「テストは良いのに通知表は3」内申点は“先生”というクライアントを攻略するゲーム? プロが説く「不条理な学校評価」の泳ぎ方
「うちの子、テストの点は良いんです。でも、通知表は3ばかりで……」
差し出された通知表を前に、肩を落とす親御さんの姿。個別指導塾経営者、そしてプロ家庭教師として活動する中で、私は幾度となくこの光景を目にしてきました。
実は、お気づきの通り公立中学校の内申点は学力試験だけではない独特なルールで動いています。ノートの取り方か、提出物の出し方か、あるいは授業中の振る舞いか。不透明に見える内申点にも、実は明確な攻略ポイントが存在します。
合格への最短ルートを設計してきたプロの視点から、内申点というブラックボックスの仕組みを紐解き、お子さまの努力を合格へと繋げるための戦略を提示します。(個別指導塾経営、プロ家庭教師:妻鹿潤)
先生に気に入られたら勝ちという説の真偽
よく耳にする「先生に気に入られたら勝ち」という言葉。これは半分正解で、半分は誤解です。先生が個人的な感情で贔屓をしているというよりは、学校のシステムと相性の良い能力を持っているお子さまが、結果的に高く評価されているというのが実態です。
例えば、テストの点数が良く高い思考力を持っていても、字を書くのが苦手だと「ノートが雑だ」と判断され評価が下がってしまうケースがあります。
逆に、内容の理解が不十分でも、ノートの字が綺麗で枠線がきっちり引かれているだけで評価されるお子さまもいます。特に、学期に一度しか定期テストがない副教科などは、定期テスト以外では提出物や授業態度を中心に評価するしかなく、その基準がブラックボックスになりがちです。
一方で、学校側の事情も理解できます。一人の先生が数十人の生徒を公平に評価しなければならない現状において、ノートのきれいさといった形式的な基準で判断することは、組織を運営するための合理性であり、教員不足の中では避けることのできない効率化の結果でもあります。
発達障害や不登校にとっての壁
このシステムの理不尽が最も残酷な形で現れるのは、発達障害や不登校など、集団の「型」に収まりきらないお子さまに対してです。
例えば、計算スピードは誰よりも速いのに、字が乱れているだけで「丁寧さに欠ける」と評価を下げられる。授業内容はすべて理解しているのに、じっと前を向いて座っていられないと「学ぶ意欲がない」と決めつけられる。
内申点という物差しでは、こうした凸凹のある才能を評価することが難しく、通知表の数字に反映されづらいのが現状です。また、不登校の場合、フリースクールなどでの学習が内申点に反映されるかは学校の判断に委ねられます。そのため、たとえ高い学力があっても、テストなどの評価データが不足すれば、通知表に数字がつかず斜線が引かれることも珍しくありません。
「あなたの個性を評価する方法が無いので、評価しない」
そんなシステムの限界が、才能あるお子さまとそのご家庭を悩ませています。
不条理な制度の中での戦い方
この不条理なシステムの中で、お子さまの未来をどう守り抜くか。私が提案するのは、内申点を学力の証明ではなく、特定のルールに基づいたゲームのスコアだと割り切る考え方です。
■教師という名のクライアントを攻略する
内申点対策を「自分を偽る苦行」と捉えると、お子さまの心は摩耗します。そうではなく、学校を社会に出る前のシミュレーションの場、あるいは無理難題を言ってくるクライアントへの対応業務と再定義してみてください。
先生がどんなノートの書き方を好み、どんな振る舞いに加点するのか。その癖を観察し、最低限のコストで合格点を引き出す。これは、自分のアイデンティティを売ることではなく、組織の中で賢く立ち回るための高度なメタ認知能力を養うトレーニングになります。
■戦う場所を主体的に選ぶ
「公立中学から公立トップ校へ」というルートだけが正解ではありません。内申点の比重が低い当日点重視の公立高校や、出席日数や通知表の結果を問わない実力主義の私立進学校など、お子さまに有利な土俵は必ず存在します。
学校の評価という狭い物差しに自分を無理やり当てはめるのではなく、自分の強みが最大化される環境を早めに見極めること。それが、お子さまの本来の可能性を開花させ、確かな自信につながります。
■評価と自己価値を切り離す
最も大切なのは、通知表に刻まれた数字=お子さまの価値だと受け取らせないことです。
「このゲームのルールが君の能力に合っていないだけで、君自身の価値とは何の関係もない」
周囲の大人たちがそう断言し続け、習い事や創作活動、あるいは熱中している趣味の世界などで、学校以外の多角的な物差しを持たせてあげてください。
不条理なルールを嘆くのではなく、その外側を知ってしなやかに泳ぎ抜くこと。その知恵こそが、お子さまの主体性を育み、これからの時代を生き抜くための力となります。
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