「特別な場所でカムバックを果たせて感動しています」

 3月21日夜、韓国・ソウルの光化門広場。歴史ある王宮を背にした会場で、空前の大規模ライブを実現させたのは、7人組ボーイズグループBTSである。

【画像】「右腕には大きなタトゥーが…」兵役を終え、一段とたくましい体つきに変貌したBTSのメンバー


7人組ボーイズグループBTS。右から3番目がリーダーRM

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最新アルバムでは“日本統治下の独立運動家”に呼びかけ…

 デビューは2013年。

 20年にリリースした『Dynamite』で米音楽チャート『ビルボード』1位を獲得し、同年から3年連続でグラミー賞にノミネートされた。

「ところが人気絶頂の22年からメンバーが兵役に順次入った。今回のライブで3年半ぶりに7人完全体での復活となったのです」(音楽ライター)

 公演前日の20日に最新アルバム『ARIRANG』(アリラン)をリリース。発売開始わずか10分で、ミリオンセラーを達成した。

「『Dynamite』のような全編英語歌詞でかつポップなダンスナンバーは見当たらない。印象的だったのは、ナショナリズムが色濃く出ていることです」(同前)

 リーダーRMが作詞した収録曲「Aliens(エイリアン)」は、スターとなった自らを"よそ者"となぞらえた1曲。日本統治下時代の朝鮮独立運動家で、昭和天皇暗殺未遂事件にも関与したとされる金(キム)九(グ)が登場。RMが〈金九先生、(僕らを)どう思いますか?〉と、ラップで問いかける。朝鮮半島の地域研究が専門の神戸大大学院・木村幹教授が考察する。

「アルバムタイトルのアリランは、朝鮮半島に古くから伝わる民謡で、南北統一したら国歌にできる程の認知度を誇ります。金九はテロリスト的な側面もありますが、韓国では南北統一に尽力した英雄として記憶されている。朝鮮民族を1つにまとめる象徴が、金九であり、アリランなのです」

 韓国では北朝鮮との断絶に加え、国内でも左派と右派の激しい対立が続く。

「世界中にファンを持つ彼らもまた、左右に縛られない、国の象徴になりつつある。その自覚が彼ら自身からも強く感じられる作品だと思いました」(同前)

日本人ファンが目撃した“衝撃の現場”

 そんな最新アルバムを引っ提げて開催したのが、朝鮮王宮の正門・光化門前での復活ライブだ。現地を訪れていた40代日本人男性ファンが、興奮冷めやらぬ様子でライブを振り返る。

「毎年訪韓していますが、航空券代や宿泊費も、普段の2倍近い“BTS価格”でした。ソウル市内の高層ビルのあちこちに大型ビジョンが特設されていて、公演前にはライブの告知映像やブランドとメンバーのタイアップ広告が流れ、街はBTS一色。光化門広場周辺では通行人であっても手荷物検査をされる徹底ぶり。中には『なんで通れないんだ!』と怒っている人もいました」

 全長約550メートルの光化門広場内の指定席エリアに入れるのは2万2000人。手荷物検査を通過すれば、抽選に外れたファンも通行人も、広場を囲む道路をぐるぐる回りながらライブを覗くことができたという。

 夜8時に公演がスタートすると、

「7人揃って登場してきた瞬間の歓声が一番凄かったです。RMは怪我のため、椅子に座ってのパフォーマンスが中心でしたが、残りのメンバーが彼のもとに集まって歌う場面もあった。アルバム収録の最新曲をはじめ、『Dynamite』『Butter』などの大ヒット曲まで満遍なく披露してくれました」(同前)

韓国政府は「災害危機警報」を発令も

 大混雑による事故が懸念され、韓国政府は「災害危機警報」を発令したが、

「難なく通ることのできるエリアもあり、道端には高齢者が座っていましたよ。160人近くの犠牲者が出た梨泰院の雑踏事故(22年)の教訓から、警察は人流を滞留させないよう誘導していたそう。体感としては、祇園祭の前夜祭・宵山(毎年20万人が来場)の方がぎゅうぎゅう詰めという感じです」(同前)

 実際、警察当局は今回のライブに26万人が詰めかけると予測。安全対策のため警察や消防など計1万5500人を動員していたものの、来場者数は6万人前後に留まったという。

「現地の朝鮮日報は、公務員の過剰動員で少なくとも4億4000万ウォン(約4700万円)の税金が無駄遣いされた可能性を報道。それでも経済効果は、21日のライブだけで約280億円、活動再開によって最大10兆円規模に達する試算が出ています」(在韓記者)

 帰ってきたBTSは韓国国民を1つにまとめることができるのだろうか。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年4月2日号)