『バチェロレッテ4』が「最高傑作」と呼ばれる理由は番組があえて手放した「下品さ」にあった

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2017年からAmazonプライムビデオで配信されている、人気の恋愛リアリティショー(恋リア)『バチェラー/バチェロレッテ ジャパン』シリーズ。先日最終回が配信された『バチェロレッテ・ジャパン シーズン4』でシリーズ10作目の節目を迎えた。男女逆転版の『バチェロレッテ』だけでも4作目の本作は、マンネリ化しているかと思いきや、SNS上では「最高傑作」「過去イチおもしろかった」といった声も上がるなど盛り上がりを見せている。

しかし、見たときに感じる印象は、シリーズ開始初期とは異なるものである。今回の『バチェロレッテ4』の内容を分析しながら、中身の変遷と、シリーズの“王道恋リアへの原点回帰”とも言える展開を見ていこう。

日本に定着した“異色の恋リア”

そもそも、2017年の『バチェラー・ジャパン』開始当初はまだ日本で「恋リア」という呼称さえ定着していなかった。むしろ『バチェラー』がブームの起爆剤となり、「恋リア」という呼称を広めたと言っていいだろう。

かつてテレビ局の作っていた近い内容のもの、たとえば『あいのり』は、「恋愛観察バラエティ」として自身を「恋リア」とは称しておらず、『バチェラー』をはじめとする配信サービスでの作品が、恋愛リアリティ番組というジャンルそのものを、馴染み深くさせていったからだ。

つまり、『バチェラー』シリーズは、恋リア市場を拡大し、盛り上げた功労者なわけだが、その出自としては、王道というよりも異色の存在だった。

そもそも、日本発ではない。本家の『The Bachelor』は、2002年に始まり、30ヵ国以上の国でローカル版が制作された人気企画で、そのフォーマットを日本にも輸入して作られたものである。簡単に言えば、ひとりの富豪の男性(バチェラー)を、十数名の女性が最後のひとりの座を目がけて、奪い合う番組だ。

最後のひとりは誰か――それを最大の惹きにするのは海外のリアリティショーではよくある作りだ。例えば2000年に米国で人気となり、リアリティショーブームを牽引した『SURVIVOR(サバイバー)』も無人島などの僻地で十数名の参加者たちがサバイバルし、最後のひとりは誰かを競うものだ。大雑把に言えば『SURVIVOR』に恋愛の要素を足したのが『The Bachelor』である。恋愛もあるがサバイバルゲーム・心理ゲームとしての面白さがあった。最後のひとりに残るまでには1対1の普通の恋愛とは違う予想外の障壁があり、ゲーム性の高さがひとつの売りだったのだ。

もともと『あいのり』や『恋するハニカミ!』のような、どちらかというと恋愛模様をじっくりと見つめる番組の存在感が強かった日本では、『バチェラー』のようなゲーム性の高い番組は、異色の存在として映っていた。Amazonが海外からもってきた、異色のリアリティ番組――それが、最初に『バチェラー』が上陸したときの第一印象と言っていいだろう。それから9年。今回の『バチェロレッテ4』で10作目となり、“異色の恋リア”はすっかり日本でも定着した。

恋リアの王道を通る

最新作『バチェロレッテ4』で失われているのはゲーム性である。具体的に内容を見ていこう。

例えば、最初の合同でのアピールタイムとなるカクテルパーティは、シーズン開始当初は、相手の時間を奪い合うサバイバルゲームとしての色合いが強かった。今回は参加者たちが自主的に「バチェロレッテと話す時間はひとり3分」とルールを決め、順番まで決めた。とても和を重んじる、平和的な解決方法である。そこに対し、「この競争」「なんで順番を守らないといけない」と煽って、順番を無視してアピールすることを正義としたリトアニア出身の参加者だけが、シーズン初期の番組の色を体現していたが、彼は最初に脱落する。

また、バチェロレッテに「似てる」と好感を抱かれ、有力候補と思われた参加者も、その実「戦況」という言葉を使う、ゲームに臨む感覚をもっており、まさかの脱落をした。

デートの権利を他者から奪って、ゲーム性を高める「ストールンローズ」といったアイテムもなくなり、今回は少しトーンの落ちた類似アイテムが1回登場するのみ。

さらに、参加者の落とし方にも、違いがある。今回は、最初の選別のタイミングで14人から9人に一気に絞り、その後は基本的には、1回ごとにひとりずつ脱落者が出るという構造だ。以前は、2〜3人同時に落ちることもよくあったことと比較すると、それぞれとの恋愛の様子が丁寧に描かれ、視聴者はそれぞれの参加者が選ばれなかった理由もそれなりに腑に落ちて見ることができる。

