◆抜き去るスポーツカーに起こった悲劇

「窓から顔を出し、『ちんたら走ってんじゃねえ!』『どけよ!』と怒鳴っていました。退避エリアもなく、私はどうすることもできなかったので、ただ大通りに出るのを待つしかありませんでした」

 走行している道に落石や崩れた道があると知っていたため、速度を上げることはできなかったとのこと。しばらくすると道が開けてきた。運転手は爆音とともに速度を上げると、麻生さんを睨みながら抜き去っていったという。

 しかし、その数秒後、驚きの光景が目に入った。

「前日は一日中雨が降り、山道もぬかるんだ場所が多かったんです。あおってきた車は大量の雨を吸った落ち葉の上を走っていました。しかも、運の悪いことにあたりの落ち葉はすべて“イチョウの葉”でした。イチョウの葉って乾いていても滑りやすいんですよね」

 それを知らない運転手。大量のイチョウの葉の上でスリップすると、一瞬で姿を消した。なんと、そのまま崖から落ちてしまったのだ……。

「車を止めて崖の下の様子を見に行くと、石や木にぶつかってボコボコになったスポーツカーがありました。私はすぐに警察に連絡しました」

 運転手は20代の若い男で、麻生さんの車に残っていたドライブレコーダーの映像により、事情聴取を受けることになった。男はあおり運転をしただけでなく、父親の車を勝手に乗り回していたようで、迎えに来た父親に怒鳴り散らされていたとのことだ。

 幸い、運転手の男性はかすり傷程度で済んだが、運が悪ければ、命も奪われるような大事故にもつながっていただろう。

◆■改めて知っておきたい「あおり運転」の代償

今回のエピソードのように、一瞬の怒りに任せた行動は、今の時代「一生の後悔」に直結します。警察庁の指導に基づき、現在あおり運転(妨害運転)と認定されれば以下の厳しい処分が下されます。

・免許一発取消し:通行妨害目的で一定の違反をした場合、過去の違反歴に関わらず即座に違反点数25点が加算され、免許取消し(欠格期間2年)となります。さらに高速道路上で相手車両を停車させるなど、著しい危険を生じさせた場合は35点が加算され、欠格期間は3年に及びます。

・厳しい刑事罰:妨害運転罪が適用されると、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科せられます。著しい危険を生じさせた場合は、5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金となります。これらは事故を起こさなくても、違反行為そのものに対して科される非常に重い罰則です。

・実名報道のリスク:悪質なケースでは暴行罪や危険運転致死傷罪が適用され、逮捕や実名報道に至る例も少なくありません。

被害に遭った際は、相手を刺激せず、安全な場所(SA・PA等)へ避難して迷わず110番通報を。最新の交通ルールを正しく知り、冷静な判断で自分と家族の身を守りましょう。

<取材・文/chimi86 再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。