
宮本会長
「プロセスとしては、名前が挙がったものを、佐々木さん、そして自分、今泉(守正)女子委員長とこれから話をするなかで決めて、理事会に入る形になる。時期はアメリカ遠征が4月にあるので、それが終わった後できるだけ早くという感じになる。6月の試合前までにはできるだけ」
──選手側から不満があったのか、佐々木さんの一任だったのか。
佐々木氏
「選手のなかでは、ほとんどそういう意見はなかった。ただ中には何人か、W杯(出場権)を取ったけど、W杯優勝を目指すにあたっては不安だなという声もあった。総合的な状況を見据えたなかで、私自身もそういった決断をしたなかで上層部に諮り、そういったことに至った」
──時系列的にいうと、(29日に)臨時理事会で退任が決議され、(30日に)佐々木さんがナショナルチームダイレクターに着任された。関連性はあったのか。
佐々木氏
「僕の役職が変わったということに関しては、計画されていたもの。女子委員長が今泉(守正)。副委員長から女子委員長になるという流れのなかで、私はダイレクターに移行するということは、ニルス監督の満了には関係ない」
【第2部】
●佐々木氏
「アメリカ遠征のメンバーについて、ニルス監督が契約満了になった。このメンバーは(ニールセン監督が)コーチ陣や私と議論したなかでエントリーしている。今回監督が延長しないでアメリカに行かないという状況のなかでのメンバー構成がキーになるが、コーチ陣とニルス監督を含めたなかで検討を常にしている。監督代行がやるとしても、選考については同じスタンスでエントリーされている。アジア杯は26人だったが今回は24人。世界ランキング2位のアメリカには、僕自身も監督をやっているときにたくさん試合を重ねて、アメリカに育てていただいた。これからW杯に向けてやるなかで、アメリカで3試合もやらせていただける。これまでエントリーされているメンバーがベースで、何人かは代表経験が少ない。選手もアジア杯を優勝したなかで、W杯につなげるような親善試合にしていきたい」
──成宮唯と石川璃音が外れた。あとは全員同じ。ニールセン監督退任があって、新しい選手を呼ばなかったのか。
佐々木氏
「W杯に向けてまだ期間がある。さまざまな選考と、国際親善試合があるなかで、ランキング2位のアメリカと戦うにあたって、先日成功した大会においてチームワークや状況は一番重要な要素になる。今回は新たな選手ではなく、まず現状の力で強豪アメリカとどう戦えるかを検証することが一番ということで、ニルス監督も含めて他のコーチと一緒に把握しながらエントリーした人選になる」
──今回のメンバー選考はニールセン監督は関わっていたのか。
「もちろん関わっている」
──ニールセン監督は退任することを知る前にメンバーを組んだのか。
佐々木氏
「もちろんそう。こんな間際ではなく、その前に構築したなかでやっている。メンバーがある程度形成されたなかで、皆さんにお伝えしている」
──佐々木氏も選考には関わったのか。
佐々木氏
「僕は誰がどうこうとは言っていない。経過を把握するなかでエントリーしているところにも立ち会った」
──メンバーはアジア杯と変わらないが、佐々木氏が言っていたチームワークで戦うようなサッカーができると考えていて、あとは指導の落とし込みが足りなかったと考えているのか。
佐々木氏
「最終的にアプローチするのは監督。このメンバーは今後どういう方向になるかわからない。新たな指揮官がどう選考するかはあるが、実際にいま現状のなかで、監督代行の狩野さんもこのメンバーなら把握している。エントリーするところでも携わっている。アメリカというレベルの高い相手と、これまでのメンバーでしっかり落とし込みをして、どれだけできるかという現状のなでしこジャパンの状況を把握し、次につなげていく」
──コーチ陣について、リア・ブレイニー氏を含め、監督が退任しても継続するのか。スタッフは新監督でも継続するのか。
佐々木氏
