新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相が行った2回目の「緊急事態宣言」。1月7日、東京・JR新宿駅東口前の「アルタ」や「歌舞伎町一番街」付近の大型ビジョンには首相会見の映像が映し出されていた。飲食店に対する時短営業の要請や若者の外出自粛を呼びかける菅首相の声が響き渡ったが、その画面を気にかける人はほとんどいなかった。

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1月14日の歌舞伎町にて Ⓒ文藝春秋

 2度目の緊急事態宣言から1週間が経った日、新宿・歌舞伎町は若者で溢れていた。大衆居酒屋では若者が酒盛りをし、ホストクラブやキャバクラ、ガールズバーなど「接待を伴う飲食店」のほとんどは時短要請を無視して通常営業に踏み切っていた。

 店舗の関係者たちから聞こえてくるのは、「店を開けたいわけじゃない。でも、協力金だけではやっていけない」という嘆きの声だった--。

「お行儀の悪い街だから」

「ゴチャゴチャうるせえよ!」

 1月13日21時頃、新宿・歌舞伎町の入口ゲート付近で外出自粛を呼びかける5人ほどの区役所職員は、暴言を浴びていた。歌舞伎町への立ち入りを阻止しようとする職員たちの横をすり抜けて、カラフルなマスクをつけた若者が次々に雑踏の中へ消えていく。

「宣言前の12月に比べれば人出は3分の1に減ったけど、1回目の宣言の時よりは明らかに多い。今回の特徴は、歌舞伎町で働いていたり歌舞伎町に通い慣れた10代、20代の若い子がコロナを気にしないで朝まで遊んでいること。そもそもこの街って“お行儀の悪い街”だから、大人の言うことを聞かないのは仕方ないよね」(キャッチ店員)

店を閉めても100万円の家賃がかかる

 たしかに、大手チェーン居酒屋や人気焼肉店など多くの飲食店は20時で閉店しているものの、一部の激安居酒屋は時短営業要請を無視して営業を続けており、店内は若者で溢れ、“密”状態だった。

「店を開けているのは、他が閉店して稼ぎ時だからというのが正直なところ。歌舞伎町は家賃も割高で、うちも毎月100万円近く払ってる。アルバイトも10人以上雇ってるし、外国人のスタッフは故郷に仕送りしてたり、皆それぞれの生活がある。20時までで閉めていたら商売にならない。何より、街に若いお客さんがこれだけ溢れてる。寒いし、外にずっといたらそれこそ体調壊しちゃうんじゃない?」(居酒屋店主)

鍵を閉め、常連だけを入れる店も

 ある雑居ビルの小さな焼き鳥店は、20時を過ぎると看板の明かりが消え、扉の鍵も閉まる。しかし、常連のお客さんだけを入れる「会員制」としてひっそり営業していた。営業時間が記録されてしまうので、20時以降はクレジットカードでの会計は断っているという。

「発表されるコロナの人数が増えてからは、サラリーマンのお客さんはほとんどいなくなって、今は歌舞伎町で仕事をしている人がほとんど。『歌舞伎町は早い時期にコロナが蔓延したから、もう一周してみんな免疫あるんじゃないの?(笑)』って冗談半分で言ってる人も多いね。この街で働いてる奴は独り身も多いしストレスも多い仕事だから、酒飲んで愚痴を吐き出す場所がなかったら、体より先に心が壊れて病気になると思うけどね」(焼き鳥店店主)

1日6万円は「黙って潰れろ」と同じ?

 飲食店だけでなく、より近い距離での接客が売りの業種も、営業を再開している店が目立つ。ネオンがギラギラと光る人気のガールズバーや、ドレス姿の女性がズラリと並ぶキャバクラ店も、営業再開の決断をした店が多い。

「このまま店を開けないと絶対に潰れてしまう。家賃だけでも100〜200万円。女の子の時給が最低4千〜5千円、黒服(男性スタッフ)の人件費に、光熱費、酒代におしぼり代……1日6万円じゃ『黙って潰れろ』って言ってるようなもんだよ。もしうちが開けなくても、他の店が営業してればお客は流れるし、働いてる女の子たちも稼ぐために他の店に移籍してしまう。自分のところだけ閉める、っていう選択はできない。今回は有名店も営業してるし、ボッタクリ店の連中すら営業してる。そうなると、尚更うちだけ閉めるわけにはいかない」(中堅キャバクラ店店長)

会社の経費が使えないから、遊び方も地味になる

 とはいえ、飲食店と違ってガールズバーやキャバクラの客足は伸び悩んでいるという。店が終わる24時過ぎ、キャバクラが立ち並ぶ歌舞伎町の区役所通り周辺には空車のタクシーが列をなしていた。

「人気があるキャストが色恋営業でなんとかお客さんを呼んでも、今どきはマトモな会社ほど外食禁止令が出ているから経費が使えない。自腹となると、みんな遊び方も地味になる。いま派手に遊んでくれるのは、何の仕事かよくわからない若い経営者たち。既にコロナの感染経験があるみたいで、気にせず遊んでくれる。こういう状況だから、指名がとれない女の子をシフトに入れる余裕はない。そうなると売れない子は出勤数が減って収入も減るから、パパ活に手を出したり、風俗やセクキャバと兼務する子も出る。結局、お金がなければ働かないと生きていけないんだよね」(同前)

“自粛警察”という言葉も歌舞伎町ではすっかり聞かなくなり、度重なる要請に反発を隠さない飲食店も出始めているという。この“眠らない街”で生きる人たちにとって、生活を守ることとコロナ対策を両立させることは極めて難しい。

「キスもします。仕事だから」コロナ感染の歌舞伎町セクキャバ嬢が告白した“おっぱいクラスター”の現在 へ続く

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))