ゲーム性こそ減ったものの、その分、丁寧に恋愛を見せる構造になっているのだ。つまり、10作目にして「恋愛リアリティショー」の「恋愛」の比重が大きくなっている。それは、このシリーズが最初は避け気味だった“恋リアの王道”の道を10年目にして通ろうとしているようにも映る。

そこに「正式にお付き合いした方はいないです」と語る今回のバチェロレッテ・平松里菜の資質が大きく影響を及ぼす。彼女が“初恋”に至るまでの様子が映像によって丁寧に描かれる。それはスタジオの指原莉乃が「ドキドキの音が聞こえてくるような息遣い」と描写し、「シリーズの中でこんなにドキドキが伝わってきたことありましたか?」と興奮して水を向けると、今田耕司が「ない!」と即答するほどだ。

最後まで残った男性参加者

また、かつてのシーズンでは、ゲームに勝ち残るためのワザのように、序盤からキスが繰り出されていた。番組の宣伝でも「色仕掛け」といった言葉が踊り、南国の海やプールなどを舞台に、複数の女性が水着姿で連発するハグやキス……。その浮かれた感じ、もう少し言葉を選ばずに言えば下品な感じを受け入れられない人もいただろう。しかし、今シーズンは、最終回で初めて、結ばれる男性ひとりのみを相手にしたキスシーンが登場するだけだ。

そしてバチェロレッテ本人だけではなく、その周囲も、そのテイストにあった言動を見せる。最後まで残った男性参加者2人にその傾向は顕著だった。

最終回まで告白をせずに残った男性は「今この場で“俺、里菜ちゃんのこと好きだよ”って言ってもなんかローズが欲しいだけみたいな感じに聞こえちゃう」と、簡単に「好き」とは言わず、自分の感情を偽ってまで、勝負に勝とうとする道を選ばない。

もうひとりの男性は告白にひと工夫があった。バチェロレッテに対し「好きになれる人かどうかわからなかった」と、番組に参加したからといって、すぐに相手を追う姿勢になることに疑問を呈した冷静なスタンスを明示。さらに、「自分の気持ちが正直に好きだって思えないと、一緒になっても意味がない」と、暗に最後のひとりに残るだけ、つまりゲームに勝つだけのことに興味はないという姿勢を示した上で、「好きです」と告白する。

双方ともに、参加者自身が「ゲームに勝つことよりも、本当に好きになった人と結ばれることが大事だ」という意思表示をしたという点で、シリーズの中でも重要なシーンである。

また、3人にまで絞られた男性参加者と面談したバチェロレッテの父親は「現実に戻るということは、苦労をしたときにどれぐらいサポートをしてくれるか、あるいはどんな有効なアドバイスくれるかっていうことがすごく大事じゃない?」と、この非日常の旅に浮かれるのではなく、日常に戻ったときのことを考えろというアドバイス。これもまた、ゲームそのものよりも、その後の生活を重視する、地に足の着いた助言である。

番組に自分の人生を売りとばしていない

彼らから透けてくるのは、番組で最後まで残ることがゴールではなく、あくまで自分たちの人生の一部を番組が映しているという感覚だ。番組に自分の人生を売りとばしていない、と言い替えてもいいだろう。

つまり、全体的に落ち着いているのだ。ゲームに気を取られる者は退場を余儀なくされ、父親までもが浮き足立ちそうになっている娘たちに自制心を働かせようとする。結果、ゲーム性が薄れた番組で、恋愛そのものが浮かび上がってくる作りになっているのだ。かつての“浮かれたサバイバルゲーム”だった『バチェラー』シリーズは鳴りを潜めていると言っていいだろう。

スタジオの山添寛も「僕、久しぶりに“この人と結ばれて欲しい”っていう気持ちになりました。ちっちゃい頃ドラマ見ててその感覚あったじゃないですか」と語っており、それは視聴者にとってはもはや、リアリティショーというより、恋愛ドラマを見ているような感覚だったのかもしれない。

今回の『バチェロレッテ4』とその盛り上がりは、輸入されてきたバチェラーというフォーマットが、10年の時を経て、現在の日本の視聴者が求める形にゆっくりと変化した帰結なのである。

最後に付記しておけば、かつての『バチェラー』視聴者が求めていたゲーム性も、ニーズがなくなったわけではない。その視聴者のニーズは、現在はABEMAの恋リアが担保している。

ABEMAでは、2020年代以降、金目当ての出演者が紛れ込んでいる『LOVE CATCHER Japan』や、20代の女性(GIRL)と、30代の女性(LADY)がチームに別れる『GIRL or LADY』といった、ゲーム性の高い番組が多くラインナップされるように。『ラブパワーキングダム〜恋愛強者選挙〜』にはかつての『バチェラー』シリーズの出演者が“再登板”することも多い。

『バチェラー』シリーズ開始からおよそ10年。配信番組で「恋リア」が盛り上がる時代になり、種類も多種多様に。各サービスの“役割分担”ができている状況になっているのである。

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