高市早苗首相

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 文化庁が4月から宗教法人の実態把握調査に取り組む。活動実態のない「不活動宗教法人」や「休眠宗教法人」が資金洗浄や脱税に悪用されているからだという。なぜ宗教法人が脱税に利用されているのかというと、いわゆる“坊主丸儲け”、非課税という聖域があるからに他ならない。

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 文化庁が重い腰を上げたのは、ある意味、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)のおかげと言っていい。

 2022年に起きた安倍晋三元首相銃撃事件を契機に旧統一教会を非難する声が高まり、文部科学省は翌年10月、解散命令を東京地裁に請求する。地裁は25年3月、解散を命じたが、旧統一教会側はそれを不服として控訴。その過程で、毎年150億円前後を韓国に送金していたことが明らかになった。むろん、信者からの献金の一部である。「新宗教マネー 課税されない『巨大賽銭箱』の秘密」(宝島社新書)の著書があるジャーナリストの山田直樹氏に聞いた。

高市早苗首相

「旧統一教会が多額の寄附金を韓国の教団本部に送金していることは以前からメディアが指摘していましたが、とうとう裁判所もそれを認めました。そもそも、このような団体が日本で宗教法人格を与えられていたのがおかしなこと。宗教法人は広義の意味で公益法人の一つです。つまり、非営利団体だからこそ非課税とされているわけですが、それを利用して日本人からカネを集めていた。旧統一教会や宗教二世問題の根源は税制にあると言っていいでしょう」(山田氏)

 もっとも、宗教法人だからといって、すべてが非課税というわけではない。

「宗教法人も物品販売や不動産販売など34種の収益事業については課税されます。ただし、文科省や国税庁がすべての宗教法人をくまなく調査しているわけではなく、宗教活動と収益活動の境界線も曖昧です。宗教法人は毎年、収支計算書を税務署に提出することになっていますが、把握できるのは申告された収益事業だけです。また、年間の総収益が8000万円以内の宗教法人は税務署への提出義務もありません」(山田氏)

 抜け道があるから悪用されるわけだ。

30年前の国会質疑

「非課税という聖域があるため、宗教団体の所轄庁である文科省も文化庁も踏み込みにくいと聞きます。公明党が与党から離脱した今だからこそ、あえて片山さつき財務相に宗教法人に対する税務調査の実施件数の開示を迫り、公表答弁を引き出してもいいと思います。いかに宗教法人が優遇されているかわかりますから」(山田氏)

 与党が自公連立政権となる前、国会に「宗教法人に対する特別委員会」が設けられたことがある。1995年、自社さ連立政権による村山富市内閣の時だ。新党さきがけの中島章夫・衆議院議員が国税庁次長の若林勝三氏に質問する(以下、第134回国会・衆議院宗教法人に関する特別委員会・第4号・平成7年11月6日の議事録より引用)。

中島議員:宗教法人の課税問題に対する取り組み方針ということでありますが、宗教法人につきましても、各省令の適用に当たっては聖域をつくることなく厳正に対処していくということが求められていると考えるわけでありますが、この点、税の執行におきまして、宗教法人の課税問題にどのように取り組んでおられるのか、お答えをいただきたいと思います。

若林次長:宗教法人に対しましては、各種資料、情報の収集に日ごろから努めておりまして、法人税、消費税の納税義務とか、またさらには源泉徴収義務のある宗教法人を的確に把握いたすよう努力いたしておりまして、課税上問題があると認められる場合には実地に調査を行うというふうにして、聖域にすることなく課税の適正化に努めているところでございます。/宗教法人につきましては、執行面での適切かつ厳正な対応が要請されておるということも踏まえまして、今後ともなお一層の適正化に努めてまいりたいと思っております。

――国税庁が“情報の収集に努める”“なお一層の適正化”と言っているところがなんとも心許ない。一般法人に対しては、まず言わないセリフだろう。そしてこの時すでに、不活動宗教法人の悪用についても指摘されている。

生活が派手な宗教団体代表者

中島議員:例えば、宗教法人を買収してこれを隠れみのにすることが取りざたされておるわけでありますが、課税上どのような問題があるのか、またこれにどう対応しているのかをお答えいただきたいと思います。

若林次長:個別事案について申し上げるわけにはまいりませんが、租税回避の態様の例として少し申し上げさせていただきますと、ある法人は、通常の株式会社として事業を行っておりましたけれども、宗教法人を買収した上で、事業の一部を宗教法人の所得と仮装いたしまして、これが非収益事業に当たるものとして申告をしていなかったという例がございます。