「スタッフについて契約条項もある。そのなかで遠征に伴って行ける範疇でもある。コーチ陣は監督代行のみならず、この選手たちを把握しているスタッフがそのままの契約条項でできる。新たな監督で今後どういうコーチングスタッフ構成になるかはその時点で変更になるかわからないが、今回のアメリカ遠征についてはこのメンバーを熟知しているコーチ陣のなかで活動をする」
──監督退任が決まった後、狩野コーチやリアコーチと会話はしたか。
佐々木氏
「これまでニルス監督が率いたコーチ陣なので、皆さんにはお伝えした。そのなかでアメリカ遠征ということで、ニルス監督はいないが、監督代行の狩野コーチを中心としてやっていただきたいとお伝えした。皆さん了解している。リアコーチはニルス監督が特に女性のコーチとして期待を持ってエントリーしていただいたので、そこについては非常に落胆している部分はある。彼女の契約条項のなかで今の段階ではやるという方向」
──山本柚月はデンバー・サミット(NWSL)移籍が決まったが、ビザが下りていないと言っていた。無事に出発できたのか。
佐々木氏
「そのことは把握しているが、その後のことは確認できていない。だが、この遠征には参加できることは聞いている」
──監督退任を、選手たちは聞いていたのか。
佐々木氏
「満期で次の契約をしないという話が進行しているということは、キャプテングループにはメールで話をした。全員にはしていない。アメリカで全員集合したときに説明する」
──アメリカと3連戦。厳しいスケジュールだが、W杯優勝するためにどのようなことを掴んでほしいか。
佐々木氏
「アメリカという、強くてランキング2位の相手と3試合できることはなかなか経験できない。試合をやってできたこと、できなかったことをしっかりまた改善できるようにもう一戦して、さらにもう一戦する。実質的には2試合くらいと思っていたところで3試合もやらせてもらえる。3試合目はアメリカさんがお願いしてきてくれた。一度シービリーブスカップで2-1で勝った要素が強かったと思う。日本と3試合もやって向こうも学べると確認したうえでのオファーだったと思う。われわれは願ってもない親善試合。これを生かしていかないといけない」
──キャプテングループはニールセン監督オリジナルの仕組みだった。長谷川唯のキャプテン就任も含め、今後も続くのか。
佐々木氏
「監督が変われば、その構想で違ってくるとは思う。いま現状のキャプテングループは、僕自身この状況で話をさせてもらった。向こうに行って、ニルス監督体制のなかでやってきたわけなので、彼女たちもその話を聞いてどうするか、アメリカに行って膝を突き合わせて話をしていきたい。新しい監督になった場合、また状況が変わるかもしれない。それも踏まえてやっていきたい。いずれにしても、変動があったときはギクシャクしそうなところで、選手も含めてわれわれがまとめてアメリカというすばらしいチームに挑めるか。難しいタイミングにはなるかもしれないが、そこは取り組む姿勢だったり、一丸となるためにどうすればいいか、彼女たちとも相談しながら突き詰めてやっていきたい」
──今回の遠征のテーマはあるか。
佐々木氏
「狩野監督代行にもミーティングのなかでやっていただきたい要素は伝えたい。実際に強豪国なので、3試合して3連敗で帰ってきたら、ほらみろノリオと言われてしまう。まずはすばらしい相手なので。とにかくもっともっと緻密にできるところはまだまだあると思うので、そのあたりにアプローチして達成してほしい。すべて簡潔にならなくても、かなりの戦い、状況のなかでどう勝ちを取るか。質の高い守備や攻撃ができるかを検証するにあたっては、自分たちの力を出し切らないと検証にならないので、そのへんを取り組んでいただけるように要望したい」
──女子アジア杯で選手たちが自分で考えて修正する力が付いてきたとニールセン監督は言っていた。その成長、心配せずに見てられそうか。
佐々木氏
