ポム・クレメンティエフ、『ミッション:インポッシブル』とトム・クルーズから学んだこと

トム・クルーズが主演を務める人気スパイアクションシリーズの第8作、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』がついに公開を迎えた。タイトルに“ファイナル”とあるように、シリーズのラストを飾る作品とも言われている本作。前作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』で、イーサン・ハント(トム・クルーズ)を追い詰める敵ガブリエル(イーサイ・モラレス)の共犯者として登場したパリス(ポム・クレメンティエフ)が、今作ではイーサンたちとタッグを組む。来日を果たしたパリス役のポム・クレメンティエフに話を聞いた。
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ーー前作『デッドレコニング』にイーサンたちの“敵”として登場したパリスですが、今作で正式にチームの一員になりましたね。
ポム・クレメンティエフ(以下、クレメンティエフ):前作でパリスが死んでしまったと思っった方が意外と多くて驚きました。『デッドレコニング』のラストでテオ(グレッグ・ターザン・デイヴィス)が「脈はある」と言っていたように、生きていたんです! 相変わらず天使のようなキャラクターではないですけどね(笑)。
ーーパリスはそこまでセリフが多いキャラクターではないですよね。そのぶん、表情や身体で表現することの重要度が高かったのではないでしょうか?
クレメンティエフ:その通りです。パリスは身体で表現することが多いキャラクターでした。パリスはセリフが少ないので、彼女が口を開くとみんなが注目するんです。監督からも、そういう意味で“言葉の重み”を持っているキャラクターであると言われていました。アクション映画に登場するキャラクターは説明ゼリフが多くなりがちですが、彼女はそうではない。そこがパリスの魅力だと思います。あとはフランス語で話すところですね。パリスがフランス語で話すので、他のみんなもフランス語で返してきます。実際、私がみんなにフランス語を教えていたんです。トム(・クルーズ)は覚えるのが早くて、ものすごく上手かったですね。トムからは「教えるのがすごく上手いね。通訳としても採用だ!」と言ってもらいました(笑)。
ーー素敵なエピソードですね(笑)。たしかにパリスはずっとフランス語を喋ってますよね。最初の脚本の段階からそうだったんですか?
クレメンティエフ:実は、最初はフランス語じゃなかったんです。クリストファー・マッカリー監督とトムの仕事の進め方は、まずキャスティングからスタートするんです。俳優をキャスティングして、その人の特徴や性格に合わせて、キャラクターにどんどん肉付けしていく。そうやって3人で話し合いながら膨らませていって、最終的にパリスというキャラクターが出来上がりました。
ーーストライキの影響で撮影が一時中止になり、当初の公開予定日から遅れての公開となりましたが、あなた自身にはどういう影響がありましたか?
クレメンティエフ:撮影が延期になったことで、より長い時間パリスというキャラクターを保たなければいけませんでした。食事制限も必要だったので、肉体的にも精神的にも辛い部分はありましたが、そのおかげでしっかりとした生活リズムを意識して日々過ごすことができました。ストライキの期間は全く仕事ができなかったので、スカイダイビングをやったりしていました(笑)。
ーーInstagramにも写真を載せていましたよね。聞くところによると、トム・クルーズがライセンス取得のサポートをしてくれたとか。
クレメンティエフ:そうなんです。前作のときにトムやスタントチームがスカイダイビングをやっていたので、私もやりたいなと思いました。ただ、やりたいからと言って勝手にできるものではなく、ライセンスが必要なんです。なので撮影中、トムに「ライセンスが欲しいんだけどどうすればいいの?」と相談をしました。そのときは「わかった。考えておくね」という感じだったんですが、トムは撮影が終わったらみんなにプレゼントをくれるんです。私へのプレゼントがまさにそれでした。「ここに行けばライセンスを取れるよ」と、ライセンスを取得するためのレッスンなどの手配を全部トムがやってくれていたんです。それで無事にスカイダイビングのライセンスを取得することができました。トムと一緒にもやりましたが、一人でも続けているほど大好きな趣味の一つになっています。
ーー素敵なエピソードですね。トム・クルーズとの仕事はあなたにとってどのような経験になりました?
クレメンティエフ:トムはたくさんの刺激をくれますし、とても寛大な心の持ち主でもあります。一緒に仕事ができたのは最高の経験でしたし、本当にたくさんのことを学びました。ここで話し始めると時間が足りないくらいです!(笑)
ーー少しだけでも教えて欲しいです(笑)。
クレメンティエフ:この2作品の撮影に何年も携わって、表現者として本当に多くのことを学んだんです。あまり好きな言葉ではありませんが、“技術”面においてもそうですし、スタントや人間的な部分でも成長できたと思います。トムをはじめとしたキャスト・スタッフとの友情や絆もそうですね。感情的な部分でも、本当に深く、濃い経験ができました。
ーー“不可能に挑む”というのは俳優という職業にも共通するところがあると思います。あなたがこの仕事をする上で、大事にしていることはなんですか?
クレメンティエフ:うーん……“楽しむこと”ですかね(笑)。真面目になりすぎるのはよくないと思うんです。常に初心を忘れずに、遊び心を持つこと。それが新しい発見に繋がっていくと思います。悲しいシーンを演じるときも、ただどっぷりと悲しみに浸るのではなく、一呼吸おいて、新鮮さを取り入れたい。人間らしく、楽しくやることを大事にしています。
ーーここからはネタバレになってしまいますが、終盤でパリスはベンジー(サイモン・ペッグ)の生死に関わる重要な役割を果たしますよね。あのシーンが本当に最高だったのですが、演じている立場としてはいかがでしたか?
クレメンティエフ:撮影しているときも感じていましたが、あそこは本当に美しいシーンです。それまでパリスが見せてこなかった新しい一面が垣間見えるんです。殺人マシーンだったパリスが、急に人の命を救わなければいけなくなる。そういうちょっとコミカルな部分がありつつも、ベンジーの生死に関わる非常にシリアスな局面なわけですよね。いろいろな感情が渦巻く、本当に美しいシーンでした。
ーーラストシーンも最高でした。イーサンたちの人生はこれからも続きますが、『ミッション:インポッシブル』シリーズもこれで終わりではなく、まだまだ続いていってほしい気持ちでいっぱいです。
クレメンティエフ:私も同じ気持ちです。大好きなシリーズなので、ずっと観ていたいですね。永遠に続いてほしいです。ただ、トムが作ってきたシリーズなので、今後どうなるかは彼が決めること。いま私が言えるはそれだけです。
(取材・文=宮川翔)