【ライブレポート】syudou、主催イベント<PENTATONIC>開催。「齢30にして、人前でギターをかき鳴らす。夢はいつからでも叶うぜ!」

syudouが、自身主催のイベント<PENTATONIC>を1月24日、25日と2日間にわたり、神奈川・横浜BUNTAIにて開催した。本記事では、そんな2日間の様子をお届けしていく。
◾️1月24日/<PENTATONIC>1日目
syudouがキュレーターをつとめ、2日間で計10組が出演するこの<PENTATONIC>は、単なるライブイベントというよりも、ボーカロイドやネットカルチャーから多様に広がる日本独自の音楽シーンの“現在地”を示す、とても意義ある試みとなったのではないかと思う。まずは1日目の模様をレポートしていきたい。
◆DREAMERS

この日の幕開けを担ったのはDREAMERS。syudou、Ayase、すりぃ、ツミキの4人によるユニットだ。本人たちはMCで「オープニングアクト」と名乗ってはいたが、この日の主役たちである。
重厚なSEと共に4人がステージに姿を現すと「ドリーマーズのテーマ」のセッションがスタート。syudouがドラム、ツミキがベース、Ayaseがキーボード、すりぃがギターと、4人が一列に並ぶバンド編成だ。「DREAMERS、始めるぜ!」とsyudouが告げ、まずはツミキ作曲の「アングレイデイズ」を披露。ステージ背後の巨大LEDビジョンには鏡音リンの歌唱する姿が映し出され、バーチャルな歌声と生身のバンドサウンドが混じり合う。

この日が初ライブとなったDREAMERSのステージは、4人が制作したボカロ曲を自らの演奏で届けるというスタイル。特にsyudouがドラムを人前で披露する機会はこれまでほとんどなかったはず。演奏は目を見張るほど巧みで力強い。続いてはAyase作曲の「幽霊東京」。ツミキ、syudouの出会いのきっかけになったという一曲だ。こちらは初音ミクによる歌唱。この日のVOCALOIDキャラクターたちはクリプトン・フューチャー・メディア協力によるオリジナルの3Dモデルの映像での登場だ。




MCでは2019年に遡るDREAMERS結成の経緯も明かされた。「DREAMERSが一体何なのか明確にしておきたい」とAyaseが切り出すと、syudouが「新進気鋭のバンドではなくボカロP旅行サークル」と笑いを誘う。もともと友人同士だった4人が飲みながらツイキャスをしていた時に名乗り始めたのが始まりだという。「俺たちの目的は北海道に旅行することだったのに、まさかBUNTAIに来るとは」と笑いつつも、syudouはこう続けた。「僕ら4人は楽しく和気あいあいとやってますけど、音楽的に馴れ合うこともなければ、誰かが誰かに気を使うこともない。友達という関係でそれができているのが誇らしい」。7年の歳月を経て初ライブのステージに立つ4人の言葉には、互いへの信頼がにじんでいた。


「今日は一日楽しんでいきましょう!」と告げたすりぃ作曲による、鏡音レンが歌う「テレキャスタービーボーイ」へ。疾走感あふれるダンスロックにフロアが沸き立つ。ラストの「ビターチョコデコレーション」ではパワフルなバンドサウンドの上で初音ミクがダークでシニカルなメロディを歌う。演奏を終え、4人は肩を組んでステージ中央へ。「それではPENTATONIC始まります!」と高らかに宣言し、オープニングアクトとしての役割を完璧に全うしてバトンを繋いだ。

◆NOMELON NOLEMON

続いてステージに登場したのは、ボカロPやAoooとしても活動するクリエイター・ツミキとシンガーソングライター・みきまりあによるユニット、NOMELON NOLEMONだ。
先ほどのDREAMERSではベースをプレイしていたツミキが、今度はギターを抱えて登場。「ミッドナイト・リフレクション」では疾走するドラムンベースのリズムに乗せて、みきまりあの力強いボーカルが会場を貫く。フロアからは自然とハンドクラップが湧き起こり、「どうにかなっちゃいそう!」ではオーディエンスがジャンプ。続く「ダダ」でさらに熱量が増していく。

MCでツミキが「さっきも出てたからめちゃ恥ずかしい」と照れ笑いを見せると、会場は和やかな空気に。しかし「SUGAR」では一転、ツミキとみきまりあが共にギターを構え、向かい合って弾き鳴らす。二本のギターが重なる分厚いサウンドは情熱的で、ステージ上の迫力がフロアにも伝播する。そのセンチメンタルな余韻を残したまま、「みんな歌ってください」という言葉に導かれて始まったのは、ツミキの代表曲でもある「フォニイ」。NOMELON NOLEMONのバンド編成では初披露だ。中毒性の高いメロディにオーディエンスのシンガロングが広がった。