「よくやっていたというところのベースがまだまだ高くなかった現実がある。もっと彼女たちが持っているものを、それをチームとしてやっていくなかで、もっと結束力を出して、高いレベルのなかで検証できるんだというところは感じていただきたい。そういった意味では、アジア杯で優勝したが、そんなに質の高いサッカー(だったのか)はどうのかなと。質の高いアメリカとやって、もっともっとそういったものを上げていったなかでどうなんだと。高いレベルでやっていかなければ、今後世界を取ろうというようなアプローチはできない。そういったなかでは監督が変わり、みんなで結集して、意識しながらやっていければいい成果を出せる。いい結果だけでなくて、質を上げていくことに立ち返ってもらいたい」
──契約条項もあるということだったが、リアコーチ、狩野コーチに関しては、契約が残っているから4月も継続なのか、更新をしたという形なのか。コーチ2人の中で狩野を代行にした理由はあるか。
佐々木氏
「狩野コーチは、ニルス監督の右腕として、優先順位的には高い位置で指揮をしてくれたということから、こういった代行というようなことでやっていただく。今回もアメリカ遠征についても、こういった形でやっていただきたいと。リアコーチも、その中でコーチという立場でやっていただけるように。契約はすべてコーチ陣一同ではないが、4月中は活動をお願いする期間にある」
──狩野コーチがニールセン監督のもとでコーチとして入り、どういったところを買われて右腕として起用されていたのか。
佐々木氏
「僕よりも、ニルス監督が狩野コーチを評価しており、そういった(右腕)スタイルに変えていったのがまず大きい」
(取材・文 石川祐介)
記者会見は、第1部でJFAの宮本恒靖会長と、佐々木則夫女子ナショナルチームダイレクターが登壇し、ニールセン監督に関する質疑に答えた。第2部では佐々木氏のみがアメリカ遠征に関する質疑に答えた。
●宮本恒靖会長
「なでしこジャパンのニルス・ニールセン監督は、昨年の頭から指揮を執っていただいていた。26年のアジア杯までの契約が満了したということで、このタイミングでその契約を延長しないということを、こないだの日曜に行われた理事会で決議した。ニルス監督はなでしこで初めての外国人の監督ということで、新しいアプローチ、チャレンジをして、色んな新しい空気も生まれたと思っている。プラス、先月のアジア杯の優勝もあった。だが一年間の戦いぶりであったり、日曜に発表したJFAの成長戦略にうたっている、女子戦略の根幹となる主要な国際大会で優勝するというところを考え、いろんな総合的な判断をしたときに今回の決議に至った。後任の監督に関しては、さまざまな手続きが必要になってくるので、ここでは皆さんにお伝えすることはできないが、すでに着手はしている」
●佐々木則夫女子ナショナルチームダイレクター
「私自身も女子委員長という形で、これまでニルス監督と約一年間なでしこジャパンの活動を見ていたなかで、会長が今お話しされたような状況を踏まえて(決断をした)。もちろんシービリーブスカップでいきなり優勝し、またアジア杯優勝という成果から言うと、皆さんもなぜという気持ちになるかと思う。来年にはW杯もある。この一年間、一緒に活動していくなかで、本当に彼は温厚な性格で、非常に人間としてはすばらしく、僕自身も性格は大好きだった。ただ、W杯で優勝するということから逆算したなかで、私は一年間彼との活動のなかで見てきた。どうしてもサッカーに対する指導が少しぬるいというか甘かった。もっともっと突き詰めたトレーニング、アプローチ等々も必要な要素のなかで、彼も僕自身がW杯を優勝した監督としてリスペクトしていただきながら、よく話をしてくれたり、アドバイスをしてくれという状況のなかで、私も一年間一緒に戦ってきた。そのなかで、やはり彼自身もコーチとして修正できるところとできないところがあったという現状があり、途中から狩野コーチが主導で活動するなかで、監督にもっともっと深く入ってサポートする状況にカナダ戦から変わった。非常に選手たちのパフォーマンス、戦術的な要素、チームビルディング等々も変化してきて、ここのところまで来ていた。