マツダとミズノがドライビングシューズを共同開発!? 異例のコラボはなぜ実現した?

写真拡大 (全3枚)

新たな発想で生まれたドライビングシューズとは?

 マツダとミズノがドライビングシューズを共同開発し、クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を通じて予約を受け付けると発表しました。

 今回のドライビングシューズは、これまでにないまったく新しい発想で生まれたといいます。いったいどんな商品なのでしょうか。

マツダとミズノが共同開発したドライビングシューズ

【画像】マツダ&ミズノのドライビングシューズは機能的でオシャレ!

 ドライビングシューズの技術的な特徴は大きくみっつあります。

 ひとつ目は、ペダルのコントロール性を向上させる「背屈アッパーサポート」です。

 シューズの前上部にストレッチパーツを、後上部にジャバラ構造メッシュを採用。

 ペダル操作時、ドライバーは足の自重とペダルの反力に対して、膝と足首の間にある前脛骨筋(ぜんけいこつきん)と腓腹筋(ひふくきん)を使っていますが、足の表側にある前脛骨筋をアシストすることでペダル踏込量の調整がしやすくなり、ペダル踏みかえ操作がしやすくなりました。

 ふたつ目は、「足裏情報伝達」です。

 ペダルからの的確な情報を得ることと歩行時のクッション性を確保することを両立させるため、ミズノが開発した「MIZUNO COB」を採用しました。

 みっつ目は、「踵支点の安定性」です。

 アウトソールは、床面への足の接地を安定させるラウンドソールを採用。踵部分に丸みを持たせてアッパーまで巻き上げる構造です。

 販売については、「Makuake」で2021年7月6日から予約販売開始。価格は3万9600円(消費税込)で、早期購入割引もあり。お届けは2022年3月末を予定しています。

 サイズはEE相当で24.5cmから28.0cmとなり、重さは約270g。カラーは上質なグレーとブラックをアレンジした1種類のみで、日本国内で生産されます。

異業種のコラボはどんな経緯で実現した?

 今回のケースはクルマ業界として異例のコラボですが、一体どのような背景から生まれたのでしょうか。

 マツダサイドのドライビングシューズ開発を取りまとめた、車両開発部の梅津大輔(うめつだいすけ)氏によると、最初のきっかけは2015年にマツダが始めた異業種間の技術交流で、両社のエンジニアのスキルアップが目的でした。

「人中心」のものづくりをおこなうマツダとミズノがコラボ

 それはシューズに特化したことではなく、ミズノはゴルフクラブやバットなどを含めてさまざまな商品での知見があり、そのうえで素材領域についてマツダとミズノそれぞれの各部署で個別の技術交流が進みました。

 現在でも基礎研究分野で両社の交流はあるのですが、そのなかで、サスペンションや車両のダイナミクス(運動性能)を研究開発する車両開発部と、ミズノのフットウエア開発部門で「(考え方として)非常に近いモノを感じた」といいます。

「非常に近いモノ」とは、「人中心」のものづくりです。

 マツダには「ロードスター」に代表される「人馬一体」という考え方があり、またミズノには「人の動きを研究し、人と用具の調和を追求する」との開発思想があります。

 両部門での技術交流は2017年末から始まり、ドライビングシューズという商品の開発へと具体的な話が進んでいきました。

 そのなかで、マツダとミズノそれぞれが普段おこなっている開発の違いに直面した、といいます。

 マツダの場合、「魂動デザイン」による美しいシューズを目指すため、デザイン本部のクラフトマンシップの匠がシューズのクレイモデルを作成しました。

 そこからミズノのパタンナーの匠が生地の組合せによって機能を作り上げていったのですが、その工程がマツダにとっては理解が難しかったというのです。

 こうした経験が今後、クルマのインテリアでの革の使い方や伸縮素材の布の開発で応用できると考えています。

 一方、ミズノにとっての驚きは、「人中心の設計」を支える「人中心の評価」だといいます。

 実際にクルマを走行させた際、テスターからの細かいフィードバックにあります。そのなかで、言語化したり指標化することで、機械では感じ取れない細かな違いを的確にフィードバックし、それにより設計の精度が高まることに気付いたというのです。

 また、ミズノにとってはシューズにかかる力が「とても小さい」ことに対する開発で苦労したといいます。

 たとえば陸上短距離の場合、シューズにかかる力は1500Nから2000N(150kgから200kg)、走り幅飛びでは5000N(500kg)、さらにやり投げでは8000N(800kg)にも達します。

 一方、ドライビングシューズでは30N(3kg)という小さな数値です。

 また、各種スポーツではシューズの前部に強い力がかかりますが、ドライビングシューズでは踵部分の力が重要となる点も大きな違いです。

 さらに、走行中の横Gへの対応も、ミズノの開発者たちにとってはシューズ開発における新たなる挑戦だったといいます。

 こうしたマツダとミズノそれぞれの知見と気付きをもとに、新型コロナ禍ではオンライン会議を主体としながらも、テストコースなどで実走もおこないました。

 貴重な実走時間を有効活用するため、テストコースにはデザイナーとパタンナーも入り、テスターからのフィードバックを聞き、また計測機械によるデータを見ながらその場で作業をするアジャイルな開発手法を取り入れたといいます。

 異業種コラボによって生まれた、理想的なドライビングシューズ。

 その履き心地、そして使い心地とはいかなるものか、完成品を手に取る時がいまからとても楽しみです。