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はじめに

SUVの隆盛とディーゼルの没落が同時に起き、ディーゼルのファミリー向けワゴンは存続の危機を幾度も迎えてきた。今後数年で、消滅するかもしれない。とくに、トルクたっぷりの直6エンジンを積むモデルは。

【画像】写真で見るメルセデス・ベンツEクラスとライバル 全4枚

少なくとも英国では、BMWがツーリングを含む3シリーズと5シリーズからディーゼルをなくした。アウディは、S6アバントが買えるほかは、A4とA6のアバントに設定するTDIを4気筒に絞った。


テスト車:メルセデス・ベンツE450dエステート・エグゼクティブ・プレミアムプラス    JACK HARRISON

それだけに、今回の物件は興味深いというユーザーも少なくないだろう。E450dは、そんな迫害されているニーズを満たしてくれるのだろうか。

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

Eクラスのルーツは1947年まで遡ることができるが、それはまたディーゼル車の歴史でもある。Eクラスの祖先ともいうべきW115、そのトランクリッドにDの文字がはじめて掲げられたのは1968年。それからさほど経たないうちに、直5が登場する。5気筒の250D、続いて300Dは、1970〜80年代の最上位ディーゼルであり続けた。この頃、メルセデスはワゴンボディを用意するようになった。

EクラスにはV6ディーゼルが用意された時期もあったが、2017年には古き佳き直6のターボディーゼルであるOM656が登場した。今回のE450dは、その進化版で、48VのISGと電動ターボを採用し、トータルで372psと76.5kg−mを発生。このトルクは、BMW M5に積まれる4.4LのV8に匹敵する。


OM656は2017年から使われている直6ディーゼルで、まずはSクラスに搭載された。マイルドハイブリッドで、低回転で76.5kg−mを発生する。    JACK HARRISON

また、現行Eクラスに設定される4気筒よりシリンダーの多いエンジンは、これが唯一だ。少なくとも、量販モデルでは。現状のラインナップは、4気筒ガソリンのE200と、そのPHEV版であるE300e、ディーゼルは4気筒とPHEVのE220dとE300deで、6気筒ガソリンはない。AMGのE53ハイブリッド4マチックは、611psで10万ポンド(約1930万円)以上。E53にはワゴンもあるが、E450dのユーザーが代替案に選ぶモデルではないだろう。

トランスミッションは9G−トロニックプラスこと9速ATで、基本となる前後トルク配分は45:55。センターデフは多板クラッチ式で、トランスミッションケースに組み込まれる。必要とあれば、前後いずれかに70%の駆動力を送ることもできるが、最新の4マチック+のような完全な後輪駆動にはならない。トルクベクタリングも備えるが、デフそのものではなく、ブレーキを使うものだ。

E450dはトルクが豊かで、それを生かす4WDも持つ。Eクラス・エステートのサスペンションは、リアに自動車高調整機能付きエアスプリングを装備するが、E450dは2500ポンド(約48万円)のリファインメントパッケージが標準装備されるので、四輪エアサスとなる。セダンは後輪操舵も加わる。ちなみに、5シリーズやA6に四輪エアサスは用意されていない。

重量は軽くないが、EV時代にあってはとくに重いようには思えない。ベーシックな仕様では、セダンが1900kg、ワゴンが2065kg。テスト車はエクスクルーシブ・プレミアムプラス仕様で、73Lタンクを満タンにして2167kgだった。

内装 ★★★★★★★★☆☆

2024年のE220dのテストでも現行Eクラスの内装には触れたので、細かい説明は割愛する。クオリティは、長い停滞を経て改善をみたが、スイッチ類のいくつかはいまだにウィークポイントだ。

ヴィジュアル的なバラエティは豊かだが、ゴチャゴチャした感じや安っぽさはない。エレガントなシェイプで円熟味を感じるスペースだが、ガラス張りのダッシュボードに助手席前までディスプレイを埋め込んだハイパースクリーンはなくてもいい。センタートンネルやダッシュボードを覆うのは、このクルマではアルミをきれいに埋め込んだメープルだ。


