2020年に大ヒットを記録し、⽇本アカデミー賞ほか、海外30以上の映画祭を魅了し、国内動員196万人の大ヒットを記録したオリジナルアニメーション『映画 えんとつ町のプペル』。その最新作、『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』が公開中です。


親友のゴミ人間・プペルを失い、信じることを諦めかけたルビッチが、 “もう一度信じる勇気”を取り戻し、奇跡を起こす本作。製作総指揮・原作・脚本を務めた西野亮廣さんと、ルビッチ役の永瀬ゆずなさんにお話を伺いました。

--西野さんは、オーディションでの第一声から、永瀬さんがルビッチだと確信したそうですね。

西野:具体的に“この部分”と説明できないのですが、僕だけでなく、監督やプロデューサー、その場にいた人たち全員が「あ、これだ」という感覚がありました。ゆずなちゃんの声を乗せた映像を初公開した時のお客さんの反応も良くて、きっと皆さんの中に「ルビッチの声はこんな感じ」みたいなイメージがあったんでしょうね。それに合致したのが、ゆずなちゃんの声だったのだと思います。ゆずなちゃんのパーソナルな部分が共通しているのも大きいと思います。素直だけどちょっとヤンチャな性格が似ていると感じました。

--本作でのお芝居もとても素敵でした。西野さんが特に好きな部分はどこですか?

西野:森の奥に飛んでいくところや、そこから脱出するシーンは、ゲラゲラ笑いながら見ていました。あそこはアドリブでお願いしていたのですが、ゆずなちゃんが「ワンワンワンワン!」と言っていて。「なんで犬やねん!」と思わずツッコんでしまったくらいで(笑)。「アドリブをお願いします」と言ってスッとそれが出てくるあたり、まさにルビッチですよね。すごい才能だと思いました。それ以外にもアドリブをお願いしたシーンはたくさんあって、ゆずなちゃんは言えば何でも応えてくれるから、甘えてしまいました。お願いしたイメージ通りのものが返って来るから、気持ち良くなっちゃって(笑)。さすがです。

永瀬:いやいやいや!すごく難しくて「どういう風にやればいいんだろう?」とすごく悩んだんですよ。でも、いろいろ悩んだ結果「森に突っ込んでいくセリフの正解なんてない」ということに気付いて。きっと誰もわからないから、それならば思いっきり疑問をぶつけてやろうということで「なになになになに?!」や「ワンワンワンワン!」というアドリブを入れてみました(笑)。

--永瀬さんは本作のストーリーを読んで、どんな魅力を感じましたか?

永瀬:前作に引き続き、ルビッチのあきらめない姿勢に感動する物語だなと思いました。そして、前作よりも不安や迷いの部分が大きくなっているような気がして、ルビッチの複雑な心境を声に乗せられるように頑張らなきゃいけないなと感じました。プペルがいなくなったルビッチの喪失感を、ガスさんとナギさんの関係に重ねて描いているのも素敵で。「大切な人がいなくなった」という事実をどう受け止めて前に進むのか、すごく胸に響きました。

--「大切な人がいなくなった」というストーリーは、西野さんの実体験がもとになっているそうですね。

西野:そうなんです。22〜23歳くらいの時に相方の梶原くんが失踪して、キングコングが活動休止になりました。レギュラー番組8本が終わり、自宅マンションの部屋で3〜4か月ずっと座っているだけの日々を過ごしていて、吉本興業からソロ活動の提案をされたのですが、万が一それが上手くいってしまうと、梶原くんが戻って来る場所が無くなってしまうなと思ったんです。僕としてもそれは嫌だったので、「待つ」という決断をしました。これまでの人生を振り返った時に、一番覚悟を振り絞った瞬間はそこだと思います。その出来事を、あまり色を付けずに物語に落とし込みました。

--実体験や言葉をそのまま描かれたということでしょうか?

西野:劇中に登場するセリフは、僕が実際に梶原くんに言った当時の言葉をそのまま使用しています。梶原くんのお母さんが「西野くんが待ってるで」と伝えてくれたことがあったのですが、その時の梶原くんは情報の一切を断っていて、とっくに僕が一人で活動し始めて、別の道を進んでいると思っていたそうです。実際は、失った仕事先すべて僕一人に謝罪行脚させたわけですから。梶原くんにとっては、とんでもない驚きと恐怖だったわけです。
でも、僕は別に怒っていなくて。その後に2人で話す時間があり、雑談もしたし、「仕事がすべて無くなった今、これからどうする?」という今後についての話し合いもしました。そこで「まだ間に合うのだろうか」と言う梶原くんに、僕が「間に合う!」と返して。その時の言葉がそっくりそのまま劇中に登場していて、梶原くんは試写でビックリするくらい号泣していました(笑)。当時の自分に重ねちゃったんでしょうね。

--それは号泣しますよね…。西野さんはなぜ「待てた」のでしょうか?

