緊急地震速報のチャイム音は「タランタラン」?「ピロンピロン」? 言語学者・秋田喜美さんが日本語のオノマトペを徹底解剖!【NHK俳句】

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オノマトペの音選びに正解はない? 秋田喜美さんの解説を紹介!

「くやくや」「しぼしぼ」「ツイーンツイーン」…オノマトペは擬態語や擬音語の総称です。

2025年度『NHK俳句』テキストに掲載の「オノマトペ解剖辞典」は、新書大賞2024(中央公論新社主催)で大賞を受賞した『言語の本質』の共著者で言語学者の秋田喜美さんによる連載です。

様々なオノマトペを俳句とともに徹底解剖するこの連載も、いよいよ最終回! 

『NHK俳句』テキスト2026年3月号より、オノマトペの音選びの「自由さ」についての解説を公開します。

自由なレシピ

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 緊急地震速報のチャイム音を表すオノマトペは何でしょう? ある人は「タランタラン」、またある人は「テロンテロン」と言います。「ピロンピロン」や「チョリンチョリン」という音訳も聞いたことがあります。 
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 オノマトペの音選びには、本来的な正解はありません。猫の声を「にゃー」と写すことにも「必然」と呼べるほど確実な理由はなく、実際、英語では「ミアウ」、韓国語では「ヤオン」、日本語でも鎌倉時代には「ねうねう」と写していました(これが「ねこ」の語源とも)。本連載で解剖してきたオノマトペの音選びとは、あくまで日本語の中で培われた慣習なのです。このことは、オノマトペがただの幼稚な音真似などではなく、歴とした言語であることの表れでもあります。

 とはいえ、ある音がある意味と結びつくことには、本連載で見てきた通り、多くの場合、口の開き方や気流の緩やかさといった音声学的な基盤があります。極めて直感的にしっくりくるオノマトペのイメージには、必然性はなくても、信頼に足る科学的証拠はあるのです。

 「直感に合う音選びが存在する一方で、正解はない」ということは、裏を返せば、オノマトペには自由があるということです。特に、新たなオノマトペを創る際には、個人個人の日本語の直感に任せて音を選ぶことができます。ここまで自由な音選びができるのは、「喜美(きみ)」(人名)や「チャピ」(猫の名前)などの固有名詞とオノマトペくらいではないでしょうか。

 ぜひ皆さんも、本連載がまとめてきた音選びのレシピを参考にしつつ、今回の句例のように自由な遊び心で新たなオノマトペを創ってみてください。

『NHK俳句』テキストでは、オノマトペの自由度のおかげで、(現代では)一般的でないオノマトペでも一定のニュアンスが共有されることについて、例を挙げて解説しています。

講師

秋田喜美(あきた・きみ)
1982年、愛知県生まれ。名古屋大学文学部准教授。専門は認知・心理言語学。著書・編書に『オノマトペの認知科学』『言語の本質──ことばはどう生まれ、進化したか』、Ideophones, Mimetics and Expressives など。
※掲載時の情報です

◆『NHK俳句』2026年3月号より「オノマトペ解剖辞典」
◆イラスト:川村 易
◆参考文献:『オノマトペの認知科学』(秋田喜美著・新曜社)/『言語の本質──ことばはどう生まれ、進化したか』(今井むつみ・秋田喜美著・中央公論新社)/『現代俳句擬音・擬態語辞典』(水庭進編・博友社)/『日本語のオノマトペ──音象徴と構造』(浜野祥子著・くろしお出版)
◆トップ写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート(テキストへの掲載はありません)