食通に早くも話題! イタリアンのレジェンドシェフが手がける新店とは
1990年代のイタリア料理ブームを牽引したパイオニア・山田宏巳さんが、2020年12月1日に新たな店「インフィニート ヒロ」をオープンした。かつて原宿にあった伝説の店「バスタパスタ」や、「リストランテ ヒロ」のシェフを務めており、実は「フルーツトマトの冷製カッペリーニ」を考案した人物でもある山田さん。そんな彼が新天地に選んだのは、全21席の小さなリストランテだった。
山田宏巳シェフが辿り着いた、今のリストランテのあり方
2020年10月ごろから、山田宏巳さんが赤坂に新しい店をオープンするという話はグルメの間で話題になっていた。山田さんといえば、かつて原宿にあった伝説のイタリア料理店「バスタパスタ」のシェフを務めたことで知られ、その後も日本のイタリア料理界をリードしてきたレジェンドである。そんな彼が新天地として選んだのは、赤坂の小さなリストランテ。12月1日にグランドオープンを果たした「インフィニート ヒロ」の全貌を紹介する。
小さなリストランテのカウンターに立つ、ベテランシェフの誇り

赤坂駅から徒歩3分、赤坂見附駅から徒歩5分の立地に「インフィニート ヒロ」はある。100席規模の店で腕を振るってきた山田さんの経歴を考えると、全21席という規模は意外にも感じられる。

「小さな店で、またじっくりと料理を振る舞いたい。年齢的なこともありますが、その方が今の時代にも合っているのではないかと感じています」と山田さん。
御年67歳。トップシェフがこの年齢で新しい店を持つのは珍しい。しかも店名には、インフィニート=無限と銘打っている。「この仕事には終わりがありません。料理はずっとつくり続けることができて、人を幸せにできます。経験を積んだからこそ可能になる料理の幅広さ、奥深さ、そういったものをぜひ体感しにきてほしい」と山田さんは続ける。
おいしさに笑みがこぼれる“冷製カッペリーニ”

料理は20,000円のおまかせコースのみで、前菜3〜4品、魚料理、肉料理、パスタ、デザートを楽しめる。
この日の前菜は、高知産のフルーツトマトを使った冷製カッペリーニ。ご存じの方も多いだろうが、「フルーツトマトの冷製カッペリーニ」は山田さんが考案したもの。今では色々な店で提供されているが、そもそも茹でたパスタを冷水で締めて提供する店はイタリアではほとんど見ない。山田さんは当時、甘みの強い高知産フルーツトマトのおいしさをどうしたらいかせるかを考え抜き、パスタを冷やしてみようと思いついたのだ。

この日のカッペリーニは、フルーツトマトに洋ナシを合わせていた。
「フルーツトマトは冬から春にかけて、どんどん甘みが増していきます。今日のトマトはまだ酸味が強いので、新潟産の洋ナシ“ル・レクチェ”を合わせました」と山田さん。
フルーツトマトの甘みと爽やかな酸味、そして洋ナシのとろけるような甘さが絡み合う。口にすると、そのおいしさに思わず笑みがこぼれてしまうほどだ。濃厚なテイストだが、味つけはオリーブオイルと塩のみ。素材のよさを極限まで引き出した逸品である。
自家製だからこそ堪能できる、つくり立ての味わい

続いてのひと皿は、10種以上の野菜と自家製ハムを盛り込んだ前菜。自家製ハムは店の自慢のひとつで、「TOKYO X」や北海道の「どろぶた」など、銘柄豚のもも肉を塩漬けにし、毎日3〜4時間かけて低温調理で仕上げている。ハムを口にすると、しっとりした食感とともに上品なうまみが口いっぱいに広がっていく。このつくり立ての味わいは別次元だ。
また、全国から届く新鮮な野菜のクオリティもすばらしい。自然のもとで健康に育った野菜だからこそ実現できる、力強い風味に圧倒されることだろう。シェフとしての確固とした実績があるからこそ、よい食材が山田さんのもとに集まってくるのだ。
「おいしい食材が手に入る、それが僕の財産かな」と山田さんはうれしそうに笑う。
和の技法を巧みに取り入れた、山田さんの魚料理

魚料理は、山田さんの料理に対する姿勢を感じられる一品である。この日に供されたのは、九州産のサワラにクワイの衣をまとわせたひと皿だ。
「日本のイタリアンは、魚料理のバリエーションが少ないと言われることがあります。しかし島国である日本は、寒流と暖流がぶつかり合う恵まれた海域にあり魚介類が豊富な国。日本料理、中国料理、フレンチのテクニックもどんどん取り入れながら、新しい魚料理も生み出していきたいと考えています」と山田さん。
白身魚に細切りにしたクワイをまとわせて揚げる料理は、日本料理の蓑揚げに通じるものがある。そこにサワークリームとキャビアを合わせることで、イタリア料理として完成させている。シンプルな一品も、山田さんの手にかかると瞬く間にイタリアンとして昇華されていく。

上質な料理に合わせた、ワインのセレクションも楽しみのひとつ。イタリアワインはもちろん、フランスのブルゴーニュや日本ワインも揃えている。コースに合わせたペアリングも用意されており、ワインリストには載っていない品が供されることもあるとか。
例えば「フルーツトマトの冷製カッペリーニ」には、きれいな酸味のある北海道の「NIKI Hillsワイナリー」で造られた白ワインがよく合うそうだ。
「おいしい」を追い求め、これからも進化し続ける

山田さんが紡ぐコースは、これまで手掛けてきた人気の逸品が登場する面と、新たな発想を取り入れた料理を堪能できる面が共存している。しかも、その料理を山田さん自らゲストに解説しながら振る舞うのだから、これほどの贅沢はない。
また同店では、シェフを招いたコラボイベントも開催しており、和食や中華の料理人なども招き、共同で料理をつくり提供することもある。
先日は、「とんかつ 成蔵」の三谷シェフとのコラボイベントを実施しているのだが、実はサワラにクワイの衣をまとわせた魚料理は、「とんかつ 成蔵」で使われているものと同じラードで揚げている。パリッと香り高く仕上がるのは、このラードの力も大きいのだとか。
ベテランの域にありながら、よいものを常に吸収し続ける姿勢に頭が下がる思いだ。

山田さんは「ぜひ、くいしんぼうの方にご来店いただきたい」と話す。おいしいとは何なのかといった会話をしたり、ゲストの話を聞いたりしながら自分自身も勉強していきたいというのだ。
「おいしいものを食べるって、こんなにもワクワクするのかと感じていただきたい。小さな店ですし、サービスが行き届かないこともあるかもしれません。三ツ星レストランのように完璧ではないけれども、純粋に胸が躍るような時間をご提供できるように力を尽くしています」
トップシェフの技とその真髄を、心ゆくまで堪能してほしい。

※価格はすべて税抜
<店舗情報>
◆インフィニート ヒロ
住所 : 東京都港区赤坂5-1-38 赤坂東商ビル 3F
TEL : 03-5797-7610
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※本記事は取材日(2020年12月15日)時点の情報をもとに作成しています。
取材・文:梶野佐智子(grooo)
撮影:松村宇洋
