ニューヨークのネイルサロンの7〜8割は韓国系による経営だ(写真はイメージ)

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在米韓国人が米ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)の報道にいっせいに反発している。NYT紙の記事はニューヨークのネイルサロンに勤務する労働者の環境の劣悪さを浮き彫りにする内容だ。

ニューヨークでネイルサロンを経営しているのは韓国人が大半だということもあって、記事では韓国人が他民族の従業員に対して差別的な扱いをしていると指摘している。こういった指摘に対して韓国人経営者らは「韓国人を侮辱している」などとして記事の訂正を要求、法的措置も辞さない構えだ。

韓国人経営者は「スペイン系従業員は韓国人ほど賢く清潔じゃない」

問題とされているのは、現地時間の2015年5月7日、「すばらしいネイルの代償」と題してウェブサイトに英語、中国語、韓国語、スペイン語の4か国語で掲載された長文記事。ニューヨーク市だけでもネイルサロンは約2000あり、ここ15年で3倍ほどに増えた。従業員の中には英語を満足に話せない人も多く、NYTの取材チームでは、ネイルサロンの労働者や経営者、計150人に4か国語で取材した。その結果、労働者の大半が最低賃金の水準を下回り、無給のケースもあったという。

記事では、韓米ネイルサロン協会の話として、ニューヨーク市のネイルサロンの7〜8割が韓国人が所有していることも伝えている。劣悪な労働条件の責任の一端を韓国人が担っていることにもなり、記事では「民族的カーストシステム」と題した章を設けて、従業員の間にも韓国人とそれ以外とで格差があることを指摘している。カーストの順位は「韓国人→中国人→ヒスパニック(スペイン系)→それ以外の非アジア人」なのだという。

例えば賃金格差については美容学校の教師や経営者の話として、「一般論として、韓国人労働者は他と比べて15%〜25%稼ぎが多いが、格差がもっと大きいこともある」と実情を伝え、あるサロンの韓国人経営者は「スペイン系従業員は韓国人ほど賢く清潔じゃない」などと差別意識を隠さなかった。それ以外にも、記事では(1)ヒスパニック(スペイン系)労働者は私語禁止で12時間勤務をせざるを得なかったが、韓国人は自由に話していた(2)チベット人の労働者は台所で昼食を取るように言われたが、韓国人は机で昼食を食べていた、といった人種差別的な事例を明らかにしている。

「賃金の差は技術によるもので人種によるものではない」

これに対して、韓国人が経営するネイルサロンの業界団体が5月12日に会見して記事に反論した。その内容は(1)1時間8ドル75セントの最低賃金では人材確保が難しいくらい(=低賃金だという指摘は誤り)(2)賃金の差は技術によるものであって人種によるものではない、といったものだ。会見では、記事が「韓国人を侮辱している」として、訂正などが行われない場合には法的措置も視野に入れていることも明らかにされた。

朝鮮日報は、この会見を伝える記事の中で、「ここ数年の間、中国系やベトナム系など後発が激しく追撃をしている。他民族店は、主に低価格で新規顧客を開拓しており、韓国人店は、比較的良好な技術を持った従業員を雇用し高級化戦略に転換している傾向にある」などと背景を説明しているが、NYTの調査報道は人手と時間をかけ、法的リスク管理も行われているとして「解決は容易ではない」と、韓国人の業界団体側の主張が受け入れられる可能性は必ずしも高くないとの見方を示した。

実際、NYT報道後の5月10日には、ニューヨーク州知事が実態調査に乗り出す方針を打ち出し、NYTは5月11日付の紙面でも社説で「ネイルサロン従業員に正義を」と題して待遇改善を訴えるなど、業界にとっては外堀が埋まりつつある状況だ。