目標達成には、体系化された“あるメソッド”がある。

多くの経営者の目標設定に関わり、8社を新規上場に導いた弁護士・三谷淳さんは、そう断言します。

会社員にとっては、給与にも評価にも関わる目標達成。

今回は、著書『目標達成の全技術』より、その秘訣についての2記事をご紹介します。


夢と目標が混ざるとうまくいかない

私は、「夢はなかなか叶わない。でも、目標はすぐに達成できる!」と考えています。

それがなぜだかわかりますか?

それは、目標にあって、夢にないものが2つあるからです。

私は、コンサルタントとして、顧問弁護士として、税理士として、いろいろな会社の経営者や社員さんが目標設定をする場に立ち会わせていただく機会があります。

もちろん、自分が経営する弁護士法人や税理士法人のメンバーとチームの目標を考えたり、メンバー個人の目標を一緒に立てたりすることもあります。

そのようなとき、できるだけみなさんがワクワクして楽観的に構想できるように、「まずはどんなことでも願えば叶うとして、みなさんの夢や目標をできるだけたくさん書き出してみてください」とお願いします。

このとき自分には才能がないとか、自分にはお金がないとか、自分には時間がないといった話は全部抜きにして、才能・お金・時間、その他あらゆる可能性があることを前提として考えてもらいます。

ぜひ、あなたも夢や目標を自由に考え、たくさん書き出してみてください。

このようなお願いをすると、次々と夢や目標が出てきます。

たとえば、

「保険の売上で1億円プレーヤーになりたい」(保険営業マン)

「地域ナンバーワンの店舗を作りたい」(健康食品販売店舗責任者)

「社員満足ナンバーワンの会社にしたい」(清掃業経営者)

「横浜でイタリアンといえば、ウチのお店と言われるようになりたい」(イタリア料理店 シェフ)

「店舗を店に増やしたい」(ラーメン店経営者)

「同業者からうらやましがられる会社になりたい」(印刷業勤務)

また、仕事以外のお話が出ることもあります。

「異性にモテまくりたい」(20代男性)

「5キロダイエットしてスタイル抜群になりたい」(30代女性)

「社内のゴルフコンペで優勝したい」(40代男性)

「だんな様とラブラブの老後を過ごしたい」(40代女性)

「世界一周旅行をしたい」(50代男性)

といった具合です。

どのお話もキラキラしていてステキですし、実現するとうれしいことばかりだと思います。

ただし、この話では、夢と目標がごっちゃになっています。

夢は夢のままで終わってしまうことが多いのですが、目標はしっかりとアクションプランを立てれば、実現する可能性が高くなります。


「検証できる」のが目標

そこで、目標にあって、夢にはない2つのことが大切になります。

何だと思いますか?

その1つめは、「検証可能性」です。

つまり、達成したかどうかを客観的に判断することができるかということです。

上の例でいうと、

「保険の売上で1億円プレーヤーになる」

「店舗を50店舗に増やす」

という仕事上の目標は、売上が1億円、店舗数が店舗になれば達成、というように客観的に実現したかどうかを判断することができます。

「社内のゴルフコンペで優勝する」

「世界一周旅行をする」

といったプライベートの目標も、実現したかどうかを客観的に判断することができます。

一方で、

「地域ナンバーワンの店舗を作りたい」

「社員満足ナンバーワンの会社にしたい」

「横浜でイタリアンといえば、ウチのお店と言われるようになりたい」

「同業者からうらやましがられる会社になりたい」

といった話はどうでしょうか?

どうなったら「地域ナンバーワンになった」と言えるのか、どのような状態が「従業員満足ナンバーワン」なのかがはっきりしないので、実現したかどうかを判断することができません。

