「丸の内勤務・OLのA子さん」の代わりは、たくさんいる。私がにゃんにゃんOLを辞めた理由
定時帰りの、腰掛けOLたち。
”安定”という鎧を手に入れた彼女たちは保守的で、誰かが幸せにしてくれるのを待っている。
丸の内の大手損保会社に勤める愛華(26)も、その一人。典型的な腰掛けOLである彼女には、実はこんなあだ名がある。
“にゃんにゃんOL”、と。
そんな愛華に対して檄を飛ばしてきた元OLのアリサ(29)だったが、遂に愛華は念願の商社マンの彼・和樹と結婚へと駒を進めた。
今回は、アリサのOL時代を振り返る。

「吉田、この資料のコピー、20部用意しといて。」
「わかりました。」
部長から貰ったデータをコピー機に転送し、上がってきた印刷物を一部ずつホッチキスでまとめる。
何の労力もいらないこの作業に、私は心を無にして黙々と作業を進めようと決意する。
時計を見ると、16:30。あと1時間半もあるのか...
「アリサさん、何ため息ついてるんですかぁ?お手伝いすること、ありますか?」
そんなことを思いながら黙々と作業を続けていると、背後から声が聞こえた。
今年新卒で入ってきた愛華だった。
ピカピカの肌からは若さが溢れ出ている。ふわっとしたスカートによく合うパールのピアス。綺麗に手入れされた薄ピンク色をしたネイルを見ていると、“手伝って”とは言い難い。
「ありがとう、大丈夫だよ。」
愛華に笑顔で返答して作業に戻った途端、不意に虚しくなった自分がいた。
一体、私はいつまでこの仕事を続けているのだろうか...
毎日、ルーティンワークの連続。私の人生、これでいいの?
毎日ルーティンワークのにゃんにゃんOLたち
私は、夢を持ってこの会社に入社した。
毎日慌ただしい日々を送りながら、誰かの役に立つ仕事をする。
しかし数年も経つと、私は何を目標に頑張っていけばいいか、分からなくなってきてしまった。
営業補助の仕事以外に、来客対応や会議準備などの雑務もこの先ずっとやっていくのだろうか?自分が主体となってできることが、もっとあるのではないか?
そう、考え始めたのだ。
「アリサさん、この後予定ありますかぁ?お食事会、人数が足りなくなっちゃって...もし良ければ、来て頂けませんか?」
資料を部長に渡し、席へ戻るとキラキラと目を輝かせながら愛華が近づいていきた。今夜の相手のスペックを嬉しそうに語る愛華を見ながら、ふと考える。
後輩から食事会に誘ってもらえるのも、一体何歳までなのだろう。
今30歳前後で会社にいる独身組が、毎日楽しそうに仕事終わりにどこかへ出かけているイメージはない。
そして、“30歳過ぎた途端に食事会がパタリとなくなるわよ!”と言っていたことを思い出す。
「大丈夫、行ける!声かけてくれてありがとう。」
今日は仕事終わりに、ホットヨガへ行こうと思っていたが、誘われるうちが花である。
ホットヨガのクラスをキャンセルし、18時になると同時に愛華と共に化粧室に直行し、気合を入れて化粧直をしてから、いそいそと食事会へと向かった。

翌朝、7時きっかりに鳴る携帯のアラームに起こされた。
昨日のワインがまだ残っているが、眠い目をこすりながらベッドの上で伸びをし、慌てて顔を洗い、化粧をして着替えて出社準備だ。
満員電車に揺られながら今日のニュースとSNSをチェックし、8:50に会社に到着。
エレベーターで愛華に会い、昨日の商社マン合コンの反省点を言い合う。
そして9時から業務開始。皆で食べるランチを終え、夕方まで仕事をし、残業がないアフターファイブは習い事へ向かう。
これはこれで楽しい毎日だ。
しかし翌日も、翌々日も、全く同じ。
それは永遠に代り映えしない日々のように思えた。安定という素晴らしさはあるし、この会社にいる限り食いっぱぐれることはない。
ただ、これでいいのだろうか。
仮に私がいなくなったところで、“OL・A子さん”の代わりはたくさんいる。
それは“吉田アリサ”という一人の人間である必要など何もなく、誰でもいいのだ。
そんな時、不意にネットでとある商品に目が留まった。
にゃんにゃんOLを卒業する人、しない人。その差はどこ?
私らしさって何だろう?にゃんにゃんOLを辞めた理由
それは海外で人気を博し始めていた、カリフォルニアに本社があるブランドのオーガニックシャンプーだった。
シャンプー以外にも様々なコスメラインを発表しており、注目はしていた。
しかしアジアにはまだ進出しておらず、認知度も低い。でも、誰も手がけていないからこそやる意味があるのではないだろうか。
不意に今しか、自分しかできない気がして、私の中でプツンと何かが切れた。
そこから、私の行動は自分でも驚くほど早かった。
本社に直接交渉メールを送り、最初は少ないロット数ながらも、日本での販売契約を結ぶことに成功。(幸い英語ができたのでここの交渉は早かった)。
OL時代の貯金を全てはたき、Webサイトを作成し、輸入販売業を開始。
当初は生活のためにOL業を続けながら夜に雑務や発送などの事務作業を行おうかとも考えたが、人生そんなに甘くない。
また基本的に、会社からダブルワークは認められていないため、私は潔く辞める決意をする。
辞める旨を上司に伝えに行くと、目をまん丸にして驚かれた。
「結婚するから辞めるんじゃなくて、自分で仕事をするから辞めるのか?」
部長からすると、全く理解ができなかったようだ。周囲からも同じことを言われた。
「安定の大企業をやめて、自分でするなんてリスキーな道を選んで勿体無い...」
それでも、迷いは全くなかった。
一度しかない人生。会社に縛られず、自分の足で生きて行くことの責任は重い。しかし、誰にでもできる仕事にもう興味はなかった。

◆
あれから3年が経つ。
全く売れず、在庫の山を目の前にして、どうしようかと途方にくれた初年度を経て、現在売り上げは順調に伸びており、自分が手にするお給料はOL時代の約2倍になった。
責任の重さはあるものの、頑張った分だけ売り上げに反映される。
そして会社という箱に囚われていた時には全く見えていなかった日々の幸せや、自分の足で人生を決めている楽しさを体感中だ。
「アリサさん、聞いてくださいよぉ。この前部長がまた...」
目の前で愛華が愚痴っている。
人生、全ては自分次第。
時にはリスクを背負うこともある。けれども、自分の足で大きく一歩踏み出した人間にしか分からない楽しさと面白さがあることを、私は愛華に伝えようと決めたのだ。
-にゃんにゃんOL達、それで本当にいいと思ってるの?と。
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にゃんにゃんOL、ついに結婚!その先にあるのは幸せなのか?それとも...
