「この顔、どこかで見たことあるような…」

写真を見てそう思った人は多いはず。彼女は再現ドラマに年間100本以上出演する女優・芳野友美さん。その圧倒的出演数から、“再現ドラマの女王”と呼ばれています。

でも、失礼ながら再現ドラマってパッとしないイメージ。正直なところ、不名誉な冠なのでは?

“好きなことを仕事にできる”といわれる時代に、あえてやりたくなかった仕事を続けてこられたのはなぜなのか。芳野さんにお話を聞くことで、働き方のヒントを探りました。

〈聞き手=本山航大〉


【芳野友美(よしの・ゆみ)】1980年、福岡県出身。高校生のとき、雑誌『JUNON』の「S・Sガールズコンテスト」審査員特別賞を受賞し芸能界へ。これまで数々の再現ドラマに出演し、“キレる役”に定評がある。最近の趣味は競馬で、ギャンブル性より競走馬を見ることに惹かれている

「どんなに売れなくても再現だけは…」と思っていた

本山:
女優業と事務のバイトで忙しいなか、お休みの日にありがとうございます!


キレイな方だ…

本山:
芳野さんは「再現ドラマの女王」と呼ばれていますが、女優キャリアの最初から「再現ドラマで活躍すること」を目指したわけじゃないですよね?

芳野さん:
もちろん。むしろ最初は絶対にやりたくなかったですね。

本山:
やっぱりそうなんですね…

芳野さん:
再現ドラマに出たら、自分の価値が安っぽくなっちゃうんじゃないか」って、思いっきり偏見がありました。

「どんなに売れなくても再現だけは…」って思ってましたもん。

本山:
女王の発言とは思えない…

じゃあ、どうして出るようになったんですか?

芳野さん:
芸能界にはいたものの、仕事がなくて悩んでたときに、いまのマネージャーに「100回の練習より1回の現場なんじゃないか」って言われたんです。

たしかに演技のレッスンを何百回やっても、現場の緊張感とか環境って、その場でしか味わえないんですよ。

だから、「小さくても本番を重ねなきゃ」って。それで再現の仕事を始めました。

「まったくB級じゃない」知られざる再現ドラマの世界

本山:
実際に再現ドラマの仕事をしてみて、いかがでしたか?



芳野さん:
「ごめんなさい」って思いましたね。

いざ現場に行くと自分の持っていた偏見とは全然違って…役者もスタッフも「すげーなこの人たち」って人ばかりだったんです。

本山:
再現ドラマの現場、どんなところがすごいんですか…?

芳野さん:
まず役者がまったくB級ではなかった。

台本をもらうの、いつだと思います?

本山:
台本ですか? うーん、1週間前とか?


ニヤリ

芳野さん:
撮影当日の朝なんですよ!

印刷したての温かい台本をもらって、移動の車の中でセリフを覚える。

それなのに、みんな完璧に覚えるんですよ。

本山:
当日の朝!

芳野さん:
あと、ADさんがやるような現場の作業を全員で手伝うんです。

そのために撮影スケジュールを全部把握したり、衣装がかぶらないかをチェックしたり…

演技以外にも、自分たちでできることをどんどんやってたんです。

本山:
すごい世界ですね…

芳野さん:
役者だけじゃなくて、スタッフさんたちもめちゃくちゃ仕事が速い。なぜなら1日に7本とか撮るから…!



本山:
7本!!!

芳野さん:
普通のドラマって、カメラ位置の調整とか照明のセッティングを待つことが多いんですけど、再現ドラマはとにかく急いで撮るから、そんな待ち時間がないんです。

そうやってスタッフと俳優が協力しあってつくってる現場だった。

「自分が安くなる」なんて思ってたの、本当に反省しましたよ。



女王は『HEY! HEY! HEY!』にも出たことがある元アイドルだった…!

本山:
まったく知らない世界でした…

ところで芳野さんは、そもそもどうやって芸能界に入ったんですか?

芳野さん:
今から20年前、高校卒業後に芳野わかめとしてデビューしました。

本山:
わかめ…

芳野さん:
そう、ひらがなでわかめ。

私、アイドルとしてデビューしたんですよ!

