陸上トラック競技は「なぜ左回り?」 利き腕、心臓、視線…実験結果でも証明されている「速い」
第4回「トラックが左回りなのはどうして?」
陸上の世界選手権東京大会は連日熱戦が繰り広げられている。スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」は期間中、スポーツ新聞社の記者として昭和・平成・令和とスポーツを40年追い続けたスペシャリスト・荻島弘一氏が、今さら聞けない素朴なギモンに回答する連載を展開。第4回は「トラックが左回りなのはどうして?」。
◇ ◇ ◇
Q.トラックが左回りなのはどうして?
A.右利きの人の方が多いから
【解説】
小学校の運動会から五輪や世界陸上のトラック種目まで、すべて左回り(反時計回り)で争われます。右回りに比べて走りやすく、スピードも出ることが理由で、実際に様々な実験結果でも左回りの方が「速い」ことが分かっています。
実は五輪の陸上競技は1896年の第1回アテネ大会から1904年の第3回セントルイス大会まで、右回りのトラックが使われていました。左回りになったのは1908年ロンドン大会から。1912年に誕生した国際陸上競技連盟(IAAF)が翌年に「トラックは左回りとする」という規則を決めたために、その後はすべて左回りになったのです。
どうして左回りの方が速いのかは諸説あり、明確な理由は分かっていません。有力なのは人間には右利きが多いからという説。利き手の右を大きく振ってカーブを回れる、右利きの場合に軸足となる左足の方が体を支え、進行方向を定めるのに適している……。さらに、左にある場合が多い心臓を過度な動きから守るため、横書きに慣れている視線は左から右に動きやすいため、などなど。様々な理由があがっていますが、左回りに決まった根拠として証明するものはないのです。
ただ、人間の身体が左回りに適しているのは確か。陸上トラックだけではなく、自転車も、スケートも、野球のベースランニングも、みな左回り。フィギュアスケートのスピンや体操のひねりも、左回りが優勢です。競馬場や自動車サーキットは右回りが多いのですが、これは馬や自動車が争う場所。そう考えれば、人が動きやすいから陸上トラックも左回りになったと言えるのでしょう。
(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)
荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