したがって、夢が叶う瞬間がないのです。

「イタリアンといえばウチ」「同業者からうらやましがられる」というのも、同じ理由で、 達成したかどうかが客観的にわかりません。

ですから、夢を夢で終わらせず、実現したい目標に変えるためには、少し手を加えて検証ができるようにするのです。

たとえば、

「世田谷区の健康食品販売店でナンバーワンの売上を達成する。そのために売上10億円を目指す」

「平均給与400万円超、有休取得率70%以上の会社にして、社員満足を向上させる」

「横浜・イタリアンのカテゴリーで食べログの口コミランキング1位の店になる」

「印刷業としては常識破りの利益率20%を達成して同業者を驚かせる」

とすれば、検証不可能だった夢が、検証可能な目標に置き換わります。

「異性にモテまくりたい」

「ダイエットしてスタイル抜群になりたい」

「だんな様とラブラブの老後を過ごしたい」

といった夢も同じです。

「彼女をつくる」

「体重を10キロ落とす」

「だんな様と毎年2回、旅行に行く」

このように検証可能な目標にすれば、一気に実現の可能性が高まります。


「期限」をつければ目標になる

そして、目標にあって夢にないもう1つの大切なものが「期限」です。

私の知る限りでは、「いずれこうなりたい」と言った人の「いずれ」がやってきたためしがありません。

いずれは永遠にやってこないのです。

「いずれはダイエットしたい」「いずれは年収1000万円を達成したい」と思っても、 具体的に行動をどう変えればよいかのイメージが湧いてこないので、現状維持バイアスに負けて行動を後回しにしてしまいます。

一方で、「3カ月で3キロ体重を落とす」「35歳までに年収1000万円になる」などと達成の期限を設定すると、「明日からラーメンを大盛りにするのはやめよう」「昇進してもいまの会社では年収1000万円には届かないだろうから転職活動をしてみよう」などと、 自然にどのように行動すればよいかを考えはじめます。

目標には達成期限をセットで設定しなければ、リアルに行動計画を考えることができないのです。



『夢に日付を!夢をかなえる手帳術』の著者である居酒屋チェーンワタミの創業者・渡邉美樹氏も、著書の中で「人は締め切りがないと何もしない生き物で、大きな夢を実現するためには『日付を入れる』『期限を区切る』ことが大切だ」と伝えています。

同様に、売れっ子の小説家は口をそろえて「いい小説を書くために唯一必要なのは締め切りだ」と言います。

稲盛和夫氏も京セラフィロソフィの中で、高い目標を達成するためには「未来の一点で達成するということを決めてしまうことだ」と、期限の大切さを伝えています。

そして、新しい目標はあえて、いまの自分の能力以上のものを設定し、未来の達成期限までに自分の能力を高めることだと教え、これを「能力を未来進行形でとらえる」と表現しています。

このように、目標設定には、

・検証可能性(達成したかどうかが客観的に判断できる)

・達成期限(「いずれ」は永遠に実現しない)

この2点が必要です。

「いつまでに、何を達成する」をセットにして目標を設定してください。


達成期限に「曜日」を入れると成果が変わる

目標の達成期限を決める際、あまり深く考えず、「今月中」「3カ月後」「今年度内」などとしてしまう人がいます。

しかし、設定する期限はもっと大切に扱ってください。

私は尊敬する経営者のHさんから、目標の達成期限を決める際には、年月日だけでなく曜日も確認して記入するとよいと教えてもらいました。

達成すると決めた日が何曜日なのかを確認すると、実際に達成した喜びを誰と分かち合うかといったことまでリアルに想像することができますし、曜日を確認しながら期限までのスケジュール帳を見返すので、期限までに残された時間やその間の行動を瞬時にイメージしやすいなど、たくさんのメリットがあるのです。

この話を聞いてから、私も「達成期限には年月日だけでなく曜日を入れるとよい」とお伝えするようになりました。

すると、「簡単なことなのに、曜日を入れるだけで真剣に期限を扱うようになり、おかげで本当に目標が達成できるようになった」という話をたくさんいただくようになり、私自身も驚いています。

また、ワクワクする目標にするために、達成期限を特別な日に設定するのも達成確率を高める方法です。

半年後の自分の誕生日までにダイエットして5キロ体重を落とすという目標を設定すれば、スッキリとしたスタイルで誕生日を迎えることを想像してワクワクすることができます。

また、達成できれば自分への最高の誕生日プレゼントになることは間違いありません。

目標達成への道筋を体系的に学ぼう

目標を立てたが、計画どおりに進まない。想定外のハプニングで挫折してしまう。

そんな方にこそおすすめしたいのが『目標達成の全技術』。

「スランプのときに達成者がやっていること」「うまくいかないときの軌道修正法」など、“一歩先”のメソッドが詰まった一冊です。