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退職金などのまとまった資金を運用すると考えたとき、“一括投資”と“積立投資”どちらが有利なのか……中東情勢をめぐって株価が不安定な値動きをみせるなか、投資手法に頭を悩ませている人もいるのではないでしょうか。そこで今回、1,000万円の投資資金があると仮定して、株価が右肩上がりで推移する場合と、投資直後に下落してその後回復する場合の運用成績をシミュレーションします。

「一括投資」と「積立投資」どちらが有利?

新NISAを活用して退職金などのまとまった資金を運用する場合、「一括投資」と「積立投資」どちらが優れているか悩む人も多いのではないでしょうか。今回は、この2つの方法のどちらが有利かシミュレーションしていきます。

新NISAの限度額は年間360万円です。仮に1,000万円の資金がある場合、特定口座と併用しながら、合計1,000万円を一括投資する方法と、3年間に分けて積立投資する方法があります。

年利5%で運用できるとすると、特定口座にある640万円を1年後に売却して新NISAへ移し、利益部分に20%の税金を支払ったうえで翌年の枠を埋めます。残りの資金も同様に運用・移管するとしましょう。

この結果、3年目の時点では一括投資のほうが、積立投資よりも約37万円多くNISA枠に投入できる計算になります。10年後の資産額を比較すると以下のとおりです。

■一括投資(1,000万円を投入し、特定口座部分を随時NISAへ移管):約1,612万円

■3年間の積立投資(360万円+360万円+280万円):約1,557万円

差額は約55万円となり、一括投資のほうが有利であることがわかります。ただし、これは株価が継続的に上昇する前提での試算です。

「V字回復相場」では?

しかし、現実の相場は常に上昇するとは限りません。

では、投資直後に株価が下落した場合、一括投資と積立投資の優劣はどう変わるでしょうか。

また一括投資を選択した場合、特定口座の損失を確定させてNISA口座へ移すか、回復して利益が出るまで待つか、という選択も重要になります。

ここでは、投資直後に20%下落、その後20%反発し、以後毎年+5%で推移するという値動きを仮定します(10年後には元本の約1.62倍に到達する水準)。

最終的な到達地点(元本の約1.62倍)は上記と同じでも、過程が大きく異なります。

■論点1.一括投資の場合、下落時に特定口座部分をすぐにNISAへ移すか、回復を待つか

■論点2.一括投資vs積立投資

回復を待つより、損失を確定させNISAに移したほうが得

〈仮定条件〉

投資直後に−20%、その後+20%で反発し、以後毎年+5%で推移する

まず、一括投資(1,000万円投入)で特定口座640万円部分の扱いを比較します。

◆ケース1.一括投資で、下落直後に特定口座からNISAへ移す場合

NISA口座の360万円は、10年後584万円になります。

一方、特定口座の640万円は、投資直後に20%下落した場合、翌年は512万円、つまり128万円の含み損の状態です。このうち、360万円相当を売却し、NISA口座に充当します(売却時は損失確定のため、税金はかからない)。この360万円は、9年後729万円となります。

そして残りの152万円は、反発(20%上昇)後にNISA口座に移し、8年後には308万円になります。

つまり、10年後は584万円+729万円+308万円=約1,621万円となります。

◆ケース2.一括投資で、回復して利益が出るまで待ってからNISAへ移す場合

ケース1と同様、NISA口座の360万円は、10年後584万円になります。

特定口座の640万円は、整理するうえで320万円ずつに分けます。最初の320万円(A)は、投資直後に20%下落するため256万円になり、翌年308万円になります。

しかし、「まだ元本が回復していない」とあと1年耐えると、369万円になります。元本から49万円増えているため、売却。

すると、税金が49万円×20%=9万円かかるため、手取りは360万円になります。3年目の時点で、この360万円をNISA口座に移します。すると、10年目には507万円になります。

残った320万円(B)も、先ほどと同様に運用すると369万円になりますが、(A)で限度額までNISA口座を使っているため、翌年まで持ち越します。

そして翌年、387万円になった時点で売却すると、元本より67万円利益が出ているため、67万円×20%=13万円税金がかかります。つまり、手取りは374万円です。374万円をNISAで運用すると、10年目には501万円になります※。

※ 本来は限度額360万円だが、シミュレーションのため誤差としてそのまま運用。

つまり、10年後は584万円+507万円+501万円=約1,591万円となります。

一見、損失がわかった段階でNISAに移すケース1のほうが「みすみす損失を確定した」と感じますが、実際にはケース1のほうが、計算上は30万円ほど多くなる結果となりました。

このような結果になる理由は、「税金」にあります。ケース2では税金の22万円(9万円(A)+13万円(B))が複利運用から抜けるため、その後の成長が抑えられ、差が生じているのです。

■論点2.一括投資vs積立投資

次に、同じV字回復相場で3年間の積立投資(360万円+360万円+280万円)を行った場合、10年後には約1,786万円となりました。この場合、一括投資(1,621万円)より約165万円有利です。

結局、どう投資すればよいかまとめると、以下のとおりです。

・期間中ずっと年利5%で上昇し続ける場合……一括投資が約55万円有利

・投資直後に−20%下落しV字回復する場合……積立投資が約165万円有利

ただし、数値は前提条件(上昇率や変動幅)によって変わるため、参考程度に留めることをおすすめします。

正解はないが「やってはいけない投資手法」はある

ここまでシミュレーションをしてきましたが、どちらが有利かは相場の変動によって変わるため、結論としては「どちらでも良い」です。深く考えすぎずに、最初から「一括投資」または「積立投資」で運用すると決め、それを貫くことをおすすめします。

このとき、唯一やってはいけないのが「中途半端な折衷案」を選ぶことです。

たとえば、一部を一括で投資し、残りを待機させて「上がったら売却・下がったら追加投入」という柔軟対応を取る方法は、一見合理的に見えるかもしれません。しかし、現実にはタイミングの判断が極めて難しくなります。

「今が底か」「まだ上がるか」という迷いが常につきまとい、結果として相場に振り回されることになるでしょう。

投資で重要なのは、相場に振り回されないこと。そのためには、最初に決めた戦略を実行し続けることを意識してください。折衷案は自ら判断の機会を増やし、振り回されやすくするリスクがあります。

投資で「後悔しがちな人」の特徴は…

投資でもっとも後悔しやすいのは、「終わったあとに正解探しをする人」です。

一括投資で下落したら「積立にすればよかった」、積立で上昇したら「一括にすればよかった」などと、過去を振り返ればたしかに投資は簡単に思えるかもしれません。

しかし、その瞬間の判断は誰にとっても困難です。投資の目的は、お金を増やし、より豊かで幸せな人生を歩むこと。後悔を繰り返すのではなく、選択した道を前向きに進め、どの選択をしても「それなりにプラスになる」と考えられる戦略を選ぶことが、長期投資で成功するための心構えだといえるでしょう。

鳥海翔
株式会社Challenger代表取締役
FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資家