「家は資産になるから」世帯年収1,000万円の夫婦が郊外の戸建てを購入。5年後に感じた〈後悔の理由〉
住宅購入は、多くの家庭にとって人生で大きな決断の一つです。家賃を払い続けるより、自分たちの資産になる家を買ったほうがよい。そう考える人は少なくありません。特に子育て世帯では、広さや部屋数、庭のある暮らしに魅力を感じ、マンションより戸建てを選ぶケースもあります。しかし、家は「買えば資産になる」だけではなく、暮らし方や将来の変化とも深く関わるものです。
「賃貸より資産になる」…共働き夫婦が選んだ郊外の戸建て
直樹さん(仮名・42歳)と妻の由美さん(仮名・40歳)は、5年前、郊外に新築戸建てを購入しました。
夫婦の世帯年収は約1,000万円。当時、子どもは4歳と1歳。都内の賃貸マンションでは手狭になり、住宅購入を考えるようになりました。
「毎月家賃を払うくらいなら、ローンを組んで自分たちの家にしたほうがいいと思ったんです」
都心近くのマンションは高額でした。一方、郊外なら同じ予算で広い戸建てが買えます。
駅からは少し離れていましたが、車があれば生活できる。庭もあり、子どもたちがのびのび過ごせる。何より、土地付きの家なら将来の資産にもなる。
そう考え、夫婦は購入を決めました。
最初の数年は満足していました。休日に庭で遊ぶ子どもたち。広いリビング。上下階の音を気にしなくてよい暮らし。
由美さんは、「買ってよかった」と何度も思ったといいます。
国土交通省『住宅市場動向調査』でも、注文住宅や分譲戸建住宅の取得理由として、広さや間取り、子育て環境、住宅の質などが重視される傾向が示されています。住宅購入では、資産性だけでなく、生活環境や家族構成が大きな判断材料になります。
しかし、5年が経つころ、夫婦の気持ちは少しずつ変わっていきました。
最初に負担になったのは、通勤でした。直樹さんは都内勤務で、通勤時間は片道約1時間半。購入当初は「慣れれば大丈夫」と思っていましたが、年齢とともに疲れが残るようになりました。
由美さんも時短勤務からフルタイムに戻ると、保育園や学童の送迎、買い物、家事を回すだけで一日が終わっていきました。
「家は広いのに、時間にはまったく余裕がありませんでした」
由美さんはそう振り返ります。
「資産」のはずが…住み続けるためにかかるお金と時間
戸建ての負担は、住宅ローンだけではありませんでした。
固定資産税、火災保険、庭の手入れ、外壁や屋根の将来的な修繕費。マンションのように管理費や修繕積立金がないぶん、自分たちで備える必要があります。
購入から5年が経ち、給湯器や設備の不具合も少しずつ出始めました。
「戸建ては維持費がかかると聞いてはいました。でも、実際に自分たちで全部考えないといけないのは想像以上でした」
さらに、子どもが成長すると、習い事や塾の送り迎えも増えました。駅から距離があるため、車がないと生活しづらく、車の維持費も家計にのしかかります。
総務省『家計調査(2025年)』でも、住居費だけでなく、自動車関係費や教育費、光熱費などは家計に影響する支出です。住宅ローンの返済額だけを見て「払える」と判断しても、実際の暮らしでは複数の固定費が重なります。
夫婦がさらに気になったのは、売却のしやすさでした。
「資産になる」と思って買った家でしたが、駅から距離がある立地で、将来必ず高く売れるとは限りません。不動産会社に相談すると、地域や築年数、交通利便性によって評価は大きく変わると説明されました。
直樹さんは言います。
「家を買った時は、“土地付きだから安心”と思っていました。でも、資産価値は場所や需要で変わるんですよね」
もちろん、戸建て購入を後悔しているだけではありません。子どもたちが小さい時期に広い家で過ごせたこと、家族の思い出が増えたことは大切な時間でした。
ただ、夫婦はこう感じています。
「資産になるかどうかより、自分たちが無理なく暮らし続けられるかをもっと考えるべきでした」
現在、夫婦は住み替えも含めて検討しています。駅近の中古マンションに移るか、このまま戸建てに住み続けるか。子どもの進学、通勤、老後の暮らしまで含めて、家族で話し合うようになりました。
家は、単なる資産ではありません。毎日の通勤、家事、子育て、維持管理、将来の売却可能性。そうしたすべてを含めて、暮らしの土台になります。
