熱中症をどう防ぐ?

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 気温30℃超えの真夏日が続いた5月が終わり、間もなく梅雨入りで今度はそこに猛烈な湿気が加わる。実はこの時期、熱中症のリスクが極めて高いのだという。環境生理学に詳しい横浜国立大学教授の田中英登氏が解説する。

「梅雨の時期はそれほど気温が上がらなくても、とにかく湿度が高い。湿度は、気温と並んで熱中症を引き起こす大きな要因とされています。

 人間は、汗が蒸発する際の“気化熱”で体内の熱を逃し、体温調節をしています。熱中症はこの体温調節機能がうまく働かなくなったときにも起こります。湿度が高いと、肌表面の汗が蒸発せず、体温が下がりにくい状態になってしまう。そうなると、さらに体温を下げようともっと汗をかき、脱水状態が進むという悪循環に陥ります」

 水分補給は熱中症対策の鉄則だ。田中氏は「湿度が高いとたくさん汗をかくので、脱水になりやすい。そのため梅雨時は通常よりも水分を多少多めに摂ったほうがいい」と話す。

◆予防のための「経口補水液」は×

 また、水分と同時に塩分もとる、というのは対策の常識になりつつある。テレビCMでは、盛んに「経口補水液」が紹介されている。熱中症対策の切り札として常備している家庭も増えているが、使い方を間違えてはいけない。

 熱中症予防対策に詳しい桐蔭横浜大学大学院教授の星秋夫氏が言う。

「経口補水液は血液の浸透圧に近いので吸収されやすく、“大量に汗をかいたとき”の水分補給に適しています。しかし、一般的なスポーツドリンクよりナトリウム濃度が高く、汗をかいていないときに飲むと塩分の摂りすぎになってしまう可能性がある。

 運動や屋外の作業などで汗を多くかいたときはいいですが、そうでないときから飲用する際は注意が必要です」

◆“涼感物質”で皮膚と脳が錯覚

 ドラッグストアなどには、熱中症対策グッズが多く並んでいる。近頃は衣服にかける「冷感スプレー」や皮膚に塗る「冷感クリーム」なども人気だ。手軽に清涼感を得られる一方、落とし穴がある。

「アルコールやメントールといった“涼感物質”が入っています。たしかに皮膚表面の体感温度を下げてくれますが、実際には体温を下げているわけではありません。皮膚と脳を“涼しい”と錯覚させているというのが正確です。

 すると脳が発汗の指令を出さず、結果として体温がどんどん上昇してしまうので、熱中症にかかりやすくなるケースがあります」(前出・田中氏)

◆「冷却ジェルシート」は貼る部位次第

 おでこに貼るタイプの「冷却ジェルシート」はどうか。

「こちらは、ジェルに含まれる水分が蒸発する際に熱を下げる効果は期待できます。ただ、おでこに貼るのでは体温を下げることには寄与しない。より効果的なのは、動脈が皮膚に近いところを通っている首筋、脇の下、鼠蹊部などに貼ることで、全身を冷やすことができます」(前出・星氏)

◆「冷感マット」が「温感マット」に?

 梅雨どきの寝苦しさの不快指数は高い。“ひんやり”“冷感ふとん”などと謳う寝具も売られているが、必ずしも夜の味方になってくれるとは言い難い。快眠セラピストの三橋美穂氏がアドバイスする。

「一般的な冷感マットは、表面こそ麻などの冷感素材を使っていますが、中綿にはポリエステルを使用する場合が多く、これでは熱がこもってしまう。横になった当初はいいが、あとからどんどん暑くなり、体温上昇も招きかねません。中綿の素材までしっかりチェックしてください」

 ジメジメの梅雨、そして猛暑がもう間もなくやってくる。

「15〜30分程度のウオーキングなど、ごく軽い運動でかまわないので、ぜひ暑さに体を慣らしておいてほしい。冬の間に活動しなかった汗腺を刺激すれば、体温調節ができるようになり、熱中症予防にもつながります」(前出・星氏)

「梅雨どき」と「夏本番」の両方に備えて、暑さを乗り切ろう。

※週刊ポスト2019年6月14日号