転職がキャリアの選択肢として一般化し、多くの企業が活発にキャリア採用を行う現代。大手企業への転職を検討する方も多いですが、各社が実際にどんな採用を行っているのか実態が見えづらいところがあります。

本企画では、大手企業に特化した転職プロダクト「Bloomキャリア登録」を展開するBloomの代表取締役 平原 俊幸が、「求職者が知りたい視点」をもとにしながら大手企業のキャリア採用責任者にインタビューを行っています。

○ファーストリテイリングなどで豊富な経験、「ポテンシャルを秘めた会社」としてコクヨに入社

今回は、コクヨ 執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長の越川さんにお話を伺いました。ノートなど文具の印象が強いコクヨ。しかし現在は文具にとどまらず、オフィス空間、ビジネスサプライ事業、海外事業など、「働く・学ぶ・暮らす」をワクワクさせるべく事業を大幅に拡大しています。コクヨのキャリア採用の実態と、人間性を大切にする企業カルチャーに迫ります。

――越川さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

キャリアのスタートは化学メーカーでの人事や経営企画でしたが、その後ユニクロを展開するファーストリテイリングへ2001年に転職しました。ナショナルブランドとしての展開やグローバル化など大きく事業と組織が拡大するなか、人事や経営変革業務を中心に仕組みづくりや文化醸成など幅広い役割を担いました。2019年に飲食業の会社に転職し、そこでは人事を中心に管理部門全般を統括していました。

2022年にコクヨに入社し、現在は執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長として人事、総務などを広く管掌し、人と組織、カルチャーに関わる領域の変革を進めています。

――様々な企業でのご経験を経て、コクヨに入社した決め手は何だったのでしょうか。

これまでの経験を注ぎ込むことで、会社が大きく成長・進化できる「ポテンシャルを秘めた環境」に行きたいという思いがありました。コクヨは120年の歴史の中で培ってきた素晴らしい商品や資産がありながらも、まだまだ伸びしろがある会社です。

面談を通じて、黒田社長の「自律協働社会を目指す」という強いコミットメントや、本気で会社を変革しようとする姿勢に触れ、ここなら自分の経験を活かして大きなチャレンジができると感じ、入社を決めました。

○コーポレートメッセージを「好奇心を人生に」に設定、事業変革を加速

――改めて、コクヨの事業内容について教えていただけますか。

当社の事業は大きく3つの柱で構成されています。1つ目は、空間構築や働き方を提案する「ワークプレイス事業」、2つ目は、カウネットなどのECを通じてオフィス用品をお届けする「ビジネスサプライ事業」、そして3つ目が祖業である文具などの「ステーショナリー事業」です。

コクヨは現在、これまでのプロダクトの枠にとどまらず、次々と新しい事業を生み出しています。「働く・学ぶ・暮らす」の領域において、お客様のクリエイティビティや「好奇心」を高め、人生を豊かにする価値を提供することを目指しています。

――2025年に創業120周年を迎え、「リブランディング」されたと伺いました。

これまでのコクヨの事業領域ありきではなく、何を目指すのか、会社としてのアイデンティティは何なのかについて議論を重ねました。その上で、コクヨ初のコーポレートメッセージとして「好奇心を人生に」と設定しました。

今後コクヨは「好奇心屋」になると決め、「好奇心」を軸に社会に役立っていけるよう大きく事業や組織を変革していきます。大阪の本社を90年ぶりに移転しますが、それも変革の1つの表れですね。

――「好奇心屋」というのは、具体的にどのような事業展開につながるのでしょうか。

例えば、ノートのような商品一つをとっても、単なる「便利な道具」を提供するだけではありません。ユーザーの頭の中にあるアイデアやクリエイティビティを後押しし、「思わず書きたくなる」「アイデアを発露したくなる」ような体験価値を大切にしています。文具という「ツール」ではなく、「学び方」を提案する会社になろうとしている訳ですが、これは世界的に見ても非常にユニークなアプローチだと自負しています。

オフィス空間の構築においても、単に効率よく作業できる場所を作るのではなく、社員同士が交流し、インスピレーションを得て「来たくなる場所」をデザインしています。これも家具をただ売るのではなく、オフィスという場所の価値の再定義を「働き方」から提案しているということになります。

既存事業においてはグローバルへの展開も強化し、アジアを軸としながら多くの方の「好奇心」を拡げ、働き方や学び方を支援していきます。

社員同士が交流するコクヨのオフィス

○年間約100名を採用。未知の領域を開拓する「次世代リーダー候補」を求む

――キャリア採用の実施状況や、採用の背景について教えてください。

事業の変革に伴い、ここ数年はキャリア採用のアクセルを強く踏んでいます。2023年は約70名、2024年は約100名を採用し、2025年度も約80名の採用を行っています。募集職種は、営業や施工管理、ITエンジニア、デジタルマーケティング、経理など、ほぼすべての領域にわたります。

採用を強化している背景には、新しい事業領域にチャレンジする上で、社内にないノウハウや知見を持った方々の力が必要不可欠であるという点があります。また、年齢層を含めた組織構成のバランスを整え、中長期的な成長を支える層を厚くするという目的もあります。

――どんな応募ルートから採用していますか?

