「自分は不当な扱いをされている」という被害者意識が強い人は陰謀論を信じやすいとの研究結果

陰謀論の中にはいかにも怪しげで突拍子もないものが多く含まれていますが、どういうわけか一部の人々はこれらの説を信じてしまいます。世界15カ国で収集した約1万5000人の回答を分析した新たな研究では、「自分は不当な扱いをされている」という個人的な被害者意識が強い人は、陰謀論を信じやすいという結果が明らかになりました。
Victims of Conspiracies? An Examination of the Relationship Between Conspiracy Beliefs and Dispositional Individual Victimhood - Toribio‐Flórez - European Journal of Social Psychology - Wiley Online Library

Sense of personal victimhood linked to conspiracy thinking in large international study
https://www.psypost.org/sense-of-victimhood-linked-to-conspiracy-thinking-in-large-international-study/
これまでの研究では陰謀論的な思考の原動力として、自分が属する集団が歴史的に被害を受けてきたと感じる「集団的被害者意識」に焦点が当てられることが多くありました。イギリス・ケント大学の博士研究員であるダニエル・トリビオ・フローレス氏は、「多くの陰謀論は、ある集団が強力な集団によって秘密裏に悪意を持って不当に扱われたり、標的とされたりしたという考えに根ざしています」と述べています。
しかし、特定の社会的文脈においては集団としてのアイデンティティとは無関係に、自分を「不正義による被害者」だと認識して反応することがあります。そこでトリビオ・フローレス氏らの国際的な研究チームは、人々が持つ個人的な被害者意識が陰謀論的思考とどのように関連しているのかを調査しました。
トリビオ・フローレス氏は、「私たちは自分自身を被害者だと考える傾向を示す人々に、陰謀論を信じる傾向があるのかどうかという点に興味を持っていました。これを調査するため、私たちは多国籍の研究者チームと協力し、15カ国からデータを集めました。これによって、私たちが観察したパターンが異なる文化的・社会的背景においても成立するかどうかを検証できました」と述べています。

研究チームは、国際的なデータ収集を行う前段階として、ドイツで実施された2件の調査結果を分析しました。2件の調査に参加したのは一般市民と学生を含む合計743人で、年齢層は10代から高齢者まで幅広く、いずれも女性が多数を占めていました。
被験者は、自分が不当な扱いを受けていると感じる状況に気付き、怒ったり反応したりする度合いである「victim justice sensitivity(被害者正義の感度)」を測定するための質問に回答。また、さまざまな陰謀論的思考を測定する質問にも答えたほか、1件の調査では不信感や曖昧なことへの不寛容さ、支配欲、政治的志向といったその他の特定についても尋ねました。分析の結果、被害者正義の感度と陰謀論的思考の間には、2件の調査ともに小〜中程度の正の相関関係がみられました。この相関関係は、不信感や支配欲といった要因を考慮しても統計的に有意でした。
トリビオ・フローレス氏らはこの結果を受けて、オーストラリア・オーストリア・チリ・コロンビア・デンマーク・ドイツ・ギリシャ・インドネシア・メキシコ・ニュージーランド・ポーランド・ロシア・アメリカ・コスタリカを含む15カ国で、合計約1万5000人を対象にした大規模な調査を実施しました。
この調査では、「他の人が私よりも不当に恵まれていると腹が立つ」「他の人は簡単に手に入れられるものを、自分が一生懸命努力しても手に入れられないと不安になる」といった項目を使用して、被害者正義の感度を測定しました。また、「当局はしばしば真実を隠ぺいする」「地球温暖化は科学者によって仕組まれたでっち上げ」「科学者はワクチンの危険性を隠している」といった項目で、陰謀論への信念がどれほど強いのかを調べました。
研究チームが、個人レベルの影響と国レベルの影響を分離してデータを分析したところ、被害者正義の感度が高い人は陰謀論を信じやすいという傾向が明らかになりました。この傾向は「当局はしばしば真実を隠ぺいする」という一般的な陰謀論において最も強く、ワクチン関連の陰謀論になるとやや弱くなり、気候変動の陰謀論では最も弱くなったと報告されています。また、人口統計的要因や政治的志向、宗教性を調整した後でも、一般的な陰謀論とワクチン関連の陰謀論では、被害者意識との関連性は有意だったとのことです。

トリビオ・フローレス氏は心理学系メディアのPsyPostに対し、「私たちのデータによると、人々が自分を不正の被害者であると認識して反応する個人的な傾向は、集団的被害者意識や集団的暴力への暴露といった指標を考慮に入れた場合でも、陰謀論への信念と弱いながらも正の相関関係にあります。言い換えれば、自分を被害者だと見なす傾向のある人は、自国で他者がどれほど被害を受けていると感じているか、あるいは自国が最近どれほどの集団的暴力に見舞われているかにかかわらず、陰謀論を支持する可能性がやや高いということです」と述べました。
被害者意識と陰謀論への信念との関連性は国によって異なり、アメリカやニュージーランド、オーストラリアといった国では関連性が強く、コスタリカやチリ、コロンビアなどの国では関連性が弱かったとのこと。より個人主義的な国では関連性が強い傾向があったものの、これらの違いを説明する明確な要因は見つからなかったと報告されています。
トリビオ・フローレス氏は、「被害者意識を持つ傾向が陰謀論を信じやすくするのか、それともその逆なのか、確かなことは言えません。陰謀論を信じることで被害者意識が高まる可能性を示唆する研究もありますが、この関係の方向性と本質を理解するには、さらなる実験が必要です」とコメントしました。
