[3.31 KIRIN WORLD CHALLENGE 日本 1-0 イングランド ウェンブリー]

 聖地ウェンブリー・スタジアムに詰めかけた8万人の大観衆。熱視線の重圧を切り裂いたのは日本代表MF三笘薫(ブライトン)だった。イングランド代表から歴史的勝利をもぎ取った一戦で沈めた決勝ゴールはあまりにも鮮烈だった。

 ゴールシーンは前半23分。三笘自身のプレスバックでFWコール・パーマーからボールを奪うと、一気にショートカウンターへ。上田綺世のスプリントが相手の中盤の足を止め、その一瞬の隙をMF中村敬斗(スタッド・ランス)が突くと、狭い局面を通した鋭い横パスに三笘が迷いなく走り込み、右足ダイレクトで流し込んだ。ゴールネットを揺らした三笘は空中を舞い上がるように飛び、拳を握った。

 立ち上がりから押し込まれていた中で生まれた貴重な先制点。「10分、20分は相手の迫力もありますし、どうしても難しい展開になる」。それでも慌てず我慢した先にチャンスがあった。「そこを乗り切れば、自分たちもどこかで相手の疲労も出てくる」。事前に共有していた“耐える時間”を全員でやり切ったことが、勝機を呼び込んだ。

「少ないチャンスだと思っていたし、そこで決めきるというのはやらないといけない」。イングランドは欧州予選で無失点を続けてきた堅守。その壁を打ち破った価値を三笘自身は理解していた。「取った瞬間から間違いなくチャンスだと思っていた」。一瞬を逃さない決断力も光るゴールだった。

 技ありの横パスでアシストした中村との関係性も素晴らしかった。「ブライトンでは僕がその位置なので、逆に出さないといけないなと思わせるプレーだったので、本当に参考になった」。普段は自らが供給役となるポジションで、仲間から受けた“理想のパス”。その体験から新たな視点も手に入れた。

 シャドーとしてプレーしたこの3月シリーズでワールドカップ本大会への手応えをつかんだ。「ウィングバックよりも高い位置で残れるので、そこの強みを出すことが必要になる。サバイバルもあるので、この3月に結果を残すことは大事だと思っていた」。代表内の激しいサバイバルを勝ち抜くため、そしてFIFAワールドカップ本大会へ弾みをつけるための一撃だった。

 もっとも、本人は浮かれない。「結果だけ見ればいい勝利になると思うけど、内容を見ればボールも握られているし、ギャップは埋めていかないと本大会で痛い目に遭う」。欧州の強豪を撃破した現実となお残る課題。その両方を見据えている。

 取材エリアではブライトンに戻った後にイングランド人のチームメイトに会うのが楽しみかという質問を受け「どういう反応するか分からないですけど、良くはしてくれないと思います」と笑いを誘う場面もあった。歴史的勝利の立役者でありながら、視線はすでに次へ。三笘の進化は、この一撃で終わらない。

(取材・文 矢内由美子)