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新車当時は過去最も売れたフェラーリ

1990年代、進むべき道に少し悩んでいたフェラーリ。量産モデルに対する評価は優れず、モータースポーツでは精彩を欠いていた。

【画像】史上最高の跳ね馬の1台 フェラーリ F355 後継の360 モデナ F8トリブートと296も 全120枚

CEOに就任したルカ・ディ・モンテゼーモロ氏は、魅力に溢れる情熱的な量産モデルが必要だと理解していた。ブランドに対する信仰心を、再び喚起することが求められた。1989年に登場した348を凌駕する、ドライビング体験の提供が不可欠だった。


フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

マラネロが1994年に生み出した公道用モデルは、その理想的な回答になった。市場は魅力へ共感し、1万1552台がラインオフ。当時のフェラーリとしては、過去最大の台数が売れたモデルになった。

モンテゼーモロ氏の期待に、応える以上の内容だったのかもしれない。近年でも、史上最高のフェラーリの1台として評価は高止まりしている。プロポーションやボディシェル、リアのサブフレームなどは348と共有していたが、中身はまったくの別物といえた。

F355といえばシンプルなボディラインと、リトラクタブル・ヘッドライトを備えるフロントノーズを持つ、ピニンファリーナ社によるスタイリングが特長といえる。同時に、3.5L V8エンジンも魅惑的な存在だった。

自然吸気でドライサンプで、フラットプレーン・クランクが組まれ、心を揺さぶる8500rpmまで躊躇なく回った。最高出力は348の25%増しとなる385ps、最大トルクは36.9kg-mを叶えていた。

バランスに長けたシャシーで操縦性も秀逸

1気筒に5バルブという設計はF1譲り。鍛造アルミニウムを用いたピストンに、チタン製コンロッドを採用している。その結果エンジンは軽量で、車体の乾燥重量も1380kgに留まった。

バランスに長けたシャシーには、軽く回せるステアリングと電子制御ダンパーが組まれ、操縦性も秀抜。美しいゲートで仕切られた6速MTは扱いやすく、身近な環境で跳ね馬を謳歌することを可能としていた。


フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

さらに、オプションとしてフィオラノ・パッケージも用意。車高を落としトレッドを拡大することで、一層鋭敏な身のこなしを得ることもできた。

1997年には電動油圧式のセミオートマティック、6速「F1マチック」が登場する。これは、他のチームに先駆けF1マシンにシフトパドルを導入した、スクーデリア・フェラーリにちなんだネーミングだ。

能力に長けたF355は、モータースポーツでも活躍。チューニングされたF355によるワンメイクレース、F355チャレンジ・シリーズが1995年にスタートしている。現在のフェラーリ・チャレンジ・シリーズへと受け継がれる、人気カテゴリーの基礎を築いた。

F355のボディスタイルは、クーペのベルリネッタとタルガトップのGTSというラインナップだったが、同じ1995年には電動ソフトトップを得たスパイダーが登場。好調な販売を後押ししている。

ある程度の不具合と高い維持費はつきもの

早いもので登場から既に30年近くが経つため、F355もクラシック・フェラーリとして考えていい。ある程度の不具合と、高めの維持費はつきものとして捉えたい。

慎重に過去の整備記録を確認し、状態を精査し、ベストといえるF355を発見できれば、生涯飽きることのないであろう至高のドライビング体験を堪能できる。美しいボディやV8サウンドだけでも、鑑賞する価値はある。将来の投資にもつながるはずだ。


フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

新車時代のAUTOCARの評価は

F355は画期的なフェラーリだ。属するクラスに留まらず、格上のモデルを凌ぐほどの能力を備えている。ディーノ 246 GT以来となる、フェラーリ最高のスポーツカーとして讃えていい。

見事な完成度の高さは、マクラーレンF1の価格が7倍もすることへ疑問を投げかける。過去に評価してきたクルマでは、前例のないことだ。(1994年10月19日)


フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

購入時に気をつけたいポイント

エンジン

V8ユニットは比較的堅牢ながら、1996年より以前のF355に用いられているブロンズ製のバルブガイドが摩耗しやすい。オイルが燃焼し、重大なエンジントラブルを招くことにもつながる。

