【インフラ危機の現実】意外と知らない、コンクリート「ひび割れ」のメカニズム
日本はこのまま崩れ去ってしまうのか? 道路、鉄道、水道、インフラ、橋……なぜ全国各地で次々に事故が起きるのか? お金も人も足りない……打つ手はあるのか?
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(本記事は、岩城一郎『日本のインフラ危機』の一部を抜粋・編集しています)
外からの力により生じるひび割れ
地震のように構造物の外から大きな力が加わると、コンクリート内部に「曲げる力」(曲げモーメント)や「ずらそうとする力」(せん断力)が発生します。これらが原因で、コンクリートが引っ張られる方向と垂直にひび割れが入ります。
写真に示す通り、実験室で鉄筋コンクリートの「梁」(横に渡した棒状の部分)を支え、その中央を押すと、真ん中に細かく縦に伸びるひび割れが発生します。これは「曲げひび割れ」と呼ばれます。一方、両端の近くでは斜めの大きなひび割れが入り、「せん断ひび割れ」と呼ばれます。どちらのひび割れに問題があるかは一目瞭然です。
1995年の阪神・淡路大震災では、高速道路のコンクリート製の橋脚が倒れましたが、そのとき見られたのがこの「せん断ひび割れ」です。以来、コンクリートの中に「せん断補強鉄筋」と呼ばれる鉄筋を多く入れるようになり、その後大きな地震が発生しても同種の被害が減りました。
コンクリートを縮ませてくれないことにより生じるひび割れ
コンクリートは、温度が上がると膨らみ、下がると縮みます。また、乾燥すると水分が蒸発して縮みます。もし自由に縮むことができれば問題は起きませんが、梁が柱や他の構造に固定されて動けないと、引っ張られた状態になり、ひび割れが入ります。
たとえば、コンクリートは固まるときに化学反応が起きて熱が出ます。そのため、打ち込んだ直後は温度が上がり、その後は外気温まで下がります。膨らむときは問題ないのですが、縮むときに縮ませてくれないと見かけ上引っ張られることになりひび割れが入ります。これを「温度ひび割れ」と呼びます。
一方、コンクリートが固まった後、乾燥すると内部の水分が蒸発して縮みます。これも同じように縮ませてくれないとひび割れが入ります。これを「乾燥収縮ひび割れ」と呼びます。
コンクリート内部が膨らむこと(劣化)により生じるひび割れ
コンクリートの内部で何らかの理由で体積が増えると、内側から押し広げる力が働き、ひび割れが生じます。
たとえば、コンクリートの中の鉄筋が、二酸化炭素や塩分の影響でさびると、鉄筋の体積が増えて周囲を押し広げ、ひび割れが発生します。あるいは、コンクリート中の水が凍ると体積が約9%増え、内部から押し広げられます。さらに、「アルカリシリカ反応」では、骨材に含まれるシリカとアルカリが反応して膨張し、ひび割れが生じます。つまり、これらのタイプのひび割れは、コンクリートが劣化して内部から壊れていくサインでもあるのです。
このように、コンクリートのひび割れは「見た目が悪くなる」だけでなく、「水漏れ」や「寿命の短縮」につながります。そのため、ひび割れの原因を探り、設計・施工・維持管理の各段階で適切な対策を取ることがとても大切なのです。
さらに、「日本はこのまま崩れ去ってしまうのか…意外と気づかない「インフラ危機」本当の実態」」では、いま大問題として迫っているインフラ老朽化問題をひきつづき見ていく。