しかし、やはり今後そういったものを踏まえたなかで、じゃあニルス監督がさらにまたなでしこジャパンにどういうプラスアルファをしてくれるのか、というところでは、本人と話をしたなかで、なかなかW杯に向けてそこまでの情熱というか、技量が足りないということに至った。そこで先日その理事会で決議した瞬間に、僕はデンマークに出向いて彼と話をした。そのなかで(ニールセン監督)本人も、そういう状況であれば私は3月末までの契約の期間だったのでその分についてはわかったと。今回ニルス監督は3月末を持って満期ということになった。今後のことについては、すぐアメリカ遠征がある。狩野コーチが実際にニルス監督の右腕となり、彼もそのなかでこれまで日本で行われたカナダ戦以降は主導でやっている。アメリカ遠征については彼に指揮してもらう方向で十分にやっていける。そこは心配しないで決断をした。次期監督については、色々協会内で理事会を通していかないといけないので、今ここでは皆さんにお伝えすることはできない」
──「指導の甘さ」という言葉は具体的にどのような点にあったか。
佐々木氏
「スペインら強豪国とやった際に、かなりイニシアチブを持たれたなかでの敗戦という経過があった。もっともっと今のなでしこジャパンに修正しなければいけない要素を強く打ち出していくこと(が必要)。性格的なところもあるので、(甘さという言葉が)誤解されるといけないが、実質的に改善しなければいけない要素があり、あまりにも選手たちに対してアプローチが弱いという表現になる」
──昨年11月末のカナダ戦から狩野コーチが主導ということについて。
佐々木氏
「主導というのも、狩野コーチがすべて勝手にやっているという表現ではない。(ニールセン監督だと)どうしても通訳を通して伝えなければいけないということ。語学的に選手も何人かはストレートにわかる感じはあるが、ミーティングとかトレーニングのなかでのテンポで、日本のコーチがストレートに言葉が伝わる。そこは狩野コーチがすべて練習の計画をして、選手の配置をするということではなく、ニルス監督と相談したなかで実施するということ。これまではニルス監督が主導でほとんどやり、8対2でニルスさんがやっていたところを、五分五分だったり、4対6くらいに変わっていった」
──後任は未定だが、日本人監督でいったほうがベストと考えているか。
佐々木氏
「今回、海外の指導者を招へいしたなかでの状況だったので、そこはやはり日本人が指揮したほうがいいのではないかと現状のなかでは思っている。時間のないキャンプ期間で、しっかりとディティールを瞬時に伝えないといけないという状況があった場合に、現状はそちら(日本人)のほうが効率的かなと思っている。もちろん世界にすばらしい指導者がいるので、それはすべてではない。タイムリーに判断していかないといけない要素であれば、やはり日本の指導者がよろしいのかなと考えている」
──英語によるコミュニケーションの問題は予測できたが、想定よりもスムーズに回らなかったのか。また任命責任はどう考えているか。
佐々木氏
「私自身にも任命責任はあると思う。なでしこのチームを率いるなかでの戦術的な要素や、選手たちの特長を生かすための選考するときに、彼はなでしこジャパンの戦術を熟知していた状況もあったので、それは選考の大きなファクターだった。実際にやってみると、もっともっと細かくなでしこが世界に対してやらなければいけないディティールを落とし込めなかった。その判断をしたのは私なので、私に責任はある。その責任ゆえに、このままではどうなのかということを踏まえたなかで監督の契約満了を決断した。技術委員会に諮り、そこで話もしっかり納得していただいたなかで、会長等々にお伝えしながら、そしてその(契約満了の)状況に至った」
──契約は女子アジア杯までということで、彼に与えたミッションはW杯出場だったのか。契約延長は2段階で考えていたのか。
宮本会長
