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あー、よかった。ちゃんと本能だったんだ。

旅行や出張で初めて泊まるホテルの夜、なぜか妙に目が冴えてしまったり、なかなか寝付けなかったりしたことありませんか?

それ、あなたの気のせいでも「繊細すぎ」だからでもないようです。むしろ脳がちゃんと仕事をしているサインでした。

名古屋大学環境医学研究所の小野大輔講師、竹本さやか教授、上田修平助教らの研究グループが、今年2月に「新しい環境に入ったときに眠れなくなる神経のメカニズム」を解明しました。研究成果は学術誌『PNAS(米国科学アカデミー紀要)』に掲載されています。

なぜか眠れないのは「初日効果」のせい

まず、初めて訪れた場所で眠れないのは「初日効果(First Night Effect)」と呼ばれる現象で、これは神経研究の世界ではよく知られた話です。

でも、「なぜそうなるのか」の神経レベルでの仕組みが、これまでよくわかっていなかったというのです。「環境が新しい」という特定の要因に応答する脳の回路が、どのように覚醒状態を維持しているのか。それが今回の解明で見えてきました。

研究チームはマウスを使った実験で、初めての環境に置かれたとき、脳内のある特定の神経細胞が強く活性化することを突き止めました。それが、脳の「拡張扁桃体(かくちょうへんとうたい)」にあるCRF神経(コルチコトロピン放出因子神経)です。

拡張扁桃体は、恐怖や不安の感情処理で知られる「扁桃体」と隣接した脳の領域です。

CRF(コルチコトロピン放出因子)は、ストレスを感じたときに脳から放出されるとされる物質で、いわば“脳内の緊急警報ボタン”のようなもの。

実験では、CRF神経を人工的にオンにすると覚醒が促進され、逆にオフにすると新しい環境でも眠りやすくなることが確認されました。

つまり初めての場所で私たちの脳は、「まだ安全かどうかわからない。眠るな!」と警戒システムを作動させているわけですね。

「眠れない」を作る物質の正体

さらに研究チームは、CRF神経がどうやって覚醒を維持しているかも突き止めました。

キーとなる物質は「ニューロテンシン(NTS)」という神経ペプチド(脳内の情報伝達物質の一種)です。これは脳の中を走る「伝言ゲーム」の使者のようなものだと思ってください。

CRF神経から放出されたニューロテンシンが、中脳の黒質網様部(こくしつもうようぶ)という覚醒に関わる領域へ届き、そこにある受容体(受け取り口)に結合することで、「起きていなさい」という指令を伝えている。これが「なんか眠れない回路」の全容ということですね。

実験によると、ニューロテンシンを欠損させたマウスでは、新しい環境に置かれても眠りにつくまでの時間が短縮したことも確認されました。となると、ニューロテンシンこそが「初日効果」とも関与していることが示された形です。

不眠症やPTSD治療への応用に期待

今回の発見は「初日効果」の解明だけでなく、人間が抱える「なんか眠れない」の悩みにも改善の期待が持てるものです。

不眠症やPTSD、不安障害では「過覚醒」という状態がよく報告されます。脳が必要以上に「警戒モード」になってしまい、安全な場所だったり、いつものベッドだったりするのに、リラックスできずに体が目覚めていようとするのです。

解明されたCRF神経とニューロテンシンの回路は、まさにその過覚醒を引き起こす仕組みに直結していると考えられます。この回路を制御する薬や治療法が開発されれば、「眠れない夜」に悩む多くの人を助けられるかもしれません。

逆にいうと「どこでもすぐ眠れる人」のほうが、生物学的にちょっと変わっているのかも…?もちろん、現代社会では便利な能力ですけどね。

「ちゃんと眠れない」は意志の弱さでも気持ちの問題でもなく、脳の神経回路レベルで起きていること。今回の名古屋大学の研究結果は、そのことを改めて教えてくれます。眠れない夜だって「自分がダメなんだ」と思わなくていいんです。科学がそう証明しつつあります。

Source: 大学ジャーナルオンライン, PNAS , 日本医科大学

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