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特集です。新潟水俣病の認定をめぐり、行政と司法の判断が割れています。決着は上級審へ持ち越されました。

しかし行政側の新潟市もまた国との間で「板挟みだ」と主張。水俣病をめぐる認定基準に対しては原告と被告の双方が国に疑問を唱え、その制度に翻弄されています。

◆新潟水俣病第2次行政訴訟 

新潟地裁で受け取った「勝訴」の判決。

【内山晶弁護団長】
「こちらの言い分が認められた。ほぼ100点満点の判決」

新潟水俣病第2次行政訴訟は水俣病と認められなかった60代から90代の男女8人が、2019年にその処分取り消しなどを求めて県と新潟市を提訴したものです。

◆新潟市が控訴

決着は持ち越されました。

【中原八一市長】
「断腸の思いでの決断であります。東京高裁に控訴しました」

【原告】
「新潟市のトップとして一緒になって戦っていきますとかね」「期待していたんですけれどその言葉もなくて」
「国には逆らえないのかなって」

新潟水俣病の認定は、県と新潟市が国の基準に沿って審査する「法定受託事務」と呼ばれます。
これまで水俣病と認められた人は717人、対して、水俣病と認定されなかった棄却は延べ1658件に上ります。

◆新潟水俣病とは

1965年に公式確認された新潟水俣病。

メチル水銀に汚染された阿賀野川の魚を、流域の住民が食べたことで被害が広がりました。

原告のひとりは、認定を求めた際、子どものころの食生活を細かく聞かれたといいます。

【原告】
「2回認められなくて新潟市のほうで3回目の申請をしているんです。1食にどれくらい食べたか、このくらいですか?それともこのくらいですか?どういうふうに切って、輪切りですか?とか。しつこく言われました」

2回目の行政訴訟に当たる今回の裁判。

3月12日の判決で、新潟地裁は県と新潟市が水俣病と認めなかった処分を「違法」としました。

原告8人全員を水俣病と認めるよう命じる判決を言い渡しています。

◆国の基準では認められず 

【中原八一市長】
「国の基準に従ってまっとうにやっているのに、こうした判決を受けざるを得ないのかというところに疑問がある」

国の基準では水俣病と認められず、裁判では認められるという「ねじれ」。半月後のことし3月24日、環境省の担当者が説明に訪れた際は。

【中原八一市長】
「水俣病の認定基準に曖昧な点があるから行政の判断と司法の判断が食い違うんじゃないか」

新潟市独自に水俣病を判断してもいいのかと詰め寄った市長。対して、環境省は全国での統一的な制度運用を強調しました。

【環境省特殊疾病対策室 森桂室長】
「(県と新潟市の)独自というよりは全国でやっていくものとして基準といったものを我々お示ししている」

被害者の声と国の見解、その狭間で。

【中原八一市長】
「正直なところ板挟みに遭っているようで大変苦しい」

◆新潟県も控訴

県も「すべての患者の早期救済」を強調したうえで、国の基準と司法の判断が食い違ったことから控訴しました。

【花角知事】
「国が事務の考え方を変えない限りどうしようもない。もし判決が確定してしまうと、これまで専門的に審査を続けてもらった審査会の有識者の皆さんも審査のしようがなくなる」

2017年、新潟水俣病の第1次行政訴訟では東京高裁が原告全員を水俣病と認定。このときも国と司法の判断が割れました。

篠田昭前市長は、上告はしませんでした。

【篠田昭前市長】
「ある意味、敗訴してこれだけホッとしている裁判はないかもしれない。板挟みと言いたくなる気持ちはよくわかります。こういうスキームの中で判断してくださいよと、枠組みは国が決めている。その枠組みの中で考えるといういわば“規定演技”。“自由演技”じゃないんです」

第1次訴訟の判決を受け、環境省に認定基準の見直しを求めましたが、その声は届きませんでした。

【篠田昭前市長】
「司法の判断と行政の判断、基準これがここまでズレて変だよねと。こちらが“異議申し立て”をしてから10年近くが流れている。一時地方分権と言われましたが、国と地方は上下ではないんだと、対等なんだと位置付けられていますが、いろんな制度でそうなっていない」

原告の弁護団のひとりは水俣病の認定の「ねじれ」を解消すべく、県や新潟市など自治体側が独自の認定基準を定めるべきだといいます。

【新潟みなと法律事務所 石崎誠也弁護士】
「(新潟は)水俣病を発見したし患者の救済をやった新潟大学もある。弁護士だって何十人もいる。そういう自治体がリソース(資源)を活用すれば審査基準を作れないはずはない」

◆見直しは今後あり得るのか?

国の認定基準の見直しは今後、ありうるのか。その基準に対し、県と新潟市が独自に判断する「裁量」は残されているのか。

テレビ新潟は環境省に対し回答を求めました。

【環境省の回答】
「これまでの最高裁判決において現行の認定基準は否定されていないものと理解しており、環境省として見直すことは考えていません」

環境省は、県と新潟市にも同様のことを伝えたといいます。
また、水俣病の認定基準については。

【環境省の回答】
「国が統一的な運用となるよう定めています。これらの基準を自治体の判断で変えることはできません」

新潟水俣病第2次訴訟の決着は上級審に持ち越されました。

原告の中には両親が水俣病と認定されている人がいます。

【原告】
「父親、母親が認定患者なんですね。見た目とか先生(医師)も見られて、診察をしないかという話で」

親は我が子について当初、水俣病の認定を申請しませんでした。

【原告】
「(家族の健康状態を)調べる調査票みたいなのがあったんでしょう。親が代筆して書いて健康状態は良好とか、何の問題もないような。子どもをを守るために必死で書いたんだと思うんです。自分たちは認定されても、子どもがさらされてはダメみたいな感じで」

【原告】
「みんなもう60代、70代で、体も結構ガタがきていて大変なんで、本当に真剣に考えてもらって認定をお願いします」

司法が差し向けた“光”と国や自治体が引いた“境界線”

新潟水俣病をめぐる“ねじれ”はいまも被害者の苦しみを置き去りにしたままです。

(2026年4月15日放送「夕方ワイド新潟一番」ニュースより)