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 女優の郄石あかり(23)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(月〜土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は20日、第120回が放送され、主人公・雨清水トキと夫レフカダ・ヘブン(雨清水八雲)が共同作業に取り組み、ついに新著「KWAIDAN(怪談)」が完成する過程が描かれた。制作統括の橋爪國臣チーフ・プロデューサー(CP)に舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「バイプレイヤーズ」シリーズやNHK「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」など会話劇に定評のある、ふじきみつ彦氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算113作目。松江の没落士族の娘・小泉セツと、その夫で日本の怪談を世界に紹介した明治時代の作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルに、怪談を愛してやまない夫婦の何気ない日常を描く。

 小泉八雲の代表作となった怪奇文学作品集「怪談」は、最晩年の1904年(明治37年)4月に出版。セツさんが語る民話や伝承に、八雲が独自の解釈を加えて再構成。“夫婦の共同作業”により「再話文学の傑作」へと昇華した。

 トキが「ずっと読みたかったパパさんの本。学がない私でも、読めるの本、楽しいの本、書いてくれませんか」と願い、ヘブンがベストセラーの呪縛から解放されてママさんのために書いた、という展開はドラマオリジナル。トキがヘブンに語った怪談は「むじな」「ろくろ首」「葬られた秘密」「雪女」「耳なし芳一の話」は、実際に八雲の「怪談」(17編)に収録されている。

 「KWAIDAN」誕生に至る作劇について、橋爪CPは「八雲は熊本時代から、日本人の精神性など高尚なテーマで著作を書き続けているわけですが、突然『骨董』(1902年・明治35年)と『怪談』という2つの民話集を出版します。その理由には諸説ありますが、このドラマとしては、怪談で心を通わせ、結ばれた2人がどうやって『KWAIDAN』にたどり着くのか。ふじきさんとストーリーを練りました」と述懐。

 劇中では“オワリニンゲン”と描かれたが「『KWAIDAN』を書くまでに、八雲に作家として立ち行かない時期があったことは、今回、彼の人生をひもといてみて初めて知りました。悩み、苦しんでいるヘブンをトキ目線で見て、夫にとって何が一番の幸せなのかを考えた時、彼は月収400円の帝大教師ではなく“カクノヒト”なんだと。トキの心の中には、熊本時代にヘブンのフィリピン行きが結果的に叶わなかったことが、たぶん残っているのだと思います。自分の幸せと相手の幸せ、自分が生きる意味と相手が生きる意味。ラスト2週は、トキとヘブンに凝縮して描きます」。まず第24週は、お互いのための「KWAIDAN」執筆となった。

 ヘブンの苦悩は老いも要因。劇中53歳になったが、演じる英俳優トミー・バストウの実年齢は34歳。最新の老けメイクを施している。

 特殊メイクを担当したのは、日本の第一人者・江川悦子氏。橋爪CPは「トミーさんは着物姿のシーンもあるので、肌の見える首筋から髪の生え際、肘から手までが特殊メイク。シリコン状のもので地肌を覆っています。(2021年の大河ドラマ)『青天を衝け』の時も、江川さんに(主人公・渋沢栄一役の)吉沢(亮)さんの老けメイクをお願いしましたが、素材が日々進化しているということで、一層リアルになっていて、トミーさんの15センチぐらい前に近づいても、特殊メイクだと分からないほど。僕が見た中で、一番レベルが高い仕上がりだと思います」。SNS上でも違和感のなさに驚きの声が上がっていたが、それを証言した。

 「ただ、トミーさんは大変そうでした。もちろん演技に支障のない柔らかい素材ですが、とはいえ1日中、それを顔に付けているわけですから。トミーさんの普段のメークは1時間もかかりませんが、特殊メイクは約3時間。午前9時からの撮影だと、スタジオ入りは午前6時になります。女性陣も簡単な特殊メイクを使っていて、笑った時などにシワが寄りやすくなっています。今回は、視聴者の皆さんにスッと物語に入り込んでいただきたかったので、特殊メイクにはいつも以上に力を入れて、江川さんを含め3人態勢で臨みました」と明かし、そのクオリティーに手応えを示した。

 この日のラスト、イライザ・ベルズランド(シャーロット・ケイト・フォックス)は「なぜ…なぜ最後にこんな幼稚な」と憤る。

 橋爪CPは「八雲最大のベストセラーは『知られぬ日本の面影』(劇中は『日本滞在記』)で、『怪談』が評価されて売れ始めたのは八雲の没後、昭和に入ってから。八雲の著作に求められていたのは、やはり日本へのエキゾチシズムだったのではないでしょうか。『怪談』を英語で読むと、例えば『むじな(アナグマの異称)』『お女中』『紀国坂(紀伊国坂)』といった日本語や地名が、訳されずにそのまま英単語として登場します。タイトルも『ゴーストストーリー』ではないですし、海外の人からすると、とっつきにくい本だったと思います。『KWAIDAN』が完成した高揚感だけではなく、そういう背景も織り込みたかったので、イライザの最後の台詞につながりました」。イライザが最終週(第25週)「ウラメシ、ケド、スバラシ。」のカギを握りそうだ。

 トキとヘブンが歩む“夫婦道”も、いよいよ終着地が近づく。