山本舞香

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 夫であるHiro(32)がフロントマンを務める「MY FIRST STORY」の活動休止を受けて、SNSなどで「妻が活動休止の原因だ」など心ない批判にさらされている女優の山本舞香(28)。なぜ彼女は世間からの反感を招きやすいのか。ライターの冨士海ネコ氏が分析する。

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 マクドナルドが「ろくでなしBLUES」とコラボし、恋愛リアリティショー「ラヴ上等」がSNSを騒がせ、大宮では「大ヤンキー展」が開催。2026年の今もなお、日本人はヤンキー文化が大好きだ。

 タレント界でも「ヤンチャ」キャラは根強い人気を誇る。自分を曲げない強さ、仲間思いの熱さ、ド派手な私生活はエンタメとして享受され、時に崇拝の対象にすらなる。それなのになぜ、山本舞香さんだけはこうも激しいバッシングにさらされるのだろう。

山本舞香

 夫であるHiroさんがフロントマンを務める「MY FIRST STORY」の活動休止が発表された際、Yahoo!ニュースのコメント欄やSNSでは驚くほど冷やかな意見が書き込まれていたものだ。妻が活動休止の原因だと断じる声に、山本さんは「憶測での発信は控えていただきたいです。私も人間なので。ちゃんと傷つきます。X辞めます」という悲痛な言葉を残してXのアカウントを削除するに至った。

 彼女が抱えた心の痛みや悲しみは察するに余りあるが、一方でなぜこれほどまでに山本さんが「愛されるヤンキーキャラ」として着地できなかったのかを考えてしまう。おそらく日本人が無意識に求める「成り上がり」の物語と彼女との「致命的なギャップ」が関係しているのだろう。

「筋の通った不良」と「威圧的なヤカラ」を分かつ成り上がりの美学 有名芸能人2世との結婚が奪った「ハングリー精神」というセールスポイント

 冒頭の「ろくでなしBLUES」や近年の「WIND BREAKER」など、日本人が熱狂してきたヤンキー像には共通の原則がある。それは、どれほど粗暴であっても根底には「筋」が通っており、弱きを助け、自らの力で天下を取るという「成り上がりの美学」だ。

 しかし、山本さんに寄せられる批判の内容を見ると、世間は彼女に「硬派な不良」ではなく、周囲を威圧する「ヤカラ(輩)」に近いものを感じ取ってしまっているのではないか。

 その象徴として語り継がれているのが、家を訪ねてきた兄の恋人に対して言い放ったとされる「ここ舞香ん家(ち)だから」という強気な発言や、「王様のブランチ」(TBS)での共演者に対する不機嫌な態度、CMやドラマ撮影時のメイキング動画で見せる気だるげな様子などである。気分が乗らなければ反抗心をあらわにする性格は、おぎやはぎやマツコ・デラックスさんといった百戦錬磨の芸能人でさえ、「怖い」「ヤンキー」と苦笑していたほどだ。

 山本さん自身は奔放な態度をとがめられても、「裏表がない自分らしさ」と自認し、「(自分を)作ってまで別にやりたくないです、この仕事」と突っぱねてきた。しかし、その「自分らしさ」が自分より立場の弱いスタッフ相手や公共の場でのマナーを軽視するように映ったとき、世間はそこに「筋」ではなく「タレントパワーをかさに着た傲慢さ」を見てしまう。ヤンキーヒーローたちが殴り合った後に見せる清々しいお互いへの敬意。その要素が欠落して見えることが、彼女の苦悩が世間に伝わらない一因となっているのだろう。

 さらに世間の反発を強固にしているのが、夫・Hiroさんの出自だ。森進一さん・森昌子さんを両親に持ち、兄はONE OK ROCKのTakaさんという、これ以上ない「芸能界のロイヤルファミリー」の一員である。

 しかし、ヤンキーキャラが世間に認められるための最大のセールスポイントは、「どん底から這い上がってきた」というハングリー精神に他ならない。最初から金色に輝く椅子に座っているように見える2世タレントが成功を誇示すればするほど、それは「成り上がり」ではなく「特権の享受」と見なされる。

 全身をハイブランドで固め、華やかなツーショットを発信する夫妻の姿には、金満スタイルという言葉がチラつく。そこには日本人が好む「泥水をすすって成功をつかみ取った」という、ヤンキーコンテンツならではのカタルシスが存在する余地がない。

 ちなみに山本さんは「料理上手」「献身的に尽くすタイプ」とも評されている。ヤンキーキャラにとって「実は家庭的」というギャップは、アンチをファンに変える必勝パターンのはず。しかしヤンキー文化における「尽くす」という行為は、貧しさや苦境を共に耐え忍ぶ中でこそ輝く。夫と共に成功を誇示するようなイメージ戦略の中では、山本さんの愛情深ささえも「選ばれた者同士の排他的な結束」として映り、結果として「鼻につく」という反応を招いてしまっているのだろう。

「アナザースカイ」卒業時のバッシングは期待の裏返し? 愛される先達との差と「負けを知る」勇気

 夫と共にアンチにたたかれながらも、芸能界の最先端を走り抜けているヤンキーキャラといえば、なんといっても工藤静香さんだ。幼い頃の子供をマスコミから守り抜き、手料理や芸術に心血を注ぐその献身ぶりは、今や「あの木村拓哉をほれさせ続ける理由」としての圧倒的な説得力を放つ。

 また、MEGUMIさんや小泉今日子さんがヤンチャさを「包容力のある姐御肌」へとシフトさせ、山本さんと仲良しのみちょぱこと池田美優さんがギャル特有のドライな感覚を「現場を回す賢さ」へと昇華させたのも見事だ。生き残る先達は皆、かつてのトゲのある個性を、いつしか「他者のために振るう力」へと鮮やかに転換させているのである。

 対して山本さんは、まだ「自分を強く見せること」に終始しており、他者や仕事に対する「泥臭い敬意」や「包容力」を視聴者に提示しきれていない。象徴的だったのは、「アナザースカイ」(日本テレビ系)のMC就任と卒業を巡る騒動である。就任時の「イメージ不一致」という逆風を、結婚を機にした卒業という形で自ら「損切り」してしまった。ヤンキーキャラを愛する日本人が見たかったのは、批判にさらされてもなお、仕事に泥臭くしがみつく情熱だったのではないか。

 日本人が愛するヤンキー像とは、突き詰めれば「不器用な敗北者」の物語だ。何度も失敗し、泥にまみれ、それでもボロボロの体で立ち上がる。その姿にこそ、私たちは粗暴さを超えた人間味を感じ、応援したくなるのだ。

 だとすれば、これだけたたかれた山本さんこそ、再び深く愛されるポテンシャルを秘めているともいえる。彼女に必要なのは、ハイブランドのよろいで武装し、強気な言動で敵を跳ね除けることではない。むしろ完璧な武装を一度解き、自分の弱さを見つめ、他者に健気に手を伸ばす青臭さを取り戻すことではないだろうか。

 夫の活動休止という「空白」の時間が、単なる新婚生活を謳歌(おうか)するバカンスなのか、それともゼロに立ち返って自らの表現力を研ぎ澄ます潜伏期間なのかは、今はまだ分からない。言葉で説明する必要も、発表する必要もない。だが、次に二人が私たちの前に現れるとき、そこに見えるのが「これ見よがしの幸福」ではなく、誰もが納得せざるを得ない圧倒的な表現力であったなら、とも願う。その時、彼女は日本のエンタメ界に「夜露死苦」と君臨する女性の一人に進化を遂げているはずだからだ。本気(マジ)で。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部