それ以降はスチール製に変更され、強度が増している。ディーラーでどちらなのか確認しておきたい。シリンダーの圧縮比テストで、バルブガイドの摩耗具合をチェックできる。


フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

F355のエンジンは燃えることがある。出火を理由にリコールも出されており、対応済みか確認したい。タイミングベルトの交換は3年毎。エンジンのリビルドには、英国では数1000ポンド(100万円前後)の予算を準備する必要がある。

エグゾースト

セラミック触媒コンバーターには寿命がある。専門ガレージでの修理も可能だが、アフターマーケット製の交換部品で対応も可能。一部のオーナーは触媒レスにしていることもあるが、車検は通らない。

エグゾースト・マニフォールドにはヒビが入ることがある。早めに修理しないと、完全に割れてしまう。信頼性を取るならアフターマーケット製となるが、純正部品より割高だ。

排気ガスの流量を調整する、バイパスバルブが故障することがある。こちらもアフターマーケット製での対応が可能。解決策として、バルブを常時オープン状態にしてしまうのも手だ。

ルーフ

タルガトップの場合は、ウエザーストリップから雨漏りしがち。シリコンオイルでしなやかさを高めてある程度は防げるものの、交換した方が確実。

スパイダーでは電動ソフトトップの動作を確かめる。開閉時にシートを前方へスライドさせる必要があるが、ポジションセンサーが故障すると動かなくなる。油圧ポンプも不具合を招きやすく、交換は高く付く。可動部分には定期的に潤滑油を指したい。

サスペンション

可変ダンパーの上部にあるアクチュエータが故障しがち。交換は難しくない。

インテリア

ダッシュボードのレザーは、高温状態が長く続くと収縮して裂けてくる。全体を張り直すしか対策はなく、費用も掛かる。樹脂製のセンターコンソールまわりは表面がネバつく。こちらも安くは原状復帰できない。

シフトノブの塗装は剥がれやすく、ノブの交換が手っ取り早い。ヒーターバルブやエアコンは故障しがち。安く修理できないので、事前に動作を確認したい。

ボディ

ベルリネッタとGTSでは、キャビン後方のバットレスがリアウィングと接する部分で腐食する。再塗装で対応可能だが、定期的に再発する。リアサブフレームなどは表面が錆びやすい。

専門家の意見を聞いてみる

エコモーティブ社代表

「まず確認したいことは、ダッシュボードにレイアウトされたボタン表面のネバつき。この時代のフェラーリでは定番の悩みといえます。多くは丁寧に乗られているので、それ以外のインテリアは新車のように美しいはずです」


フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

「3.5L V8エンジンのサウンドは、クルマ好きを酔わせます。その鑑賞のために購入を考えても良いほどです。マラネロが生み出した、最も素晴らしいV8エンジンの1つだと思います」

「ドライバーの自信を鼓舞する、驚くほど快適なシャシーも魅力。本当に日常的に乗れるスーパーカーだと思いますよ。CDやラジオがついていますが、実際のドライバーはエグゾーストノートでドライブを楽しんでいるようですね」

英国ではいくら払うべき?

6万4000ポンド(約1062万円)〜6万9999ポンド(約1161万円)

英国では、走行距離が8万kmと長めのF355が売られている価格帯。セミATかMT、ベルリネッタかスパイダーを選べる。装備オプションは控えめな例が多い。

7万ポンド(約1162万円)〜9万9999ポンド(約1659万円)

リアのメッシュグリルやフィオラノ・パッケージ等のオプションが装備されたF355を英国では狙える価格帯。各ボディスタイルがあり、走行距離は短めになってくる。

10万ポンド(約1660万円)〜14万9999ポンド(約2489万円)


フェラーリF355 F1(1998年/英国仕様)

オプションが充実した状態の良いF355を英国では探せる。お好みのボディスタイルをどうぞ。

15万ポンド(約2490万円)以上

殆ど乗られていない極上のF355が出てくる。オプションもふんだんに搭載されている。

英国で掘り出し物を発見

フェラーリF355 F1 登録:1998年 走行距離:5万1500km 価格:6万7950ポンド(約1127万円)

ボディカラーは理想的なロッソコルサ。これまでのメンテナンス状態も素晴らしく、状態は相当良いようだ。売り手は、お金を惜しまず維持されてきたと主張している。