元産経新聞政治部部長の石橋文登氏

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「安倍晋三氏と高市早苗氏」――ともに保守派の政治家で、首相として選挙で自民党を"一強"へ導いた。だが、高市政権を理解するうえでは"安倍後継"という捉え方だけでは本質を見誤りかねない。両者違いはどこにあるのか。元産経新聞政治部部長の石橋文登氏に聞いた。

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 総理大臣の素養について麻生太郎さんは「どす黒い孤独」と語っていた。総理大臣たる者、孤独のなかで決断する能力や度胸が必須ということです。

 高市さんは孤独を好む。飲み会でわいわいやるのは嫌いで、夜は公邸で資料を読む。対照的に安倍さんはいつも周りに人がいて、彼らの意見に耳を傾けていました。

 孤独を好む高市さんの性質は果たして総理の素養につながるのか。今回の衆院解散でその答えが見えたように思います。

 解散・総選挙を打つということは総理にとって自身の政治生命を懸けた決断です。だから歴代総理の多くは側近や党重鎮などの意見を聞いたうえで、慎重に慎重を重ねて解散のタイミングを見極めようとした。

 だが、高市さんは誰にも相談せず、どす黒い孤独のなか、1人で決断し、大勝利を掴んだ。正直、見直しました。

 産経新聞の官邸キャップや政治部部長として歴代内閣を取材してきた立場から言えば、高市さんは安倍さんから政治信条を引き継いでいるが、決断力という点では党内の反対を押し切って郵政選挙をやった小泉純一郎・元総理に近い。安倍さんも長期政権で多くの孤独な決断をしてきたが、様々な事情から決断しきれなかった、あるいは判断を誤ったこともあった。

 その1つが幻に終わった2016年の衆参ダブル選挙です。当時、憲法改正発議に向けて衆参で3分の2の議席を取るために、安倍官邸では参院選に合わせて衆院を解散するダブル選挙が検討されました。副総理だった麻生さんも総理秘書官の今井尚哉さんも進言したが、菅義偉・官房長官は公明党との関係を重視して反対した。安倍さんは結局、公明党に配慮して解散を決断できず、結果的に大きなチャンスを逃した。

 あの時、高市さんだったらダブル選挙に踏み切ったのではないか。

 憲法改正を目指す高市さんにとって、次なる重要な決断ポイントは2年後の参院選挙です。自民党が参院でも3分の2を得ようとすれば、2人区、3人区に2人以上の候補を立てなければ難しい。しかし、それをやれば現職から大きな反発が出る。高市さんは党内の反対を押さえつけてでも憲法改正のために複数候補を立てて戦うかの覚悟と決断が問われるでしょう。

【プロフィール】
石橋文登(いしばし・ふみと)/1966年、福岡県出身。京都大学農学部卒業後、産経新聞に入社。2002年に政治部へ異動し、小泉政権から麻生政権までの政局を最前線で取材した。2016年に政治部長就任、2019年退社。著書に『安倍晋三秘録』(飛鳥新社、2020年)など。

※週刊ポスト2026年4月17・24日号