できる40代はどんな働き方をしているのか。1万人以上のビジネスパーソンへのインタビューから「40代を後悔しないための方法」を追求してきたコンサルタントの大塚寿氏は、「30代の頃の意識のままでいると、40代で伸び悩むことになる。特にドラマ『半沢直樹』の半沢のようにカッコよく仕事の壁を突破することに憧れる人ほど危ない」という――。

※本稿は、大塚寿『できる40代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/SERCAN ERTURK
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SERCAN ERTURK

■30代は「仕事のスキル」、40代は「組織のスキル」で出世する

「組織ってのは、仕事ができる人が出世するわけじゃない」

ある企業の幹部が、40歳になったばかりの後輩課長に説いていた言葉です。私もこれまで数多くのビジネスパーソンと出会ってきましたが、この言葉はまさに真実だと痛感します。逆に言えば、「仕事はできるのに、40代になって出世や昇格が止まってしまう人があまりにも多い」のです。

30代まではいわゆる「仕事のスキル」がある人が出世していきます。「仕事が速くて正確」「必ず数字を達成する」「ヒット商品を次々企画する」などです。しかし、そうした仕事のスキルで出世できるのは、あくまで30代まで。40代になったらむしろ「組織のスキル」を備えた人が出世していくのです。

それが理解できず、あくまで30代の意識のままでいると、30代の時には評価された点がむしろマイナスに作用することすらあるのです。

では、それはどういった点であり、具体的には30代と40代ではどう変えるべきなのか。

以下、対比しながらご紹介していきたいと思います。

■「数字を上げている」のに、評価を下げられる人がいる

端的に言えば、会社や上司から「何を期待されているか」をキチンと把握し、そのポイントに沿って成果を上げるということです。例えば、会社が「顧客満足度重視」という方針を立てたなら、無理な押し込み営業などを避けつつ、成果を上げねばならない、ということになります。

30代までは、「どんな手を使ってでも数字さえ上げればいい」という考え方でも通用したかもしれません。ただし、40代になってもその姿勢のままでは、せっかく数字を上げても、「方針を乱す人間」として評価を下げられる恐れがあります。実際、私はこれまで、そういう人を何人も見てきました。

上から降りてきた目標は、しばしばとんでもなく高いものです。ただ、そこで「できない理由、難しい理由」を並べ立ててゴネるのではなく、「せめてこれだけは達成する」と前向きに取り組む姿勢が大事だということです。

例えば、「売上目標は無理でも、せめて新規開拓率目標だけは達成する」「来期に向けて組織体制だけは整える」など、何か一つでも達成する姿勢を見せる。そうすれば、仮に目標額には届かなくても、その前向きな姿勢が評価されることがあるのです。こうした姿勢を上は意外と見ています。

■「半沢直樹」を真似すると「空気が読めない人」になる

組織においては常に、部門間の二律背反、トレードオフ関係というものが発生します。ときにそれは「部門間の対立」という形で表面化することもあります。

それこそ、30代まではドラマ「半沢直樹」のように、こうした壁を強行突破して成果を上げる人が評価されたかもしれませんが、40代で対立する相手を土下座させるような社員は、「空気が読めない人」と判断されます(実際、ドラマでは半沢は出向になります)。

むしろ必要になるのは調整能力です。事前に各部門や上司、トップなどに根回しをして、角を立てずに物事を進めていく能力が必要となるのです。根回しというと聞こえが悪いですが、実際には全体を俯瞰し、状況を分析し、全体最適に向け関連部門のベクトルを合わせていくという高度なスキルです。経営トップには必須であり、早めに身につけておくに越したことはないのです。

■「上のやり方は間違っている」と言ってはいけない

40代になったら絶対に口にすべきではない言葉、それは「上のやり方は明らかに間違っている」「上司はこう言っているけど、俺はこう思う」です。若いうちなら、「上司に立てつく部下」が周りから支持されることもあるでしょう。しかし、40代の社員は、若手からすれば「会社側」の人間です。そんな人が会社や上司を批判したところで、「じゃあ、あなたが上司をなんとかしてくれよ」と困惑されるだけです。

正直、合わない上司、無能な上司、人間的に問題のある上司もいるでしょう。でも、40代になったら上司や会社への批判は一切口にしないようにしましょう。飲み会ネタの鉄板でもありますが、どんな席でもやはり、口にすべきではありません。

もちろん、コンプライアンスに反するような上司なら別ですが、そうでない限り、明らかにおかしな方針に対しても、手を変え品を変え、ベクトルを合わせていかねばならないのです。

「何を弱気な」と思われるかもしれません。しかし、能力はあるのに上司や会社への批判を繰り返したことで、左遷されたり会社を追われたりした人を、私はあまりにも多く見てきました。まさに「短気は損気」という言葉に尽きるのです。

■40代からは、「社内の人とはつるまない」をやめる

大塚寿『できる40代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)

これは特に優秀で意識の高い人に多いようですが、社内の仲間と「つるむ」ことを嫌い、社外人脈を充実させようとする人がいます。そして「俺はあの人とつながっている」「社外ではこんなに有名人だ」などとうそぶくのです。

確かに、社外人脈は重要です。ただ、40代になったら「社内人脈」もないと、仕事はうまく回りません。できる40代ほど、自部門はもちろん、他部門の管理職、そして一般社員までのネットワークを持っています。だからこそ、何かあったらすぐに相談することができ、根回しもできる。結果、問題をスムーズに解決することができるのです。

一方、社外人脈ばかりを意識して、社内を下に見ていた人は、40代を迎える頃に一斉に「総スカン」を食らい、孤立することになるのです。

■「カッコ悪くても成果を出す」のが確実なやり方だ

さて、ここまでご紹介してきた組織スキルについて「なんだかちょっとカッコ悪いな」と思われた方も多いのではないでしょうか。確かに、時には荒っぽい手を使ってでも壁を突破していく半沢直樹はカッコいいですし、「会社に頼らず生きていけ」「自分のブランド力を高めよ」というタイプの本やセミナーでは、こうした能力はしばしば、否定的に語られます。

確かに、それで成功する人もいますが、あくまでごく一部のずば抜けて能力の高い人に限ります。そしてそういう人でさえ、結局は組織を追われてしまうことも多いのが現実なのです。「半沢のようにカッコつけて失敗する」か「カッコ悪くても成果を出す」か、あなたはどちらを選びますか、ということなのです。

----------
大塚 寿(おおつか・ひさし)
営業コンサルタント
1962年群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。オンライン研修「営業サプリ」を運営する株式会社サプリCKO。著書にシリーズ28万部のベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)など20数冊がある。
----------

(営業コンサルタント 大塚 寿)