「ミッションとしては、もう一度世界一になりたいということを、彼とオンラインでミーティングをしたときから話していた。W杯出場権(獲得)というものではなかった。そのなかで2段階というか、もちろん監督を招へいするにあたって初めての外国人監督というところで、ある程度の期間のなかで判断できるような軸を持ちたいということがあったので、アジア杯までの契約期間にした」
──日本の女子サッカーに初の外国人監督がもたらしたプラスの面はあるか。後任の監督にはどのような基準を求めていきたいか。
佐々木氏
「外国のコーチがすべてニルス監督のようだとは限らないが、実質的にニルス監督は非常に選手に対しての優しさがあり、けっして選手たちがニルス監督と揉めたとか、そのような強いものがあったわけではない。ニルス監督の日ごろの活動のなかで、スタッフも選手も非常に滑らかなアプローチをしていただいたなかではコーチ陣にも学びがあった。選手たちも気持ちよくサッカーができたというところはあったと思う。後任に(求める要素)は、しっかりと選手たちになでしこのスタイル的な要素を熟知しているというところの要素を把握し、そしてそれを世界大会で通用するようなものに、フィジカルに強さはないが連係連動するとか、そういったものを巧みにアプローチをかけていくとか。われわれはどちらかというと、11人が連係連動した細かいディティールで世界と戦わなければ、なかなかトップトップのクラスには勝ち切れない。それを熟知した指導者に指導してもらい、戦略的な要素も踏まえてやっていただくというところが重要だと思っている」
──いつの時点で退任という相談をしていたのか。
宮本会長
「去年の活動の報告を受けるなかで、シービリーブスカップから始まりスペイン遠征など、都度どういった状況であるかと聞いていた。最終的にはアジア杯を終えてから、佐々木さんのほうから話をいただいた」
──今後の選考はどういうやり方で行うか。またこれまでの選考は、プロセスの詳細を決めてから選考はしていたのか。
佐々木氏
「もちろん、そういった要素はニルス監督を選考するにあたっても話はしていた。ニルスさんの戦術的な要素を、直には見ていないが、一度何回か会合したときのものを参考にしながら選考した経緯もある。今後も、先ほどの要素をしっかりと具現化して表現して選手に落とし込みができる方を選考にするというところは、はっきりしている」
──宮本会長はその方針を受けて理事会で決議を取る。
宮本会長
「プロセスとしては、名前が挙がったものを、佐々木さん、そして自分、今泉(守正)女子委員長とこれから話をするなかで決めて、理事会に入る形になる。時期はアメリカ遠征が4月にあるので、それが終わった後できるだけ早くという感じになる。6月の試合前までにはできるだけ」
──選手側から不満があったのか、佐々木さんの一任だったのか。
佐々木氏
「選手のなかでは、ほとんどそういう意見はなかった。ただ中には何人か、W杯(出場権)を取ったけど、W杯優勝を目指すにあたっては不安だなという声もあった。総合的な状況を見据えたなかで、私自身もそういった決断をしたなかで上層部に諮り、そういったことに至った」
──時系列的にいうと、(29日に)臨時理事会で退任が決議され、(30日に)佐々木さんがナショナルチームダイレクターに着任された。関連性はあったのか。
佐々木氏
「僕の役職が変わったということに関しては、計画されていたもの。女子委員長が今泉(守正)。副委員長から女子委員長になるという流れのなかで、私はダイレクターに移行するということは、ニルス監督の満了には関係ない」
【第2部】
●佐々木氏
