◆中国人向けの“裏メニュー”

「この店に来れば、埼玉や東京で同胞が釣った新鮮な魚が食べられると聞いたんだけど」

中華料理店には不似合いなヴィトンのモノグラム柄のエプロン姿のママに尋ねると、「アルヨ!」と元気な返事が返ってきた。そして一旦奥に下がった彼女から渡されたのは、記者の手元にあるものとは別のメニュー。ザリガニ、すっぽん……日本人にはなじみのない料理が並ぶ。店内を見渡すと、中国人客のテーブルにはこのメニューが配されている。まさに“裏メニュー”だ。どうやら、「烤鱼(焼き魚)」が在留中国人から買った食材を使った料理らしい。

供されたのは、チヌ(クロダイ)を焼き、香草と煮込んだ一品。麻辣湯のようなスパイシーな香りと山椒の痺れる辛さが癖になる。おいしい! 値段は3980円だが、前出の木村氏によれば、このサイズのチヌの一般流通価格は2000〜3000円ほど。飲食店での相場を考えれば、かなり割安だろう。高単価の商品の仕入れ値を下げることで、店の利益が最大化される構図だ。しかし、こうした“仕入れ”は違法ではないのか。

◆仕入れの違法性は?

「趣味で魚や貝を取る遊漁者でも、切り身や刺し身にして売る場合は、食品衛生法に基づき保健所の営業許可がなければ違法です。でも、釣った魚をそのまま売るなら許可は不要。実際、地方の沿岸部にある飲食店の店先で『釣った魚買います』という貼り紙を見たこともあります。ただこうした販売を継続的に行っていると判断されれば、“商売”となり違法の疑いが濃厚。密漁ということになります。ただ、日本では遊漁への規制が緩く、あいまいなのが実情です」

こうした背景があるからか、仕入れ値ゼロで海産物を入手する密漁は後を絶たない。誰もが驚く安値実現の裏には、ときにグレーゾーンギリギリの攻防も存在するのだ。

【日刊食料新聞社代表取締役 木村岳氏】
生鮮食品流通の専門全国紙で、築地市場時代から卸売市場を精力的に取材、執筆。市場関係者から知己も多く、情報の精度に定評
※週刊SPA!2月10日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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