住宅街にたたずむ〈熊谷守一美術館〉へ。『仙人はどこにいるのか?』編

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ちいさな美術館をめぐって、作品から思いを馳せて物語を綴るこちらの連載。記念すべき1回目は、要町の住宅街にたたずむ〈熊谷守一美術館〉へと行ってまいりました。

はじめまして、夏⼦です。

「夏⼦です。趣味は「美術館めぐり」で、休日はもっぱら、作品のあるところへ出向いては、ひとりでじーっと眺めています。傍から見れば、きっと⼤真⾯⽬な顔をしていることでしょう。が、本当のところは、とても⼈には⾔えないような、くだらないことばかりを考えています。この連載では、そんな頭の中の妄想を、⾔葉にしてみようと思いました。よって、この物語はフィクションです。登場する人物や名称は架空であり、実在のものと何ら関係はございません。これが何かのお役に立てば光栄です。なんのお役にも立てないなら、もっと光栄です。ふふ。」

ちいさな美術館をめぐる旅。

昔からちいさな美術館が好きでした。ちいさいからこそ、作品だけでなく、立地や建物にまで個性を感じ取れる、そんなこだわりの詰まった美術館が大好きでした。ちなみに、「小さな」ではなく「ちいさな」としているのは、物理的な小ささだけでなく、展示の期間や規模感といった “はかなさ” みたいなものも大切にしたいと思ったから。さて、長ったらしい前置きはここらにして、“妄想の旅” をはじめていきましょう。初回の舞台は、「画壇の仙人」と呼ばれた熊谷守一さんの作品を収蔵した〈熊谷守一美術館〉です。

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「駅長」

『どろ人形(熊谷守一)』

サカナ「お客さん、お客さん。」ニンゲン「…。」サカナ「お客さん、起きてください。終電はとっくに終わりましたよ。駅も閉めますから、ホームで寝るのはよしてください。」ニンゲン「よくもそこまで泥酔できますね。わかりました。お客さん、起きないんですね。市ヶ⾕駅で寝過ごした⼈がどうなるか、知っていますかお客さん。ふふ。」サカナ「知らないでしょう、ふふ。ホームで寝ているお客さんが悪いんですよ、朝になって後悔してください。市ヶ⾕駅で寝過ごした⼈はね…」ニンゲン「僕と⼀緒に釣り堀で⼀晩寝てもらいますからね、ふふ。」

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「角栓」

『腐木(熊谷守一)』

プツ、プツ。朽⽊を覆っていく腐敗の⽩。それはまるで、⿐から摘み出される⾓栓、あれみたいだと気づいた瞬間、突然愛おしい。

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「山」

『野天⾵呂(熊谷守一)』

コソコソコソコソ、⼤胆になるために。露天⾵呂じゃあ物⾜りなくなった背徳感を求めて、みんなで登ればこわくない。

「あんなに苦労して⼈が⼭を登るのは、⾒通せる向こうが⾒たいからさ」2020 年の夏、そんな台詞を劇場で叫んでいたのを思い出した。

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「たまご」

『仏前(熊谷守一)』

いち「暑くない?」 「暑い」いち「どうしよう、孵化しちゃうよ」 「孵化はダメだよ、卵でいないと」いち「でも、もう限界じゃない」 「サウナだとおもってさ」いち「外気浴したいよう」さん「シッ」

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今回訪れたのは…〈熊谷守一美術館〉

画家の熊⾕守⼀(くまがい・もりかず)さんが住んでいた邸宅跡地に、個⼈美術館として建設(のちに豊島区立に)。守⼀さんと妻・秀⼦さんを描いた映画『モリのいる場所』を観てから向かえば、ひとつひとつの作品をより深く味わうことができるかも。ちなみに私は、よくその映画のサウンドトラックを聴きながら、“モリ” になったつもりで散歩をしています。

コンクリート打ちっぱなしと、蟻のイラストが目印です。1階の展示室。湾曲した壁や、立てかけられたパレットが可愛い。

〈豊島区立 熊谷守一美術館〉

東京都豊島区千早2-27-603-3957-377910:30〜17:30入館料500円 ※普段は撮影禁止です。

photo : Yumi Hosomi