「寂しい…でも、言えない」年収1,180万円・28歳エリートが直面する港区タワマンの孤独。5年以上に及ぶ“沈黙”の実態
新生活がスタートして間もない4月。華やかな新生活の陰で、誰にも言えない孤独を抱え込む若者が増えています。内閣府が発表した最新調査の結果とともに、エリートの孤独の深層に迫ります。
年収1,180万円、28歳エリートが失った「話し相手」
「仕事では会議も多いので、結構、人と話します。しかし、一歩オフィスを出れば、それから翌朝まで誰とも一言も言葉を交わさない。そんな生活がもう5年以上続いています」
都内コンサルティング会社に勤務する、松村大輝さん(28歳・仮名)。昨年の年収は約1,180万円。毎晩帰宅するのは、港区にある家賃30万円のタワーマンションの一室です。まさしく、同年代が羨む「勝ち組」の象徴のような存在ですが、窓から見える華やかな都会の眺望とは対照的に、そこにあるのは外界から遮断されたような静寂の空間でした。
「就職で上京してきました。当時は、高給を稼いで夜な夜な遊び歩く生活を夢見ていましたが、現実は責任の重いプロジェクトに忙殺される毎日。プライベートの交友関係を広げる気になれず、休日はいつもひとりです」
松村さんは帰宅後、寝るまでの時間のほとんどをスマートフォンの画面を見て過ごしています。
「SNSを開けば知人の結婚報告や楽しそうな飲み会の写真が流れてきます。一方で、自分は無言の時間を過ごしている。LINEも“ともだち”は多いんですよ。ただ、ほとんどメッセージのやり取りはなく、昔の友人も、今では知人というレベルです」
孤独を深める一因となったのは、過去の経験でした。
「以前、信頼していた友人に悩みを打ち明けた際、後日その内容が周囲に面白おかしく言いふらされていることを知りました。私に対する妬み……も、あったのかもしれない。それ以来、他者と深く関わったり、本音を漏らしたりすることに強い抵抗を感じるようになりました」
親にも「心配をかけたくない」と弱みを見せられないという松村さん。「困った時に本音を話せる人はいますか?」という問いに対し、「いません」と即答します。仕事では成功し、高い収入を得ていても、私生活では5年もの間、誰にも本音を漏らせない――。松村さんのような「周囲に気づかれない孤立」は、今の若い世代に共通する問題となっています。
沈黙の長期化と認知の壁
内閣府『人々のつながりに関する基礎調査(令和6年)』において、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人は全体で4.3%でした。しかし、属性別に見るとその深刻さは異なります。年齢階級別では、松村さんのような「20歳代」が7.4%と最も高く、全世代でトップとなり若年層の孤独感が際立っています。
特筆すべきはその継続期間で、孤独感がある層のうち、実に59.9%がその状態を「5年以上」継続させています。一度孤独の淵に沈むと、長期間にわたって抜け出せない実態があるのです。
また、高収入であったり経済的に恵まれていたりするからといって、孤独と無縁とは限りません。世帯収入が「1,500万円以上」でも3.3%が、経済的な暮らし向きが「大変ゆとりがある」でも4.6%が孤独感を訴えています。
その背景には、孤独感に強く影響を与えるライフイベントとして「家族との死別(24.6%)」に次いで、「一人暮らし(18.8%)」「人間関係による重大なトラブル(13.7%)」が上位に挙がっています。松村さんのように「友人に裏切られた」といった過去のトラブルは、その後の対人接触を拒むことになり、結果として外部との接点を失わせる要因となります。
さらに心身の健康状態の影響も見逃せません。「心身状態があまりよくない」と回答した人の11.3%、「よくない」と回答した人の22.0%が孤独感を訴えています。一方で「心身状態がよい」と回答した人は1.3%で、その差は歴然です。
また調査では、スマートフォンの使用時間(画面を見る時間)についても言及しています。時間が長くなるほど孤独感を訴える層は増加傾向にあり、「8時間以上」では13.3%に達します。
深刻なのは支援との断絶です。支援を受けていない理由として「支援が必要ではない(62.6%)」という回答が最多でしたが、詳しく見ると、孤独感が強い層ほど「どのような支援があるか知らない(19.7%)」や「受け方がわからない(18.4%)」といった情報不足を理由に挙げる割合が高くなっています。本来助けが必要な層に、セーフティネットが選択肢としてあがらない「認知の壁」が存在します。
一方で、社会には「他者を支えたい」という潜在的な意志もあり、48.7%が「困っている人がいれば手助けをしたい」と考えています。しかし、行動に移せない最大の理由は「何をすればよいかわからない(42.9%)」という情報不足です。
新生活が始まる4月、孤独を解消するために必要なのは、周囲の声掛けと並行して、行政窓口やNPOなどの具体的な支援情報を獲得することです。身近な人の変化に気づいた際、適切な相談場所を提示できるよう、支援制度の存在を社会全体で共有することが大切です。
