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契約書を交わしていないのにコンサル料の支払いを求められたが、応じる必要はあるのかーー。こうした相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者は、父の会社の売上を伸ばすために、いわゆるコンサルタントに相談していたそうです。特に契約書などは交わしておらず、コンサルからも「相談料は後から請求することはありません」と伝えられていたそうです。相談者としては、相談の段階は無料で、具体的な成果が出た場合に報酬が発生すると想定していたと思われます。

ところがその後、売上も伸びないで、コンサルタントに「相談をもうやめたい」と話したところ、これまでの相談料を請求されたそうです。

コンサルタント側としては、途中で辞められるとなると話が違うと主張しています。後々会社と契約を結び、月額の報酬をもらう予定で、それまでの相談は無償とするつもりだったそうです。

このような場合、途中で相談を終了させた相談者は、コンサルタントにこれまでの相談料を支払わなければならないのでしょうか。

●契約書がなく「後から請求」と言われた場合、払う義務はある?

結論からいえば、今回のケースでは、相談料を支払う義務はないと考えられます。

まず、契約は、当事者間の意思が合致することで成立します。報酬の支払いについても、意思の合致が必要です。

相談料の金額や「後から請求する」といった条件について、何も合意していないのであれば、報酬を支払う義務は発生しません。

とくに、今回のケースでは「相談料は後から請求しません」と言われている以上、報酬の支払い義務はありません。

また、こういった発言は、後から言った言わないの問題になることが多いのですが、今回はそのやりとりがLINEに残っているそうですから、証拠にできます。

なお、今回の取引が会社と会社の間での取引(商事取引)にあたると考えれば、事前の取り決めがなくても「相当な報酬」を請求できる場合があります(商法512条)。

ただし、今回はコンサルタント側から「後から請求しない」と明示されており、この約束の方が優先します。

●「後出し」は認められるのか?

「後から月額契約を結ぶつもりだった。だから相談は無料にしていた。契約に至らなかったのだから、これまでの分を請求する」という主張を、相談が終わったあとにしてくるケースがあります。

しかし、「本契約に至らなかった場合に、これまでの相談料を払う」という内容について、依頼者側と合意していなければ、そのような義務は生じません。

相手方の「月額契約を結ぶ予定だった」というのは、あくまで相手方の一方的な期待や動機にすぎず、依頼者と報酬の支払いについて意思は合致していません。

後から「そういう条件だった」と言い出しても、後出しでは遅いのです。もちろん、コンサルタントが後から言い出したことに、相談者がそのとき同意すれば話は別ですが。

●相談をやめたことで「契約締結上の過失」は問われる?

「契約が成立すると思わせておいて、正当な理由なくやめる」ような場合には、契約が成立しなかったことについて、相手に損害を賠償しなければならないことがあります。これを「契約締結上の過失」といいます。

たとえば、両者にとって、今後確実に月額契約を締結することが前提となっていたのにもかかわらず、後になってから「経営が難しい」などと言い訳をして、契約を一方的にやめるようなケースでは、そうした責任が問われることもあり得ます。

しかし、本件では、そもそも相談の段階で「後で月額契約に移行したときにお金が発生する」「移行しなかったときはさかのぼって請求する」といった話は、依頼者に全く伝わっていません。逆に、「相談料は後から請求しません」という言葉だけが残っています。

つまり、本件は「支払いの義務を免れるために、言い訳をして契約を一方的に打ち切った」というわけでもないようです。

もちろん他の細かい事情が分かれば結論が変わる可能性はありますが、少なくとも相談内容からだけでは、経営状況やリソースを踏まえて「相談を終了したい」と判断したことは、正当な理由に基づく選択であり、契約締結上の過失は認められないと考えられます。

●コンサルタントである以上、リスクはしっかりと見積もるべき

依頼する側としては、コンサルやアドバイザーに相談するとき、報酬の有無・金額・いつ請求されるかを、可能であればメールやLINEのやりとりでもよいので残しておくと安心です。

コンサルタント側にとっては、今回のような結論は酷に感じるかもしれません。 しかし、自らのコンサル料の回収について、どのような条件なら請求できるか・できないかを事前に十分検討し、取り決めておくことは、リスク管理の上で非常に基本的かつ重要なことです。

厳しい言い方にはなりますが、コンサルタントは会社の経営に関するプロです。自分自身の報酬の回収について、リスクを正しく見積もり、回避策を講じることができないようでは、その資質を問われかねません。

本件は、コンサルタント自身の経営や実務の反省材料として活かしていくべきケースではないでしょうか。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)