「アメリカ遠征のメンバーについて、ニルス監督が契約満了になった。このメンバーは(ニールセン監督が)コーチ陣や私と議論したなかでエントリーしている。今回監督が延長しないでアメリカに行かないという状況のなかでのメンバー構成がキーになるが、コーチ陣とニルス監督を含めたなかで検討を常にしている。監督代行がやるとしても、選考については同じスタンスでエントリーされている。アジア杯は26人だったが今回は24人。世界ランキング2位のアメリカには、僕自身も監督をやっているときにたくさん試合を重ねて、アメリカに育てていただいた。これからW杯に向けてやるなかで、アメリカで3試合もやらせていただける。これまでエントリーされているメンバーがベースで、何人かは代表経験が少ない。選手もアジア杯を優勝したなかで、W杯につなげるような親善試合にしていきたい」
──成宮唯と石川璃音が外れた。あとは全員同じ。ニールセン監督退任があって、新しい選手を呼ばなかったのか。
佐々木氏
「W杯に向けてまだ期間がある。さまざまな選考と、国際親善試合があるなかで、ランキング2位のアメリカと戦うにあたって、先日成功した大会においてチームワークや状況は一番重要な要素になる。今回は新たな選手ではなく、まず現状の力で強豪アメリカとどう戦えるかを検証することが一番ということで、ニルス監督も含めて他のコーチと一緒に把握しながらエントリーした人選になる」
──今回のメンバー選考はニールセン監督は関わっていたのか。
「もちろん関わっている」
──ニールセン監督は退任することを知る前にメンバーを組んだのか。
佐々木氏
「もちろんそう。こんな間際ではなく、その前に構築したなかでやっている。メンバーがある程度形成されたなかで、皆さんにお伝えしている」
──佐々木氏も選考には関わったのか。
佐々木氏
「僕は誰がどうこうとは言っていない。経過を把握するなかでエントリーしているところにも立ち会った」
──メンバーはアジア杯と変わらないが、佐々木氏が言っていたチームワークで戦うようなサッカーができると考えていて、あとは指導の落とし込みが足りなかったと考えているのか。
佐々木氏
「最終的にアプローチするのは監督。このメンバーは今後どういう方向になるかわからない。新たな指揮官がどう選考するかはあるが、実際にいま現状のなかで、監督代行の狩野さんもこのメンバーなら把握している。エントリーするところでも携わっている。アメリカというレベルの高い相手と、これまでのメンバーでしっかり落とし込みをして、どれだけできるかという現状のなでしこジャパンの状況を把握し、次につなげていく」
──コーチ陣について、リア・ブレイニー氏を含め、監督が退任しても継続するのか。スタッフは新監督でも継続するのか。
佐々木氏
「スタッフについて契約条項もある。そのなかで遠征に伴って行ける範疇でもある。コーチ陣は監督代行のみならず、この選手たちを把握しているスタッフがそのままの契約条項でできる。新たな監督で今後どういうコーチングスタッフ構成になるかはその時点で変更になるかわからないが、今回のアメリカ遠征についてはこのメンバーを熟知しているコーチ陣のなかで活動をする」
──監督退任が決まった後、狩野コーチやリアコーチと会話はしたか。
佐々木氏
「これまでニルス監督が率いたコーチ陣なので、皆さんにはお伝えした。そのなかでアメリカ遠征ということで、ニルス監督はいないが、監督代行の狩野コーチを中心としてやっていただきたいとお伝えした。皆さん了解している。リアコーチはニルス監督が特に女性のコーチとして期待を持ってエントリーしていただいたので、そこについては非常に落胆している部分はある。彼女の契約条項のなかで今の段階ではやるという方向」
──山本柚月はデンバー・サミット(NWSL)移籍が決まったが、ビザが下りていないと言っていた。無事に出発できたのか。
佐々木氏
「そのことは把握しているが、その後のことは確認できていない。だが、この遠征には参加できることは聞いている」
──監督退任を、選手たちは聞いていたのか。
佐々木氏
「満期で次の契約をしないという話が進行しているということは、キャプテングループにはメールで話をした。全員にはしていない。アメリカで全員集合したときに説明する」
──アメリカと3連戦。厳しいスケジュールだが、W杯優勝するためにどのようなことを掴んでほしいか。
佐々木氏