「ありがとう、最高です!」 みきまりあが晴れやかな表情で叫び、「INAZMA」へ。タイトル通り稲妻のようなアグレッシブなプレイで観客を圧倒していく。しっとりと染み入るメロディが次第に轟音へと変貌する「night draw」を経て、ラストは「SAYONARA MAYBE」。シンガロングとコール&レスポンスの波がフロア全体を飲み込む。2月11日に3rdアルバム『EYE』のリリースを控えている彼ら。最後の一音までポジティブなエネルギーを放出し続け、大歓声に包まれる中、二人はステージを後にした。

◆すりぃ

続いてステージに現れたのはすりぃ。ギター、ベース、ドラム、キーボードを従えた5人編成で、自身もギターを抱えてセンターに立つ。「さあ、跳べますか!?」という煽りとともに1曲目「ギルティ」が放たれると、強靭なビートとハイテンションな曲調でオーディエンスの熱気に火をつける。
畳みかけるように「エゴロック」を投下し、「さあ、お集まりの音楽バカのみなさん、俺と一緒にバカになりませんか!?」と呼びかけて「バカになって」へ。ダンサブルなビートと中毒性の高いメロディで、オーディエンスのハートを掴む。


MCでは「彼は見ての通りものすごいエネルギーに溢れた人間で、全てに全力投球。やると言ったことは必ずやる」と主催者であるsyudouへの熱い信頼を口にし、「このイベントも5〜6年前から言ってたこと。僕もほんまに嬉しいです」と感慨深げな表情を見せる。「特別な一日になると思うんで、全力で楽しんでください」と告げると、ハンドマイクで「限りなく灰色へ」を歌い上げた。「ジャンキーナイトタウンオーケストラ」では手拍子が自然と湧き起こり、「救ってくれない」では何度も客席を煽りながらテンションを高めていく。



2026年で活動が8年目に入ったと告げたすりぃは、「こういう景色を見ると、続けてきて良かったなと思うんです。お互いに刺激を与え合う存在に出会えたのは本当に良かった」と率直な心情を吐露した。その言葉には実感がこもっていた。
「KISS & CANDY」では高らかなハイトーンのシャウトを響かせ、「中毒性のチュウ」では横ノリのグルーヴに乗せてがなり声を効かせる。終盤はボーカリストとしての多彩な表現力を見せた。そしてラストは「ラヴィ」。くるくると展開が変わる幻惑的な曲調の中「無能無能無能」のフレーズをオーディエンスが大声で歌い上げる。フロア全体を巻き込んだ大きなうねりを生み出し、すりぃはステージを後にした。

◆YOASOBI

ステージに巨大なオブジェが運び込まれ、バンドメンバーとともにikura、Ayaseが姿を現すと、会場のムードが一変した。
先ほどはDREAMERSの一員としてキーボードを弾いていたAyaseが、今度はYOASOBIとして登場。「ぶち上げていけますか!」というikuraの声を合図に「アイドル」が炸裂すると、フロアは沸騰。「オイ! オイ!」のコールが飛び交う中、続けざまに「祝福」、「UNDEAD」とハイテンションなキラーチューンを連射。冒頭からトップスピードで駆け抜け、会場のボルテージを天井知らずに引き上げていく。


「みんなバリバリに温まっとるね、エグい熱量だね!」とAyaseは笑顔で会場を見回し、「あいつのことは結構知ってる気がするが、こんなイベントが打てるようになったんやね」と感慨深げに語る。Ayaseが飲み会でのエピソードも明かしつつ主催者syudouとの深い付き合いを明かす一方、ikuraは「人に愛される男、そして人を愛す男」とその人柄を表現する。