全体としては転職エージェント経由での採用の比率が高いですが、自社サイトからの直接応募やスカウト経由の「ダイレクト採用」が大幅に増えており、全体の約4割を占めるようになっています。

コーポレートアイデンティティの見直しや、テレビCM、Webサイトのリニューアルなど情報発信の強化によって、コクヨが「挑戦している会社」であるという認知が広がってきた結果だと感じています。

――具体的な選考プロセスを教えてください。

ご応募いただいたのちは書類選考を経て、面接を2〜3回行っています。面接では選考部門の課長や部長、担当役員や、人事も同席してお話しする流れとなります。

――越川さんが選考で重視している点はなんですか?

選考では、これまでの経験で「ご自身の一番の代名詞になるような仕事」について深くお聞きすることがありますね。その際の思考プロセスや行動特性を掘り下げるようにしています。

コクヨには、経済合理性だけでなく「お客様の困り事を解決できるか」「共感できるか」で人が動くカルチャーがあります。そのため、合理性一辺倒ではなく、当社の人間性を重視する価値観と重なる部分があるかどうかを大切にしています。また最近では、今のポジションへの完全なスキルマッチだけでなく、数年先のリーダーとしてポテンシャルを発揮していただける「次世代リーダー候補」の採用にも注力しています。

品川のオフィスは地域の人も立ち寄れるオープンスペースとし、街との交流も大切にしている

○定着率は約95%!「人間性」を大切にし、実験を楽しめるカルチャー

――コクヨに入社した社員が驚くことはありますか?

あまり「驚いた」って声を聞かないんですよ。毎年多くの人を採用していますが、お互いのカルチャーがフィットしているかは、採用フローの中でもしっかりと確認するようにしています。そのためキャリア入社した社員の定着率も非常に高く、過去3年間で250名以上を採用していますが、95%程度の入社者が継続して勤務しています。社風に馴染む人が多いですね。

――コクヨで働く魅力や、カルチャーの特徴について教えてください。

社員のクリエイティビティを大切にしていて、会社全体が非常に「人間性が豊か」です。仕事以外の一面をテーマにした「CULTURE SNACK」というパブリックイベントを開催するなど、会社が掲げる「自律協働社会」を体感できるような従業員体験の仕掛けを数多く用意しています。社内イベントも本当に多いですね。経済合理性が最優先ということではなく、人間性や好奇心が豊かになることを尊重した働きやすい環境だと思います。

――東京品川オフィスの一部やカフェなどオープンなスペースになっていることにも驚きました。

「働く・学ぶ・暮らす」の実験場として、オープンなラウンジや公園、ショップ、コーヒースタンドなど誰でもご利用いただけるパブリックエリアを設けています。

オフィスビルをリニューアルする際に、品川がどんな街なのか、そのなかでどんな存在でありたいかをプロジェクトチームで議論しました。品川に住んだり働いたりしている方々が、気軽に立ち寄れる場所になったら素敵じゃないかという観点から街に開くというコンセプトを設計しています。それもコクヨらしい取り組みですね。

――最後に、転職を検討している方へメッセージをお願いします。

コクヨは創業120年の歴史を持ちながら、今まさに自分たちの手で新たな未来を切り開こうとしている変革のフェーズにあります。すでに出来上がった勝ちパターンに乗るのではなく、不確実な中でも自分たちで正解を作っていく面白さがあります。

この「実験場」のような環境で、成功も失敗も存分に楽しみながら、私たちと一緒に社会に新たな価値を仕掛けていきたいという方の挑戦を心からお待ちしています。

コクヨ執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長の越川様(写真左)とBloom代表取締役の平原(写真右)

平原俊幸 株式会社Bloom 代表取締役。横浜国立大学 経済学部卒、2003年にリクルートエイブリックに入社。転職エージェント事業を中心に法人営業・人事などを経験し、2018年に株式会社Bloomを設立。大手企業特化の転職/キャリア採用プロダクト「Bloomキャリア登録」を展開し、日本を代表する各業界大手企業のキャリア採用事情・転職マーケット動向に精通している。 この著者の記事一覧はこちら