「アメリカという、強くてランキング2位の相手と3試合できることはなかなか経験できない。試合をやってできたこと、できなかったことをしっかりまた改善できるようにもう一戦して、さらにもう一戦する。実質的には2試合くらいと思っていたところで3試合もやらせてもらえる。3試合目はアメリカさんがお願いしてきてくれた。一度シービリーブスカップで2-1で勝った要素が強かったと思う。日本と3試合もやって向こうも学べると確認したうえでのオファーだったと思う。われわれは願ってもない親善試合。これを生かしていかないといけない」
──キャプテングループはニールセン監督オリジナルの仕組みだった。長谷川唯のキャプテン就任も含め、今後も続くのか。
佐々木氏
「監督が変われば、その構想で違ってくるとは思う。いま現状のキャプテングループは、僕自身この状況で話をさせてもらった。向こうに行って、ニルス監督体制のなかでやってきたわけなので、彼女たちもその話を聞いてどうするか、アメリカに行って膝を突き合わせて話をしていきたい。新しい監督になった場合、また状況が変わるかもしれない。それも踏まえてやっていきたい。いずれにしても、変動があったときはギクシャクしそうなところで、選手も含めてわれわれがまとめてアメリカというすばらしいチームに挑めるか。難しいタイミングにはなるかもしれないが、そこは取り組む姿勢だったり、一丸となるためにどうすればいいか、彼女たちとも相談しながら突き詰めてやっていきたい」
──今回の遠征のテーマはあるか。
佐々木氏
「狩野監督代行にもミーティングのなかでやっていただきたい要素は伝えたい。実際に強豪国なので、3試合して3連敗で帰ってきたら、ほらみろノリオと言われてしまう。まずはすばらしい相手なので。とにかくもっともっと緻密にできるところはまだまだあると思うので、そのあたりにアプローチして達成してほしい。すべて簡潔にならなくても、かなりの戦い、状況のなかでどう勝ちを取るか。質の高い守備や攻撃ができるかを検証するにあたっては、自分たちの力を出し切らないと検証にならないので、そのへんを取り組んでいただけるように要望したい」
──女子アジア杯で選手たちが自分で考えて修正する力が付いてきたとニールセン監督は言っていた。その成長、心配せずに見てられそうか。
佐々木氏
「よくやっていたというところのベースがまだまだ高くなかった現実がある。もっと彼女たちが持っているものを、それをチームとしてやっていくなかで、もっと結束力を出して、高いレベルのなかで検証できるんだというところは感じていただきたい。そういった意味では、アジア杯で優勝したが、そんなに質の高いサッカー(だったのか)はどうのかなと。質の高いアメリカとやって、もっともっとそういったものを上げていったなかでどうなんだと。高いレベルでやっていかなければ、今後世界を取ろうというようなアプローチはできない。そういったなかでは監督が変わり、みんなで結集して、意識しながらやっていければいい成果を出せる。いい結果だけでなくて、質を上げていくことに立ち返ってもらいたい」
──契約条項もあるということだったが、リアコーチ、狩野コーチに関しては、契約が残っているから4月も継続なのか、更新をしたという形なのか。コーチ2人の中で狩野を代行にした理由はあるか。
佐々木氏
「狩野コーチは、ニルス監督の右腕として、優先順位的には高い位置で指揮をしてくれたということから、こういった代行というようなことでやっていただく。今回もアメリカ遠征についても、こういった形でやっていただきたいと。リアコーチも、その中でコーチという立場でやっていただけるように。契約はすべてコーチ陣一同ではないが、4月中は活動をお願いする期間にある」
──狩野コーチがニールセン監督のもとでコーチとして入り、どういったところを買われて右腕として起用されていたのか。
佐々木氏
「僕よりも、ニルス監督が狩野コーチを評価しており、そういった(右腕)スタイルに変えていったのがまず大きい」
(取材・文 石川祐介)