盟友として思いを表明しつつ、しかし、ただの“仲良し”で終わらないのが彼らだ。「対バンイベントなんで、YOASOBIが優勝して帰ろうと思います」という宣言から「セブンティーン」へ。「デカい声が聞きてえなあ!」という煽りに応え、フロアから大きな歓声が上がる。「PLAYERS」では「もう一回、もう一回」のコールが会場をひとつにし、彼らのサウンドのとてつもない迫力とエネルギーが数千人を揺らす。
「やっぱライブめちゃ楽しいね!」「ライブって最高、音楽って最高!」とAyaseとikuraが言葉を交わす。そしてAyaseは「昔からこういうイベントやりたいねって飲みながらよく言ってたんですよ。年も近いし、同じような時期にボカロを始めて。そういう関係を大人になってから音楽の世界で作っていけるとは思ってなかったから、彼は僕にとって特別な存在で」と続ける。そして「音楽の世界は厳しい世界だから、リアルな話、誰かが欠けてもおかしくなかった。俺たちだけでライブイベントをやろうって言ってたことが実現できて、本当に嬉しい」と、感慨を込めて語った。
終盤は、この日がライブ初披露となるハイテンションな新曲「アドレナ」でさらなる熱狂を注ぎ込むと、バンドメンバーのソロ回しを経て「怪物」へ。YOASOBIのライブの強みである芯の太いバンドサウンドが炸裂する。 クライマックスは「群青」。会場中が声を重ねるシンガロングの絶景を作り出し、ラストは「夜に駆ける」。「飛び跳ねろ、横浜!」の掛け声にフロア全体がジャンプで応え、圧巻のステージは幕を閉じた。

◆syudou

そして満を持してsyudouが登場。「それでは本日のトリ、syudou始めます!」という宣言から「神頼み」へ。
高速で跳ねるダンスホールのビートに乗せ、ステージの端から端までを練り歩きながらシャウトする。冒頭からトップギアのパフォーマンスで会場を掌握すると、続く「インザバックルーム」では全身全霊をぶつけるような絶唱に応え、数千人のオーディエンスが拳を突き上げ、BUNTAIを一つにした。
序盤のMCでsyudouは「僕を初めて観る人もいるんじゃないかと思います」と投げかけ、「初めて観る人?」と促すと会場のあちこちで手が上がる。改めて「モテるために音楽を始めた」という自身の原点を明かしつつ、親交の深い仲間が集ったイベントを形にしたことに「少なくとも僕の友達のアーティストからはモテ始めたんじゃないかと確信しています」と笑顔を見せる。そして表情を引き締めて「馴れ合いに来たわけじゃない。俺がここのトリをやるのに相応しいアーティストだっていうのを見せつけに来ました」と告げる。


「取扱注意」からの中盤では、ボーカリストとしての進化も見せた。アコースティックギターのダイナミックな響きに乗せ速射砲のようなフロウを叩き込んだ「アタシ」。ムーディーなピアノの旋律に乗せて朗々と歌い上げた「命綱」。syudouという”異才”の底知れぬ表現力を感じさせる。
中盤のMCでは、syudouが「好きなラッパーが言っていた名言が頭によぎった」と切り出す。「続けるだけでは意味はないけど、続けなくちゃ意味は生まれない」。その言葉から、自身の過去と現在について語り始めた。ボーカロイドで曲を作っていた学生時代に、打算ではなく、単純に曲が良いからコンタクトをとって、会ってみたらウマがあって、そこから4人の関係が続いてきたということ。「そんな関係を続けてきた先に、今日のような舞台を作れた」と告げ、そして「好きで続けてるものがあったら、続けていったほうがいい。大切にしたいプライド、仲間との関係を維持して続けてきたから、こんなライブができてます」と、イベントに込めた思いを明かした。


そんな決意と共に、この日初披露したのが新曲「暴露」。四つ打ちの強靭なリズムにラウドなギターとsyudouの鋭利なラップが交錯する攻撃的なナンバーだ。その後も勢いは止まらない。自らギターを掻き鳴らして始まった「あいきるゆぅ」では、レーザーが飛び交う中、バンド全体が塊となって放つパワーが、観客を圧倒する。
本編ラストは「ギャンブル」。syudouはジャケットを脱ぎ捨て、床が揺れるほどの熱狂を巻き起こす。〈インターネットrep同人〉というリリックを持つ曲。まさに、インターネットや同人音楽のカルチャーを「rep=レペゼン(背負って示す)」してきた面々が揃ったこの日の最後を飾るのにふさわしいナンバーだ。「俺は夜になんて駆けない」の絶叫が、会場に響き渡った。


アンコールを求める大歓声の中、ステージにsyudouとともに現れたのは須田景凪。どよめきが起こる中、syudou × 須田景凪の「ペンタトニック」が披露された。二人の掛け合いからサビでは声を重ね、張りのあるsyudouの歌声としなやかな須田景凪の歌声が絡み合う。この夜限りのスペシャルなコラボレーションだった。
須田がステージを去ると、syudouは「大学時代に『シャルル』がリリースされて、なんて夢があるんだって気持ちと悔しさがあった。そこから約10年経って同じステージに立てている」と感慨を語る。そしてこの日に出演した面々に一言ずつ感謝とメッセージを告げ、最後にDREAMERSの仲間たちへ、こう言葉を贈った。「これからも浮き沈みはあると思います。ただ、我々4人は定期的に集まってしょうもない飲み会をやりましょう。よろしくね」。
「ラスト、爆笑して終わろうぜ」。そう告げて始まった「爆笑」。すべての熱量を燃やし尽くすようなパフォーマンスで、1日目は幕を閉じた。
音楽を通して結びついた仲間たちの絆の強さ、それぞれの負けん気、お互いへのリスペクト。それらすべてが、このスペシャルな一夜に結実していた。

