『ガンダムSEED FREEDOM』【ネタバレ】福田己津央監督が語った脚本・メカ・音楽へのこだわり
今回は「SEEDシリーズ」を手掛けてきた福田己津央監督に、両澤千晶の遺したプロットを基にどのように本作を作り上げていったのかなどについて語ってもらった。
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※本文にはネタバレ要素が多く含まれます。劇場版ご鑑賞前の方はご留意ください。
──『FREEDOM』大ヒットおめでとうございます。公開した現在の率直な感想は。
──やはりファンの皆さんの反応は気になるわけですね。
福田 今回は脚本家の両澤(千晶)がいない状態での制作になるわけですからね。プロットはもちろん作ってくれていましたが、セリフはプロットから抜き出したり後藤(リウ)さんに書いてもらったり、自分でセリフを直しちゃったりしているので、今までの『SEED』とちょっと違うところがあると思うんです。それがちゃんと受け入れられるのかという不安はありました。
──不安を抱えながら作業を進めていらっしゃった?
福田 だんだん後半にいくにつれて自分のペースになっていくのが分かるんですよ、「ああ、今(自分を)止める人がいないんだな」って(笑)。両澤のプロットに沿っているので、そんなにおかしなことになってはいないとは思うんですが、セリフ一つひとつのニュアンスでお芝居の感じや与える空気が全然違ってしまうことを実感しています。
──両澤さんの生前の脚本作業はどの辺りまで進んでいたのでしょうか。
福田 プロット自体は結構綿密に書き散らかされていたものがいっぱいありましたので、それを引っ張り出してきて「このシーンとこのシーンを繋げて……」みたいな感じで大枠を組ませてもらっています。
最初に僕が考えていたのはストライクフリーダムが途中でやられて新型MSが登場、という展開だったんです。でも両澤に「それはカッコ良くない」と言われまして(笑)。「最後は旧型で勝つ」という提案を受けて、現在の展開になりました。
──18年という時間が経ったことで、両澤さんのプロットから監督が方向を変えた部分などはありましたか。
福田 「愛」の要素は、もうちょっと薄かったと思います。両澤は恋愛映画に関して「よく分からない」って言っていましたし、そもそも「愛」なんてなにが本物か分からないじゃないですか。だから「愛の物語」を描くとなった時に「もっと具体性がないとダメだ」ということになって、随分と悩んだりもしたんです。
最終的に人を愛するには資格がいるのか、愛される価値とは一体なんぞや、という「資格と価値」というテーマに行き着いて、その辺りを物語のクライマックスで表現してみた感じです。
──それを体現しているのがキラとラクスの関係でしょうか。
福田 そのテーマについてはいろんなキャラクターが体現するようにシナリオを組んでいます。当初明確にあったのはアグネスだし、オルフェたちもそう。でも彼らはメインのキャラクターではなかったので、最終的にはラクスにそれを背負わせるために彼女にアコードの設定を加えて、その運命からラクス自身が抜け出していくことが今作でやりたいところだったりします
それがいわゆる「資格と価値」の最たるところで、彼女の選択こそ遺伝子が全てを決める社会に対する一つの回答じゃないか、と。そこが当時と少し変わった点と言えます。
──ということは、ダイレクトに感情をぶつけるセリフは福田監督が加えた部分?
福田 はい。直接的な表現や感情を口にするセリフはこれまでの『SEED』では避けていた部分ですし、特に「愛してる」なんて両澤は絶対言わせなかったかと。でもまぁ、今の時代ならいいんじゃないかと思いましたので(笑)。
──他に意識的に変えていった部分はありますか。
福田 テレビシリーズをやっている時、キャラクターの描き方が上手くいってないところがありましたので、それを少しでも補正しようとは思いました。そこはある程度上手くいったなっていう気がしていますし、両澤の方向性に合わせて動かしたつもりです。
(C)創通・サンライズ
──18年前と比べて、映像を作る難しさを感じる部分はありましたか。
福田 お台場に行けばユニコーンガンダムの実物大立像が立っていて、横浜の「GUNDAM FACTORY」では ”動くガンダム” があるなど、モビルスーツの大きさや質量感がどんなものなのか、ファンの方たちはある程度理解しているんですね。
そんな現実の光景より映像で観たモビルスーツが軽く感じられてしまったら全部が嘘になってしまうわけで、そこのすり合わせはきっちりしないといけないと思っていました。なので、特に冒頭の戦闘シーンではモビルスーツの重量感・質量感を重視しましたね。
──各モビルスーツの扱いについては、どういったこだわりをもって取り組まれましたか。
福田 どんな機体がどんな理屈をもって成立するか、というのはいろいろ考えました。まず、2回も大きい戦争をやっているので、この世界は経済的にも人口的にもかなり疲弊してるはずなんです。その結果としてテロや紛争があったとしても迂闊に軍隊を出せないし、産業の復興や発展にお金をかけなきゃいけないこともあり軍事費は圧縮されているはずです。ということで、なるべくローコストで生産・展開できることを考慮したモビルスーツにしています。
──その上でメカデザインを大河原邦男さんに発注された?
