大幸薬品、ストレスを感じやすい新生活時期にも「正露丸」は必需品
4月・5月は、新入学や転勤など、新しい環境で生活をスタートする方が多く、たとえば、通勤・通学などの電車の中や重要会議や試験前に、お腹の不調、ストレス性の下痢に悩む方が増える季節です。そのような時には「正露丸」が役立ちます――大幸薬品の代表取締役社長の柴田高氏は、「外科医、正露丸を斬る」という著書があるように、医学博士であり、同社の経営に携わるまでは外科医として活躍していた。「ラッパのマーク」で知られる「正露丸」は、長い歴史のある胃腸薬だが、柴田氏は、この伝統薬の薬効解明に1990年代から取り組んできた。そして、「正露丸は、研究すればするほど、現代社会に必要とされる価値が浮き彫りになってくる」と、驚いたという。柴田氏に「正露丸の真実」について聞いた。
――伝統薬として知られる「正露丸」ですが、それを科学的に薬理効果を研究した結果、現代の常備薬として不可欠な薬であるという思いを強くされたそうですがその真実は?
ストレスで腸の具合がおかしくなる方は、IBS(過敏性腸症候群)という病気が原因かもしれません。IBSは日本人の5〜10人に1人が当てはまるとも言われており、緊張すると、お腹が痛くなって便意をもよおす。電車に乗ると、お腹が痛くなって、何度も途中下車してトイレにかけ込むなどの下痢症状があります。この病気を完治する特効薬は、世界中で研究開発されていますが、医師の診察なしにドラッグストアで手に入るお薬はありません。
ところが、「正露丸」の主成分である「木クレオソート」を、心理ストレスで下痢を誘発するラットに血液中に注射すると、下痢が止まるということが明らかになりました。IBS用に開発されている新薬と違って、下痢、軟便に効能のある「正露丸」はドラッグストアで購入できる薬なので、手軽にお求めいただけます。
「木クレオソート」の一つの薬効はストレスでも誘発されるセロトニンという神経伝達物質によって引き起こされる大腸の過剰運動を止める。もう一つの薬効は腸管の塩素イオンチャネルに作用し、水分分泌を抑制することで水分吸収を促進する。この二つの薬理効果により下痢全般に使用でき効果が実感できるという根拠が明らかになりました。私が指導した薬理論文が1992年発表された当時は、私はまだ、外科医でした。この研究をきっかけに、新たに大幸薬品研究所が設立され、正露丸の安全性や有効性の新たな根拠が解明されました。 「正露丸」は、ストレスや感染症による下痢だけでなく下痢に伴う脱水対策にも効果的といえます。例えばかぜやノロウイルスによる吐き下し、飲みすぎによる脱水症対策にも効果が期待できます。さらにお腹の不調からおこる熱中症にも使えると考えられます。
――熱中症にもいいのですか?
大幸薬品が継承した、「忠勇征露丸」は日露戦争前からある胃腸薬ですが、日露戦争当時旧日本陸軍も「征露丸」を製造し、毎日飲むべしと全軍人に指導していました。その理由のひとつとして、1日数十kmにもおよぶ行軍の脱落者を少なくするため、強制的に「征露丸」を飲ませていたのではないかと推測しています。水筒と「征露丸」を持たせると脱落者が減ったという話もあります。当時の「征露丸」は脱水症対策として経験的に使用されており、現在の「正露丸」も熱中症対策に使えると考えました。
「正露丸」は海外旅行の必需品であることはご存知でしょう。旅行者下痢症という病気があります。この病気は大腸菌毒素によって引き起こされる下痢症です。私は正露丸がO157や大腸菌毒素によって起こる食あたりに薬効があると考え、大幸薬品研究所でウサギの生きた腸管で菌毒素による分泌性下痢モデルによる木クレオソートの薬理実験を実施しました。結果はまさに、木クレオソート投与により腸管内の水分分泌が低減され、その有効性のメカニズムが解明されました。木クレオソートの作用メカニズムは腸管内での水分分泌を引き起こす塩素イオンをブロックすることが明らかになりました。
――正露丸の効能には、「食あたり」、「水あたり」、「はき下し」などと書いてあります。衛生状態の良くなった日本でも、毒素原性大腸菌による「食あたり」もニュースになっています。また節電の夏水分の取りすぎによる「水あたり」もありますね。正露丸はもはや古い薬のように思われがちですが今でも利用価値が変わっていないのですね?