センタートンネル上の収納スペース内には、USB−Cポート2口とワイヤレス充電器、カップホルダーが備わる。    JACK HARRISON

もちろん、ワゴンを選ぶ大きな要因はスペースだが、現行Eクラスのそれにガッカリすることはない。後席ヘッドルームはセダンより40mm大きく、荷室も広大。PHEV版は床下にバッテリーが配置されるが、マイルドハイブリッドのE450dは615〜1830Lと、5シリーズの570〜1700Lを上回る。フラットで、ワイドで、奥行きは素晴らしくロング。これを超えるのは、スコダ・シュパーブくらいだろう。ただし、通常時の容量は先代よりわずかながら小さく、GLEにもやや劣る。

走り ★★★★★★★★★☆

直6エンジンはスムースに始動し、巡航速度まで楽に心地よく加速する。今や時代錯誤なエンジンかもしれないが、みごとなエンジンだ。48VのISGによる23psのアシストもあり、どんな時も場合も相方になってくれるワゴンとしてこの上ない。

9速ATの変速も、このエンジンのキャラクターにすばらしくマッチしている。シフトの仕方も非常によく考えられていて、回転数やギアを問わず、2.1tもの重さを楽に引っ張ってくれる。


エンジンレスポンスはリニア。ディーゼルらしく、あまり回さなくても力強く加速する。    JACK HARRISON

このエンジンが4500rpmのレッドライン付近より低回転域で実力を発揮することは、4速・48−113km/hのタイムを見れば明らかだ。4.2秒というのは、キックダウンするよりコンマ1秒速いのである。しかも信じ難いことに、AMG GT63と比較してコンマ2秒速いのだ。

電気回転式ターボチャージャーがドライバビリティをどれくらい改善したか、数値化するのは難しい。それは、このシステムがうまく組み込まれているからだろう。このパワートレインは、76.5kg−mのポテンシャルを引き出すのに無駄な時間がかからないようで、フルスロットルではブースト感が残るが、問題になるほどではない。

そのスペックを考えれば、マッチョなディーゼルとしてはリニア。右足で調整するのは容易だ。

操舵/乗り心地 ★★★★★★★★★☆

エアサス仕様のE450dワゴンは、この手のクルマに期待されるような乗り心地とハンドリングのバランスをみせる。このシャシーが高速道路やカーブの多いA級道路をゆったり流したり、舗装の荒れたB級道路の予測できない地形を感じさせなかったりする能力は、Sクラス並みにエクセレントだ。

車内騒音計測は、113km/hでレンジローバー並み、80km/hではそれよりやや静か。すぐにこれがリラックスして乗れる疲れ知らずのクルマだとわかる。レーンキーピングアシストや道路標識アラートは簡単に切れて、ADAS関連のストレスはかなり少ない。


静粛性も快適性も高く、意外にハンドリングもいい。重くて大きなディーゼル車とは思えないほどだ。    JACK HARRISON

ハンドリングにもうれしい誤算がある。バランスはノーズヘビーすぎない整ったもので、アキュラシーも高いので、サスペンションと駆動系をスポーツモードに入れてコーナーを駆け抜けると、穏やかな満足感をもたらしてくれる。移動時間も短縮できる。

キーとなるのはステアリング。ザラザラしたフィールはほぼなく、ギア比も手応えもうまく決められていて、大きくて重いクルマをきわめてイージーに場所決めでき、場合によっては楽しめさえする。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

Eクラスのラインナップは、約5万9000ポンド(約1139万円)のE220d AMGラインからで、PHEVのE300eは6万9000ポンド(約1332万円)近い。E450dはAMGライン・プレミアムが約8万2000ポンド(約1583万円)からだ。

今回のエグゼクティブ・プレミアムプラスは8万8945ポンド(約1717万円)。要求してしかるべき装備はだいたいどれもついていて、ブルメスター製4Dサウンドシステムも含まれる。高価に思えるが、V6TDIのアウディS6アバントは9万2000ポンド(約1776万円)近い。


テスト車は21インチホイールを装着するが、19インチのほうがこのクルマの性格にマッチするかもしれない。乗り心地は、どちらでもすばらしい。    JACK HARRISON

BMWなら、550e xドライブ・プロ・スポーツ・ツーリングが競合する。500ps近い6気筒PHEVで、乗り心地はE450dと同じくすばらしいが、価格は8万2000ポンド(約1583万円)を切る。