福田 そうです。例えばライジングフリーダムとイモータルジャスティスは当初、頭や肩のパーツだけ変えてボディや変形機構は統一のものにするつもりで、大河原さんにもそう伝えたんですけれど、全然違ったデザインが上がってきて(笑)。でもカッコ良かったし、結局「メカもキャラクターである」ということから、最終的に今のものに落ち着いた感じです。
そもそものデザインは、18年前既に一回上げてくれていたんですよ。今と違うところというと、ブラックナイトスコードの数がもうちょっと多かったですし、ビグ・ザムとジオングが合体したような上下分離型のデストロイガンダムというアイデアなどもありました。
──今回ズゴックが登場していますが、あれも監督からのアイデアですか?
福田 そうです。実は両澤から「ありきたりだ」とダメ出しがあってアッガイに変更したんですが、『ガンダムビルドファイターズ』で「アッガイが可愛い」と大人気になっちゃったので「これは同じ手を使えない」と(笑)、最終的にズゴックに決まりました。
──まさかの活躍にファンは大いに湧いていました。
福田 そこまで活躍していましたっけ?(笑) 地上でのバトルは『機動戦士ガンダム』の「ジャブローに散る!」と同じカット割りでシャアの戦闘シーンをそのまま再現しようと思っていたんです。でもライジングフリーダムがやられていくシチュエーションを考えた時にあのスピード感ではキラを助けられないということに気づいて、残念ながらボツになってしまいました。
あと、そもそも水陸両用モビスルーツなんだから「翼を付けちゃダメだろ!」って話なんですけれど、水面スレスレを飛ぶぐらいならいいか、という話から結果的に「もうそのまま宇宙に行ってもいいかな」ということになっちゃいました(笑)
──メカギミックでいうと、戦艦ミレニアムでのラミアス艦長の戦闘艦橋への移動も印象的でした。
福田 防御隔壁の最も厚い艦体中央部のCIC(戦闘指揮所)で指揮をするのが常識になっていますが、やっぱり艦長は戦艦の檣楼の一番上にある戦闘艦橋で指揮を執るのが一番カッコいいと思っているんです。
宇宙ではさすがに剥き出しにするわけにはいかなかったのでドーム内のものにはしましたが、あのスタイルでラミアス艦長が戦闘指揮を執る描写は、今回ぜひやってみたいことの一つでした。
──楽曲に関しても、『SEED』と関わりが深いアーティストが再集結してくれました。
福田 西川さんにSee-Saw、さらには小室哲哉さんに中島美嘉さん、玉置成実さんですからね。本当にどんだけ贅沢なんだよって話ですよ(笑)。すごく心強い応援をいただきました。
中でも西川貴教さんは、あらゆる意味で『SEED』の恩人です。映画公開が実現するまでの下地を作ってくれただけでなく、ファンにずっとそれをアピールし続けてくれた方でもあるわけですから。もし西川さん以外の人に主題歌を頼んだら「人の心がない」って言われてしまいますね(笑)。
──See-Sawの19年ぶりの新曲がラストに流れるのは、本当に感動的でした。
福田 やっぱり『ガンダムSEED』が最初に世の中に出た時のムードを、20年経った今、改めてファンの皆さんに感じてほしいという思いがありました。そのためには梶浦(由記)さんに曲を作っていただき、石川(智晶)さんに歌ってもらうことがどうしても必要だと思いました。
プロデューサーや僕から改めてお願いしたのですが、お二人には快く引き受けていただいて、本当に感謝しています。
──では最後に、今作は監督のキャリアの中でどういう位置付けになる作品だと思われますか?
福田 分からないですね……キャリアがどうこうっていうのにあまり興味はなくて。一番大事なのは「誰に対して作品を届けているのか」ということを忘れないこと、それがどういう風に受け入れられているかというところにまで責任を持つこと、そして何より優先すべきはファンであることだと思っています。
そのスタンスでこれまで続けてきたわけですし、今回の『ガンダムSEED FREEDOM』もそういう作品のひとつです。ファンの皆さんが作品を応援してくれる、その結果によって僕の仕事の評価も決まっていくんじゃないでしょうか。
福田己津央(ふくだ みつお)
10月28日生まれ。代表作は「ガンダムSEEDシリーズ」(監督)、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』シリーズ(監督)、『GEAR戦士電童』(総監督)、『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』(クリエイティブプロデューサー)など。最新作は『グレンダイザーU』(総監督)。
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