傀儡政権と揶揄された新生チェルシー。周囲の雑音を沈める好調ぶり。エースのパーマーは実感「ロシニア監督は素晴らしい」【現地発】
1月1日に退任が発表されたエンツォ・マレスカ監督の後を継ぎ、ロシニアがチェルシーの新指揮官に就任した。1月6日のことだ。マレスカ監督の退任も電撃的だったが、後任人事もまたサプライズだった。
2022年にチェルシーを買収したオーナーグループ「BlueCo」は、翌年にフランス1部ストラスブールを買い取った。ロシニアはこのストラスブールで指揮を執っており、いわば内部昇格の形での抜擢である。
実際、ロシニアの監督経験はわずか153試合に過ぎない。欧州CLに参戦しているチェルシーの監督にふさわしいのかとの見方は決して間違っていないだろう。
だがストラスブールでは、就任1年目に13位だったチームを7位へと押し上げ、19年ぶりの欧州カップ出場権をもたらす。今季のチームは欧州カンファレンスリーグで5勝1分けと好成績を収め、リーグフェーズで首位に立っていた。フランスで示した確かな上昇カーブが、チェルシー行きの決め手となった。
そして迎えた新体制。蓋を開ければ、公式戦11試合で8勝1分け2敗と好スタートを切った。国内リーグに限れば4勝1分けである。マレスカ体制終盤のリーグ5試合が1勝3分け1敗と停滞していただけに、その軌道修正は鮮やかだ。解説者のポール・マーソン氏も「ロシニアは明確な変化をもたらした」と称賛している。
では、どんなサッカーを見せているのか。
基本布陣は4−2−3−1。システム自体はマレスカ体制と変わらない。だが、プレースタイルには変化がある。
2月10日に行なわれたリーズ戦では、5バックで守備を固める相手に対し、4バックの両サイドバックが高い位置までせり出した。
その結果、右のエステバン、左のエンソ・フェルナンデスが内側へ絞り、中央部の密度を高めた。CFのジョアン・ペドロ、トップ下のコール・パーマーとの距離感が縮まり、細かなパス交換が滑らかになる。
そして幅は、タッチライン際に張る両SBが確保する――。役割分担は明快だ。平河悠が所属するハル・シティとのFA杯4回戦(2月13日)でも、同様のアプローチが見られた。この攻撃スタイルこそ、現時点におけるロシニア体制の“肝”と言える。
一方、マレスカ体制で戦術ポイントだった「偽SB」のシステムは、現時点で採用されていない。マレスカ体制では、両SB、あるいはその片方が中盤中央へ入り、守備的MFの位置で防波堤となるシステムを用いた。
だが、ロシニアはよりシンプルな戦術を選んでいる。複雑さを削ぎ落とし、選手の特長をストレートに引き出そうとしているのだろう。この点は、ロシニア体制がうまく機能しているポイントだ。
もちろん課題もある。失点の多さ、とりわけ安易にゴールを許す場面は依然として改善途上だ。リーグ杯準決勝でアーセナルにホームとアウェーで連敗したように、ビッグクラブ相手にどこまで対抗できるかも未知数である。現段階では、まだ発展途上と見るのが妥当だろう。
前述の通り、チェルシーとストラスブールは、ともにクリアレイク・キャピタルとトッド・ベーリーが率いるBlueCoの傘下にある。
BlueCoのモデルは、傘下クラブが類似したプレースタイルを共有することにある。大改革ではなく、微調整で成果を引き上げる。その一環としてのロシニアの昇格人事だった。
もっとも、現在のチェルシーは特殊なクラブ構造を持つ。スポーツダイレクターが実質5人存在し、オーナー陣も運営に深く関与する。ロシニアの肩書はあくまでも「ヘッドコーチ」であり、「マネジャー」ではない。現場の統括者ではあっても、クラブ内での発言権は限られているわけだ。
一方、前任のマレスカは、より大きな裁量を求めていたと英メディアは報じる。このズレが、最終的にオーナー陣との意見の相違につながったと言われる。
こうした一連のゴタゴタから、ストラスブールからの昇格で誕生したロシニア体制は「傀儡政権」と揶揄された。ストラスブールを率いたことで、チェルシーのSD陣と深い関係を築いているのはメリットだが、こうした背景がロシニアへの見方に対する色眼鏡になっている。
その意味では、公式戦11戦での8勝1分け2敗の成績は、周囲の雑音を静めることにもつながっている。
エースのパーマーは語る。
「ロシニア監督は素晴らしい。彼は僕たち全員に自信を与えてくれる。自由にプレーさせてくれるから、ベストの自分を見せられるようになるはずだ」
もちろん真価が問われるのはここから。相手チームの分析が進む今後の戦いは、これまでとは違う局面になるはずだ。果たしてロシニアは、チェルシーを再建することができるか。
取材・文●田嶋コウスケ
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