高2のときに『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』の女の子版のコンテストで審査員特別賞をいただいて、篠原ともえさんの妹分アイドルとしてデビューしたんですよね。



本山:
“女王”が元アイドルだったとは…!

芳野さん:
運がよかったんです(笑)。

「特技披露」っていう項目があって、1回もやったことないのに篠原ともえさんのモノマネしてみたら受かってましたね…


「篠原ですぅ〜」って

本山:
とにかく…そうやって芸能界でのキャリアをスタートさせたんですね。

芳野さん:
はい。でも…じつは3年で引退しちゃったんですよ。

たいした特技もないまま度胸だけを買われてデビューしてしまったので、テレビに出れば出るほど自信をなくしていったんです。

『HEY! HEY! HEY!』とか有名な歌番組に出たこともあったんですけど、松浦亜弥ちゃんとか鈴木亜美ちゃんとか芸能界の頂点にいるアイドルと自分の差が歴然としていて。



本山:
たしかに、当時のスター的なアイドルたちがライバルだと厳しい戦いですよね…

芳野さん:
そんな現実を受け入れるのが、どんどん辛くなって、普通の大学生になることにしました。

ただ、辞めたら辞めたで辛かったんですよ。

自分はもともと女優になるのを夢見ていたので、それにチャレンジすらしてないなと思って。なので、数年経ってまた芸能界に戻ったんです。


女王の葛藤時代である

本山:
芸能界に戻って、“再現ドラマの女王”と呼ばれるようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

芳野さん:
『行列のできる法律相談所』の恐妻家特集でノッチさんの奥さん役を演じたのが転機ですね。

再現ドラマってよっぽどのそっくりさんじゃない限り、同じ人の役を何回もやるってないんですけど、“ノッチ妻”は6回ぐらいやったんです。


朝の情報番組の1コーナーで演じていたSキャラが関係者の目に留まりオファーが来たとのこと。たしかに怖い…

芳野さん:
それで「『行列』に出てる人だ」って言われるようになったり、インターネットの知恵袋とかで「あの人、誰?」って騒がれるようになったりしたんですよ。

私個人に興味を持ってもらったこと、認知してもらえたことが初めてだったので、本当にうれしかったですね。

女王の仕事観「世の中は実力次第。売れる人は売れるべくして売れている」

本山:
ここからは、女王の「仕事観」を聞きたいです。

失礼ですが、大役が来なくても女優を続けられるのはどうしてですか?

芳野さん:
とにかく人の目につくところで可能性を広げることが大事だと思ってるからですね。

未練を残したまま辞めるのがどんなに辛いか、どんなにカッコ悪いか、身に染みて分かってるから、どう思われても、未練のないようにやりきりたいんです。

本山:
なるほど…

芳野さん:
結局、世の中は実力次第だってわかったんですよ。

活躍してる人って事務所が大きいから売れてるんじゃなくて、売れるべくして売れてるんです。

美少女コンで賞取って、大手事務所のアイドルだったのに売れなかった私にはよくわかります



本山:
今も事務のアルバイトをしているとのことですが、“女優一本”での活動までは、今どれぐらいまで来てるんでしょうか?

いい役をもらえるようになってきていますか?

芳野さん:
まだそんなに大きな役はもらえないですね。

今いただいてる民放ドラマのお仕事とかは、セリフは2行ぐらいです。



本山:
に、2行…!

メジャー女優の壁はそんなに高いんですか…!

芳野さん:
そうですね。でも、思えば芸能界に入るときは何も長所がなくて無理やりモノマネしてたヤツですから(笑)。

そのときに比べれば、ようやくつかんだ「再現ドラマ出身」というひとつの自信を見つけられたかなと思ってます。

再現がきっかけで売れた人は過去にいないから、私が第一人者になりたいですね。


応援してます!

やりたいこととできることは違う。読者のなかには、仕事でそんな「差」にがく然とした経験がある方もいるのではないでしょうか。

でも、芳野さんのようにできることを続けていけば新しい道を切り開けるかもしれません。

芳野さんの前向きさは、うまくいかなくても“道の途中”にいるだけだと気づかせてくれました。

〈取材・文=本山航大(@motoyamcfly)/編集=於ありさ(@okiarichan27)/写真=森カズシゲ〉

芳野友美さんからのお知らせ

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