原油供給完全途絶の可能性も出てきた…ホルムズ海峡危機に直面する日本が解決すべき「超重要課題」

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アメリカとイランの停戦協議をめぐる情勢は、めまぐるしく展開している。本稿執筆時点(4月18日)では、どのような結果になるかが、きわめて見通しにくい状況にある。

とりわけ重要なのは、トランプ大統領が、4月12日、ホルムズ海峡危機に関し、イランの港湾に出入りする船舶をアメリカが封鎖するという奇策を示したことだ。日本にとって状況は悪化したと考えられる。中東からの原油輸入が長期にわたって停止する危険が、無視できない状況になった。

以下では、これまでの経緯を整理するとともに、ホルムズ海峡封鎖が今後の日本の経済活動に及ぼし得る影響について考えることとする。そこでの最も重要な課題は、ナフサの供給確保だ。

停戦交渉の動きと逆封鎖

アメリカとイランの停戦協議は、4月11日から12日の未明にかけて21時間に及んだ。しかし、協議は不発に終わり、合意に至らなかった。

その後、情勢はめまぐるしく展開している。以下では、12日以降の展開を整理しておこう。

まず、12日に、トランプ米大統領は、ホルムズ海峡を通航する船舶に対する「封鎖」措置を開始したと発表し、封鎖海域に接近するイランの攻撃艇はすべて破壊すると警告した。一方、イランの港に出入りしない船舶については、海峡の通過を許可するとした。通航料などをイランに支払った船舶に対しては、その通過を認めないという。

この措置の目的は、イランの各国との貿易を阻害して、イランが石油侵入を得られなくなるようにし、経済的に打撃を与えて、戦闘能力を低下させ、それによって譲歩を引きだそうとすることとみられる。

ところが、4月17日には、イランのアラグチ外相は、ホルムズ海峡について、停戦の残り期間中は開放されると明らかにした。

米国とイランの停戦は4月21日まで続く。17日、トランプ氏はSNSで、イランが海峡再開に同意したと述べる一方、「イランに関する限り、海上封鎖はイランと我々の取引が100%完了するまで全面的に維持される」と述べた。

逆封鎖政策のもたらす影響

トランプ大統領による逆封鎖政策のもたらす影響は大きい。

これまでに中国やインド、パキスタンなどの船が、通行料を払ってホルムズ海峡を通過していたとみられたが、逆封鎖によって、これらイランがこれまで友好国として認めてきた国の船舶も通行できないことになるだろう。

トランプ政権としては、中国がイランから原油を買うことを難しくすることによって、中国がイランに対して圧力を掛けて、アメリカに対して譲歩すべきとイランにメッセージを伝えてもらうことを期待しているのではないだろうか?

では、日本の船舶はどうなるか?

これまでの状況だと、仮にイランが日本を友好国と認めてくれれば、通行料を支払うことによって通過できる可能性があった。しかし、通行料の支払いをアメリカが許さないということであれば、通行料は払えない。そうすると、アメリカの措置の前に、イランに阻止されて動けないということになるのではないだろうか。

すでに影響が:ユニットバスの新規受注を一時停止

原油供給の停止や縮小によって今後どのような影響が生じるのか、その詳細についてはまだ分からない点が多いのだが、国によって大きな差がある。

まず、アメリカには自国産原油がある。だから、ホルムズ封鎖によって直接に影響を受けることは少ない。しかし、原油価格の世界的な値上がりは避けられない。そうなるとアメリカ国内のガソリン価格が上昇し、中間選挙を前にして、トランプ大統領に対する不満が強まる可能性が高い。

重要なのは、日本への原油供給が長期にわたって影響を受ける可能性が生じたということだ。

日本の海運会社は、イランとの直接の交易はないと考えられるので、ホルムズ逆閉鎖による直接的な影響はないと考えられる。しかし、ホルムズ海峡の状況がさらに悪化し、長期化する恐れはある。

そうした場合、「逆封鎖」が、石油関連製品の供給不安をさらに広げ、経済にさらに深刻な影響を与えかねない。

実際、4月13日から、住宅設備大手のTOTOをはじめとする大手メーカーが、ユニットバスの新規受注を一時停止した。ナフサの供給不足が原因で、壁材や接着剤の調達が困難なためだとされる。

LIXILやパナソニックも供給調整に入っており、再開の目処は立っていない。 4月13日時点までに注文済みの案件は優先して納品されるが、新規の注文は受け付けていないという。 これが続けば、住宅などのリフォームや新築の工期に大幅な遅れが生じる可能性がある。

このように、ナフサの供給不足によって重要な経済活動が停止するという事態が、すでに生じている。この事実は、決して軽視できない。

原材料不足でこうした事態に陥るのは、第2次大戦から復興後の日本では、初めてのことではないだろうか?

石油関連製品は、日常生活や企業活動のさまざまな場面で多用されている。イランによる海峡封鎖の影響で、すでに減産や値上げが実施されているが、「逆封鎖」はさらに供給不安を加速させる危険がある。

朝日新聞は、宮城県大崎市など5市町では、自治体指定ごみ袋の不足を見込み、指定外のごみ袋でも回収する措置を20日から始めると報道した(2026年4月18日「ナフサ不足でごみ袋を指定外もOKに 行政によぎる2年前のトラウマ」)。

製造業の3割が影響を受ける

帝国データバンクは、4月17日、ナフサ関連製品の供給網に関する調査結果を発表した。

それによると、日本の製造業のうち3割にあたる4万6741社が、ナフサ不足により調達に影響を受ける可能性がある(「ナフサ不足で調達リスク、国内製造業の3割 帝国データ調べ」日本経済新聞、2026年4月17日)。

業態別の企業に占めるナフサ関連企業の割合では「化学工業、石油・石炭製品製造」が67%で最も高かった。プラスチックや合成繊維、医薬品などの原料を手がける企業や、ゼラチンや接着剤、洗剤などを含む界面活性剤などを手がける企業の割合が高かった。

この調査は、「供給制限や高値が続けば、中小製造業の経営を圧迫し、製品価格を通じて生活にも影響が及ぶ恐れがある」と指摘している。

高市首相は「国内需要4ヶ月分を確保」というが

前回の本欄でも述べたように、4月5日、高市首相はXに投稿をし、つぎのように述べた。

(1)ナフサについては、少なくとも国内需要4ヶ月分を確保している。

(2)中東以外からのナフサ輸入量を倍増することによって、在庫期間は半年以上に伸びる。

停戦交渉が成立することを心から期待したいが、不確実性が残っている。イランの核開発問題について、容易に合意が得られるとは考えにくいからだ。現時点では、将来の見通しがほとんどつかない。

仮に事態が膠着状態になれば、ホルムズ海峡から日本への原油供給が途絶してしまう可能性を否定できない。

そうした状況を前にして、日本としては、備蓄をできるだけ長期にわたって保持することが重要な課題となるだろう。

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