中島議員:今隠れみのの問題について御説明をいただいたわけでありますが、宗教法人の活動であっても課税上の非違というのが見られる例も多いと聞いているわけであります。これにつきましても、過去例えばどんな非違があったのか、実態がわかるように具体的に説明をいただきたいと思います。

若林次長:収益事業に関する宗教法人の非違といたしましては、本来収益事業からの収入であるにもかかわらず、これを非収益事業であるということで申告しておりましたり、収益事業と非収益事業との間の収入や経費の配分を誤って申告するという事例が見られるわけでございます。(中略)これは、ある宗教法人の代表者についてでございますけれども、生活態度が非常に派手だというような情報がございました。それに基づき調査をいたしましたところ、祈祷料の収入の一部を宗教法人の収入として計上するのではなくて代表者自身の遊興費や個人的蓄財に充てるというようなことがわかりました。したがって、これを給与と認定いたしたわけでございます。

 こうした質疑から30年を経て、ようやく宗教法人の実態把握調査が行われるわけだ。

「信教の自由」と「課税」

「1999年に自公連立政権が成立し、創価学会を支持母体に持つ公明党と自民党が組んだことで宗教法人の問題はほとんど議題に上がらなくなりました。しかし、その公明党が与党を離脱。宗教法人への適正な課税について、もっと議論されてもいいと思います」(山田氏)

 同じ宗教法人でも、檀家の少ない小さな寺もあれば、827万世帯の信者数を誇る創価学会のような巨大宗教法人もある。本当に儲けのない宗教法人は、課税したら潰れてしまうかもしれない。

「総収入でラインを引くのは不公平感があるため難しいでしょう。ですから、非課税部分に関しては免税制を採用するべきだと思います」(山田氏)

 これまでの“非課税”と“免税”では何が違うのだろう。

「これまで非課税部分については、宗教法人の判断で申告されていなかったわけです。免税というのは、原則徴収し、条件を満たした部分については課税しないということ。一般法人の企業と同様、収支についてはすべて申告し、課税するのが原則になります。そのうち還付できるものについては、国税が判断するということです」(山田氏)

 宗教法人に対する非課税を取り払い、一般企業並みに厳しく査定し、収益部分については適切に課税するというわけだ。ただし、課税によって「信教の自由」が損なわれるといった声も出てくるに違いない。

「信教の自由と課税とはまったく次元の異なる問題で、それを天秤にかけるのは間違っています。旧統一教会だって、宗教法人格を失っても信教の自由はあるわけです。むしろ宗教法人という法人格を認められた団体こそ、納めるべき税金はきっちり納めるべきです。非営利団体にもかかわらず海外に150億円も送金できるのはおかしいし、全国にバンバン豪華な施設を建築できるのもおかしいと感じる方もいるでしょう」(山田氏)

スズキのディーラーよりも多い学会施設

 たとえば、JR信濃町駅(東京都新宿区)の周辺は“学会村”と呼ばれるほど創価学会の施設が立ち並んでいる。信濃町という地名自体が学会を指すこともあるほどだ。宗教学者の島田裕巳氏は、2008年刊の「新宗教ビジネス」(講談社)で信濃町にある学会関連の不動産価値は479億2412万円にものぼると試算している。

「全国各地に文化会館や平和会館、池田講堂、戸田記念講堂などが1300カ所あるといいます。これらは宗教活動を行うための境内地と見なされ、固定資産税は免除されています」(山田氏)

 1300カ所といえば、トヨタは無理としてもスズキやダイハツのディーラー数を上回る数である。これらの固定資産税が無税とは……。

「墓苑事業も宗教活動の一環と見なされて非課税です。創価学会の場合、1991年の墓苑収入のうち墓石収入や貸付信託などで得た運用益なども宗教活動として未申告でしたが、国税が収益事業と判断したため約23億8000万円を修正申告しました」(山田氏)

 ただし、創価学会の信者はそれほど多額の献金はしていないと言われる。

「信者たちは、献金は少なくとも、機関紙である聖教新聞を購読することで大いに貢献しているようです。聖教新聞を発行する聖教新聞社は株式会社などの法人格は取得しておらず、学会の一組織という立ち位置です。課税34業に該当する収益事業ではあるものの、著作や新聞の性質上曖昧な分離しか出来ていない状況です」(山田氏)

 創価学会の経費を聖教新聞社の経費として処理したため、国税から修正申告を求められたこともあった。

「消費税減税をやるにしても、社会保険料を引き下げるにしても、何かと財源が問われる高市早苗内閣ですが、宗教法人に課税できれば大いに助かるのではないでしょうか」(山田氏)

デイリー新潮編集部