近年、民間宇宙会社による月周回旅行や宇宙高級ホテルを建設する計画が持ち上がっており、宇宙飛行士でも億万長者でもない「普通の人」が宇宙に行くことが夢物語ではなくなってきました。しかし、宇宙に行って「宇宙ではどこの国の法律が使われる?」「宇宙で生まれた赤ちゃんはどこの国の出身?」など細かいところまでは知らない人は多いはず。そんな状況を法的に想定しているムービー「Space Law-What Laws are There in Space?」を世界中の旅行から経済、地理、マーケティングなどを解説しているYouTubeチャンネルWendover Productionsが公開しています。

Space Law-What Laws are There in Space? - YouTube

ムービーは「今日は宇宙に関する法律について話をしよう」というセリフと共に映画「スター・ウォーズ」シリーズのメインテーマとともに始まります。



まずは、ロケットや人工衛星が地球上のさまざまな場所を飛ぶ時に考えておく必要のある話題から。



通常、飛行機などがある国の領土の上空を通過する際には、事前にその場所の政府の許可を求めます。



地表または水面から500フィート(約150メートル)以上の高さは政府が権利「領空権」を持っているので、他国の航空機が領空に入る際には事前の許可が必要だからです。



しかし、飛行機と同じように「ロケット」が国の領土の上を飛行する時に政府の許可を求めたとしたらどうなるでしょうか?例えば、国際宇宙ステーションは地球を約90分で1周する速度、時速約2万8000kmで飛行しているので、上空を通過する際に許可を求めていたらキリがなく、許可を出す方も追いつけません。



実際には、ロケットなど宇宙船や人工衛星では、そんなことが起きないように、ある高度以上の空間では領空権が適用されないようになっています。宇宙法では国家が宇宙空間を領有することを禁止しているのですが、どの高度以上を「宇宙空間」とするかについては諸説あり、一般的な飛行機や気球が飛べる限界の高度3万メートル以上を宇宙空間とする考え方や、宇宙船や人工衛星が周回する地上から約16万メートル以上を宇宙空間とする考えなどさまざまな意見が存在しています。



次に、宇宙飛行士には「どこの国の法律」が適用されるのかを考えてみましょう。



「ロケットは所属している国の領土の延長になる」というルールがあるので……



ロケットの中では所属している国の法律が適応されます。例えば、ロシア所属の「ソユーズ宇宙船」の船内ならロシアの法律が、アメリカ所属の民間宇宙会社「スペースX」の宇宙船内ならアメリカの法律が適用されます。



しかし、1967年に発効された宇宙条約によると「月はどこの国も領土と主張できない」と記載されています。



つまり、宇宙飛行士はどこの国も所有していない「月」にいると無法状態になってしまうのでしょうか?



この場合は、船の上などで使う考え方「Extraterritorial Jurisdiction(域外適用)」という考え方が使われます。それぞれの国の国民が国の外にいる時は、外国にいる場合を除いて「国民は国の外でも自分の国の法律に従いう」という考え方です。



例えば、「イギリス国籍」と「アメリカ国籍」を持つ18歳の宇宙飛行士が、月面でお酒を持っているとしましょう。



このケースだと、それぞれの国の合法飲酒年齢はイギリスは18歳から、アメリカは州によりますが21歳からなので、イギリスの宇宙飛行士はお酒が飲め、アメリカの宇宙飛行士はお酒が飲めません。



次は別の場所で想定してみましょう。多数の国が共同建設し、多くの国籍の人が共同作業している国際宇宙ステーション(ISS)の場合だと、どの国の法律が適応されるでしょうか?



その答えは、国際宇宙ステーションを使用する国々が合意してるISSのルール「国際宇宙基地協力協定」にあります。



このルールによると、ISSでも域外適用が当てはまり、宇宙飛行士たちはそれぞれ自分の国の法律に従います。



つまり、ISSで作業している宇宙飛行士はそれぞれの国の法律が適用されます。



込み入ったケースを考えてみましょう。例えば、イギリスの宇宙飛行士が……



カナダの機械を壊したとしましょう。



すると、イギリスの宇宙飛行士はカナダで起訴されます。



人に対しても同じルールが適応されます。アメリカの宇宙飛行士がフランスの宇宙飛行士にパンチをしたとしましょう。



このケースだと、アメリカの宇宙飛行士はフランスに国際条約の犯罪人引渡し条約を通じて引き渡されて、フランスで起訴されます。



このルールには1つ疑問が生じます。この規則は国際条約の「犯罪人引渡し条約」を結んでいる国同士が前提です。



しかし、ロシアとアメリカのように「犯罪人引渡し条約を結んでいない国同士」ではどうなるでしょうか?



例えば、ロシアの宇宙飛行士が、アメリカの宇宙飛行士にパンチをしたとしましょう。



このケースを「地球で」行うと、ロシアは引き渡しの義務はありません。しかし、このケースではロシアとアメリカの両国がISSのルールに「同意」しているので、国際宇宙基地協力協定の第22条によりロシアはロシアの宇宙飛行士を引き渡しをする義務が生まれます。



次は、「宇宙で赤ちゃんが生まれた」場合です。まず最初に、このケースはSuper Hypothetical(現実離れした仮定)です。理由は「計り知れない部分」がとても多いからです。



もし、無重力で赤ちゃんが生まれて、地球に降り立った時……



骨が自分の重みで折れるぐらいもろく生まれ、赤ちゃんは自分の重みで押しつぶされてしまいます。



以上の話はさておき、宇宙空間で赤ちゃんが生まれたケースを考えてみましょう。このケースだと国籍はどうなるでしょう?



参考になるケースが地球の南側にあります。



この疑問には「南極」が参考になります。南極は月と同じようにどの国も治めることが不可能な場所です。そして、13人の赤ちゃんが産まれたことがあります。



南極で生まれた赤ん坊たちは両親と同じ国籍になるので……



宇宙で生まれた赤ん坊たちも、両親と同じ国籍になります。



しかし、アメリカやオーストラリアなど、国の外で生まれた赤ん坊に自動で親の国籍を与えない出生地主義をとる国があります。



この制度の国だと、前述した「ロケットは所属している国の領土の延長になる」というルールが適用され、ロケットで生まれた赤ちゃんは「そのロケットが属している国の国籍」になります。



これは飛行機に乗っている時と同じルールです。



しかし、属している国がない「月」や「火星」はどうなるのでしょうか?



答えは「誰にもわからない」です。



法律家にもわかりません。真剣に、本当に誰にもわかりません。これは現在も多くあるの欠陥の1つに過ぎません。



人類の歴史上で536人の宇宙飛行士が宇宙に行きました。彼らは犯罪を犯すタイプの人々ではなく、高度な訓練を受け、国の代表として宇宙に行きました。



商業的な宇宙飛行と宇宙観光事業が発展していくこれからのことを考えると、将来の問題を防ぐために、これらの法律はより明確にする必要があります。



そして、これらの問題が「想定」として考える時間はもうありません。



近い将来、私たち人類は宇宙の商業利用が可能になるという時代、そして新たなフロンティアの幕開けに必要な法律面、政治面での土台作りが進められるという魅力的な時代の両方を迎えることになるでしょう。