燃費は高速道路で16.3km/L、航続距離は1190kmを超える。ただし、速度域が低いと経済性が落ちる。日常使いでは10.6km/Lといったところだ。

スペック

パワートレイン

駆動方式:フロントエンジン縦置き四輪駆動
形式:直列6気筒2989ccターボチャージャー、ガソリン
ハイブリッドアシスト:48V ISG
最高出力:372ps/4000rpm
最大トルク:76.5kg−m/1350−2800rpm
馬力荷重比:180ps/t
トルク荷重比:37.1kg−m/t
エンジン比出力:125ps/L

ボディ/シャシー

全長:4950mm
ホイールベース:2961mm
オーバーハング(前):848mm
オーバーハング(後):1141mm
全高:1472mm


直6のフロント縦置きで、前後重量配分は52:48。空気抵抗係数は、Cd=0.26だ。

足元長さ(前列):最大1150mm
足元長さ(後列):790mm
座面〜天井(前列):最大990mm
座面〜天井(後列):970mm

積載容量:615−1830L

構造:スティール/アルミ、モノコック
車両重量:2065kg(公称値)/2167kg(実測値)
抗力係数:0.28
ホイール前/後:8.5Jx21/9.5Jx21
タイヤ前/後:245/35 R21/275/30 R21
コンチネンタル・エココンタクト6Q

変速機

形式:9速AT
1000rpm時速度:18.7km/h
9速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):1361rpm/1555rpm

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:12.4km/L
ツーリング:16.3km/L
日常走行:10.6km/L
動力性能計測時:3.9km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):−km/L
中速(郊外):−km/L
高速(高速道路):−km/L
超高速:−km/L
混合:15.2〜15.9km/L

現実的な航続距離:901km(平均)/1191km(ツーリング)/772km(日常走行)

サスペンション

前:マルチリンク/エアスプリング、スタビライザー
後:マルチリンク/エアスプリング、スタビライザー

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.3回転
最小回転直径:12.0m

発進加速

テスト条件:湿潤・凍結路面/気温3℃
0-30マイル/時(48km/h):2.1秒
0-40(64):2.8秒
0-50(80):3.8秒
0-60(97):4.9秒
0-70(113):6.3秒
0-80(129):7.8秒
0-90(145):9.6秒
0-100(161):12.0秒
0-402m発進加速:13.5秒(到達速度:171.2km/h)
0-1000m発進加速:−秒(到達速度:−km/h)
0-62マイル/時(0-100km/h):5.2秒
30-70マイル/時(48-113km/h):4.3秒
30-70マイル/時(48-113km/h)・4速:4.2秒
50-70マイル/時(80-129km/h):5.0秒

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
BMW 550e xドライブ Mスポーツプロ(2024年)
テスト条件:乾燥路面/気温12℃
0-30マイル/時(48km/h):1.0秒
0-40(64):2.5秒
0-50(80):3.4秒
0-60(97):4.4秒
0-70(113):5.4秒
0-80(129):6.8秒
0-90(145):8.2秒
0-100(161):9.9秒
0-402m発進加速:12.7秒(到達速度:182.7km/h)
0-1000m発進加速:22.9秒(到達速度:233.8km/h)
0-62マイル/時(0-100km/h):−秒
30-70マイル/時(48-113km/h):3.5秒
30-70マイル/時(48-113km/h)・4速:6.1秒
50-70マイル/時(80-129km/h):3.4秒

ドライ制動距離

30-0マイル/時(48km/h):9.4m
50-0マイル/時(64km/h):25.6m
70-0マイル/時(80km/h):49.4m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.75秒

結論 ★★★★★★★★★☆

そうは思えなくても、プレミアムワゴンの時代が終わろうとするのとともに、ディーゼルも消えることは間違いなくありうる。もしそうなると、メルセデス・ベンツE450dはその手のクルマがいかに使えて、楽で、個性が際立っているかを教える好例として名を残すことになるだろう。

価格は高いし、ディーゼルのファミリーカーとなるワゴンが理性より感性に訴えかけるものだったことはない。しかし、得られるものは多い。この思慮深い仕様は、喜んで買いたくなるような競合モデルと比較しても高い順位にランクインできる。そして、この順位は今後動くことはなさそうだ。


結論:この大排気量ディーゼル車は、スピードとスペース、豪華さを兼ね備える。この手のクルマを欲しているなら、唯一無二の存在だ。    JACK HARRISON