「食あたり」ということも、異なる視点で考えれば、別の疾患でも通用することがわかります。
たとえば、「食あたり」には、食べ物が原因で腹痛を起こすものとして、アニサキス胃腸症があります。刺身などの生魚に寄生虫が住み着き、それを食べると、寄生虫が胃などの内臓に進入して、ひどい腹痛を起こします。このアニサキスに対する正露丸の作用が、医学の教科書にも書いてあります。そして、2012年には、ドイツで発行された医学誌に、アニサキスに正露丸を使ったヒトの臨床についての症例報告が掲載されました。「食あたり」というとピンときませんが、アニサキス胃腸症というと、日本食の文化が広まっている欧米では、今、大変ホットな話題です。
また、「はき下し」というと、たとえば、ノロウイルスによる感染などは、吐いて下す、という、いわゆる「はき下し」の症状になります。ノロウイスルの感染には、下痢止めとして世界的に普及している塩酸ロペラミド製剤は使えないのです。塩酸ロペラミドは、腸の動きを完全に止めてしまうので、感染を助長してしまいます。ところが、正露丸は腸の蠕動運動は止めないので、「はき下し」の症状にも使えます。
このように、薬としての薬効メカニズムが明らかになることによって、現代の社会環境に応じて使い道が広がっているのです。ここ20年くらいにわたって続けた研究によって、木クレオソートについての薬効に関するエビデンスも整理されてきました。正露丸の効能の表記についての見直しも検討してもらうタイミングに来ていると感じています。
――IBS、熱中症、ノロウイルスなど、まさに、現代社会が直面している問題です。話しを聞くほどに「正露丸」はすごい薬だと感じます。これからの展望は?
かつては小学校の保健室の常備薬には正露丸がありましたが、さまざまな誤解やリスク回避の考え方で利用される機会が少なくなっています。正露丸は生活の中での常備薬として、いつも身近にあって、お腹の調子がおかしい時に使っていただきたい。臨床医であった私が申し上げるのもおかしい話ですが、何でもかんでもお医者にかかるのではなく、常備薬を上手に使って、自分の体調管理をしっかり行う習慣を啓蒙するような情報発信を行いたいと思っています。便や尿などの色や臭いに、いつもと違うところがないか、顔や手のひらの色や肌の状態はどうかなどを自分でチェックし、小さな変化に気がつくことが第一歩です。下痢などのお腹の症状があれば、正露丸を飲んでください。正露丸を飲んでも症状が変わらない場合は、お医者さまにかかるようにして欲しいです。
そして、正露丸の用法用量は正しくは1日3回です。1、2回の服用で下痢症状が改善しますが、1日3回の服用によって、水分吸収がすすみ腸管運動と身体の水分バランスが正常に戻ります。このような自己管理治療に対する正しい理解は、これからの日本の医療を考える上でも、大切なことだと思います。わかりやすい情報発信を続けて、皆さんが自分で、どんな時に正露丸を飲めばよいのかを探し出すお手伝いをしていきたいと思っています。
話は変わりますが宇宙から地球を見ると、陸地でも森林地帯が青くみえるといいます。それは、木の葉に木の樹脂が気化して、青く見えるのだと聞きました。この樹脂成分に、「正露丸」の主成分である木クレオソートが含まれます。古来より動物は、この森林の樹脂の恵みで癒されてきたのだと考えます。現代社会で身近に森林を感じる機会は、あまりありませんが、「正露丸」には、森林の恵みが配合されています。皆さまに安心して使っていただける常備薬として、常に身近な存在でありたいと思っています。(編集担当:徳永浩)