西野:今もそうなんですけど、漫才している時もだし、2人で喋っている時間がやっぱりめっちゃ楽しかったんですよね。それを失ってしまうのは嫌だなと。それが一番大きかったですね。
「待つ」ことって必要だなと思うことがあって、例えば会社には僕よりも20個ぐらい下のスタッフもいるのですが、そういう人たちと仕事をする時に、全部口を挟んでいたら本人の成長を妨げちゃうなと思うんですよね。「これ失敗すんな」と思いながらも。過剰に口を挟まないことで、きちんと失敗を経験してもらった方が成長出来るかなと。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という、アフリカのことわざが好きなのですが、チームで仕事をしていれば、仕事のスピードが遅い人もいるけど、その人を切り捨てていたら大きな仕事が出来ないですよね。最近、経験と共にそういうことを考えることが多くて。

--まさにプペルのプロジェクトもそうですよね。

西野:そうなんです。もう本当にたくさんの人が関わってくれて、お客さん含めて一緒に作ってきたから大きくなっていったので。

--西野さんと梶原さんの思い出は、言ってみれば辛い経験かと思いますが、本作の様にキラキラとファンタジーに昇華させている所が素晴らしいです。

西野:僕はやっぱり、ファンタジーな冒険活劇とハッピーエンドを迎える展開が好きなんですよね。観客に結末を委ねる終わり方もありますが、ちゃんと着地させて、みんなで「良かったね」と感想を語り合えるようにしたいと思いました。もし今後、また作品を作ることになっても、ハッピーエンドは約束したいと思います。

永瀬:本当にそうやって、自分の体験したことから物語が作れるってすごいです。ルビッチとプペルの友情が前作よりも伝わるようになっていて、ルビッチのことをもっと応援したくなる物語だと思いました。

--本作のルビッチって、ちょっと聞かん坊だったりして、愛らしいですよね。

西野:「なんだこいつ!」「周りのこと何も考えてないじゃん」と思いませんでしたか(笑)? 前回はルビッチにそんな一面があることを描けていなくて、終始素直ないい子にしてしまったのですが、実はちょっとムカつくキャラクターなんですよ。そこは書いていて楽しかった部分でした。可愛いだけじゃなくて、憎たらしい一面もあって、見ていてムカつくけれど、その子がすごく頑張るからこそ愛着が湧いてしまう。そういった流れを通して、初めて1時間半観ていて耐えうるものになるんじゃないかと思いました。

--さらに永瀬さんの声でルビッチがイキイキしていると思います。

西野:ゆずなちゃんのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@yuzuyapi/)
で、ゆずなちゃんの弟を見て肉付けした部分もあります。「弟めっちゃ生意気やな〜」と思うのですが(笑)、それがあるから見ちゃうんですよ。子どもって、すごくしたたかな生き物だと思うんですよね。お母ちゃんが構ってくれないと思ったら泣くのをやめたり、怒ったかと思ったら急に明るくなったり。本作では、それをしっかり描こうと思いました。

永瀬:弟を見ていると、西野さんの言ったことがすごくわかります(笑)。お母さんと私の前では態度や言っていることが違うことがあるから、たまに「私はどうしたらいいの?!」と思うこともあります。

--可愛いです(笑)。本作で西野さんは製作総指揮・原作・脚本とたくさんの役割を務めていますよね。

西野:(永瀬さんに)偉いでしょ?

永瀬:すごいです!

--何をしている時が特に楽しいですか?

西野:やっぱり、みんなと一緒に作っている時ですね。アフレコなら、ゆずなちゃんのアドリブによってまたアイデアが浮かんだり、「この声が出るんだったら、これも言わせたいな」とかクリエイティブがどんどん進んでいったり。美術が上がってきたら、その美術に合わしてまた脚本を書き直すとか。映画は一人では作れないものですから、そういうみんなで一緒に何かをしている時間が楽しいです。

--永瀬さんはお芝居をしていてどんな時が一番楽しいですか?

永瀬:2つでもいいですか?まずは台本を読んで「こんなことをしようかな」「こんな気持ちなのかな?」と考えること。もう1つは実際に演技をしてその表現をしている時です。最初に土台を作ったら、その後は細かく1回決めるのですが、結果的に違うことをやっていることが多いです。楽しくなっちゃって。

--本作では、とても美しい約束が描かれていますが、お2人の印象的だった“約束”はありますか?

永瀬:私はまだ10年しか生きていないので、まだ印象的な約束が無いんですけど…

西野:そりゃそうだわ(笑)。

永瀬:友達と公園に行く約束をするとか、弟が「YouTubeチャンネルでボードゲームやろうよ」って言ってきた時には、ちゃんと守りたいなと思っています。

西野:大事な約束やね。僕は「コンビを続けること」ですかね。梶原くんって「一年目から売れた」と言っているんですけど、梶原くんは売れてなくて、西野の横にいただけなんですよね。梶原くんが本当の意味で売れたのは「カジサック」をやってからだと思います。そこまで17年間、ずっとくすぶってたんですよね。色々なことがあったけれど、コンビを組んだ時に一緒にがんばろうねと言ったことは、今のところ守れているし、キングコンビというコンビを死ぬまでやるだろうなと思います。

--本当に素敵な作品と、素敵なお話をありがとうございました!

『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』絶賛公開中
■製作総指揮・原作・脚本:西野亮廣
■監督:廣田裕介
■出演:永瀬ゆずな 窪田正孝 / MEGUMI
小芝風花 吉原光夫 土屋アンナ 山寺宏一
藤森慎吾 伊藤沙莉 / 東野幸治 錦鯉 / 森久保祥太郎
■アニメーション制作:STUDIO4°C
■原案:「チックタック ~約束の時計台~」にしのあきひろ著(幻冬舎)
■主題歌:「えんとつ町のプペル」ロザリーナ(ソニー・ミュージックレーベルズ)
■配給:東宝・CHIMNEY TOWN
■©️ 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会
■公式サイト:poupelle.com
■公式 X/TikTok/Facebook @poupellemovie
■公式 Instagram @poupelleofchimneytown
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