いつまでも音楽を楽しみたいから、音楽を安全に楽しむ「セーフリスニング」を意識しよう
ポータブルオーディオプレイヤーやスマートフォンの普及によって、音楽がより身近になりました。と同時に自転車など車両を運転しながらイヤホンで音楽を聴いたり、大音量で長時間のリスニングによって耳に負担をかけてしまい、事故や難聴などの健康被害の問題もクローズアップされるようになりました。

WHO(世界保健機構)では、エンターテイメント施設における若年者の騒音被害について問題を提議するなど世界的にも動きがあります。そんな中、日本では8年以上も前から「セーフリスニング」について啓蒙の動きがありました。

今回、セーフリスニングに関する世界的な動きと日本での啓蒙活動に関して、「SAFE LISTENING」のWebサイトを運営している須山補聴器の須山慶太氏にお話を聞きました。



須山氏は、音楽を長時間聞くことの問題や、音楽を聴きながら運転する危険性に関しては、前々から気にはなっていたことと言います。それでも昔はカセットテープやCD、MDなどメディアの制限があったことで一定時間ごとに休憩をするなどのきっかけもありましたが、iPodの登場により好きな音楽を好きなだけ聞き続けることができるようになりました。そんな時、2010年2月にApple Store Ginzaで開催された「iPodとiPhoneのための最適なイヤフォン選び(当時のイベントレポート記事はこちらやこちら)」というイベントで「耳とイヤホン」をテーマに安全なイヤホンの使い方や難聴の危険性をプレゼンする機会があり資料をまとめたのがきっかけで「SAFE LISTENING」がスタートしました。



「極論ですが、音楽によって難聴にならないようにするには、音楽を聴かなければいいんです。でもそれは、交通事故を起こさないようにするには自動車に乗らなければいいと同じことですよね?音楽を楽しむことで人生が豊かになったり、ストレスが解消されて仕事や勉強も頑張れる人もいます。それらと耳の健康をどうバランスを取って行くか、が大事だと思います」

しかし、WHOが2015年に出した指針では音楽は1日1時間、100dbの音であれば1日15分であれば問題ないなどの提案を行っています。100dbは地下鉄の騒音と同じということで、WHOの提案をそのまま実行すると地下鉄には1日15分以上乗れないことになってしまいます。またロックコンサートの会場は115dbとされていますが、その場合28秒しか聴いてはいけないということになります。

「私たちが、耳の健康に自ら気をつけて行かないと、数字ありきの規制が強くなって、結果として音楽を楽しむ機会が失われてしまうことを危惧しています」と須山氏はユーザーが節度を守ることで、現実的ではない規制が入らないように行動する重要性を説きます。

「結局のところ、耳への負担は、音量×時間の面積なんです。なので、音楽を聴きながら長時間作業したい、というような場合にはボリュームを下げるなども必要かもしれません。また、迫力あるサウンドを楽しむためにボリュームを大きめに聴いた場合には少し早めに切り上げて耳を休ませるなど、楽しみつつも耳を休ませる時間をしっかり取るようにしてください」



最近では、ライブ会場でのセーフリスニングに関して「SAFE LISTENING LIVE」という専用のページも作られました。一定時間、大音量の環境に滞在することが多いライブでの注意点や対策をまとめたものです。



あわせてライブ用のイヤープラグ(耳栓)も作り販売も開始しました。

「ライブ体験(音楽の楽しみそのもの)を損なわないよう、音圧だけ下げるようにチューニングしていますので、前方やスピーカーの近くなど、音が大きいエリアの席になってしまった時、ちょっとつらいな、という時に手軽に利用してもらいたいと思っています」

また、ライブを楽しんだ後は、早く帰ってゆっくり休むなど、メリハリも重要だと言います。「ライブの後盛り上がった状態で飲みに行ったり、カラオケに行って自分も歌いたいという気持ちもわかりますが、そこはぐっとこらえて耳を休める。体を休めるようにしてください」



規制が入ってしまうと、プレイヤーに音量抑制機能やボリュームリミッターの導入が義務付けられるなどの恐れもあるといいます。私たちも、節度を持って音楽を楽しみたい、バランスを自分でとって音楽を聴きたいという選択肢を奪われたくはないと思います。なによりも、いつまでも音楽を楽しめる健康な聴覚を保つために、セーフリスニングを意識しましょう。