文◎柴 那典
写真◎タマイシンゴ, toya
◾️1月25日/<PENTATONIC>2日目

ボカロシーンからキャリアをスタートした同世代の盟友が集った1日目に対して、2日目のラインナップはChevon、Aooo、須田景凪、なとり、syudouと、世代もジャンルもバラバラな面々だ。しかし、そうした枠組みを超えて相通じるセンスや熱量を感じる1日となった。
◆Chevon

まずトップバッターに登場したのはChevonだ。SEが鳴り響く中、大歓声に迎えられてボーカルの谷絹茉優、ギターのKtjm、ベースのオオノタツヤの3人がステージに姿を現す。
1曲目は「ノックブーツ」。谷絹はステージを歩き回り、時に腰掛けながら妖艶なハイトーンボイスを響かせる。目が離せない存在感だ。続く「サクラループ」ではKtjmがテクニカルなギターソロを炸裂させ、フロアの熱量を一気に高めていく。オーディエンスのほぼ全員が手を上げて身体を揺らす「るてん」で会場が一体となると、「騒げますか!?」という谷絹のコールに応えて盛大なシンガロングが巻き起こった「冥冥」へ。四つ打ちのビートがフロアを包み込み、心地よい高揚感が満ちていく。



MCで谷絹は「どっちが格好いいとかじゃねえんですよ。ここが一番リアルで、最後に一番幸せな顔して帰ったヤツが優勝なんですよ」。前日にはラウドロックの猛者たちやアイドルグループがラインナップに並ぶフェスに出演していた彼ら。ジャンルの壁を越えて支持を広げてきたバンドの覚悟を感じる。
「大行進していこうと思います」という宣言と共に始まった「大行侵」では、谷絹が四股を踏むようなパフォーマンスを見せ、ダークでヘヴィなサウンドに乗せて妖しいメロディを歌い上げる。「Banquet」では迫力たっぷりのシャウトを轟かせ、オオノタツヤとKtjmによるベースとギターの掛け合いから「銃電中」ではダンサブルなビートが観客の興奮を煽る。


「ここで限界迎えて、こっから限界突破していこうぜ!」という谷絹の呼びかけを合図に、終盤は「ダンス・デカダンス」から「FLASH BACK!!!!!!!!」と息もつかせぬ展開。「今日はPENTATONICという一つの塊になって、思いっきり盛り上がれよ!」という叫びに、フロアは割れんばかりのコール&レスポンスで応え、狂騒的な熱狂を生み出していく。
ライブハウスからキャリアをスタートさせ、数々のフェスで実力を証明し勝ち上がってきたChevon。その勢いと底知れぬポテンシャルを見せつけるステージだった。

◆Aooo

続いてステージに登場したのはAoooだ。石野理子(Vo, G)、すりぃ(G)、やまもとひかる(B)、ツミキ(Dr)という豪華なメンバーが配置につく。すりぃとツミキは1日目に続いて2日連続の出演。さらにツミキはDREAMERSでベース、NOMELON NOLEMONでギター、そしてAoooでドラムと、3つのバンドで異なるパートを担う八面六臂の活躍だ。
「みんな最後まで楽しんで!」という石野の声を合図に「CRAZZZY」でライブはスタート。目まぐるしい展開の楽曲を、中間部では4人が向かい合ってプレイするなど、ひとつの塊となったバンドアンサンブルで駆け抜ける。オーディエンスのハンドクラップが沸き起こった「サラダボウル」、石野のきらびやかな歌声が映える「魔法はスパイス」と、フロアの温度を着実に上げていく。



MCで石野はsyudouから楽屋に手紙が届いていたというエピソードも明かしつつ「リスペクトを込めて熱いライブをしていきたい」と意気込みを告げる。「Geeek」から「FLASH FORWARD」へと続く流れでは、YOASOBIなどのサポートのみならずソロアーティストとしても活躍するやまもとひかるの華やかかつ剛健なベースラインと、ツミキの野性的で手数の多いドラミングが絡み合い、強靭なグルーヴを生み出す。その熱量に乗せ、熱のこもったフレーズを次々と畳み掛ける「BAQN」へと駆け抜けていった。


後半は、メンバー全員で作詞作曲を手がけたという「スターサイン」から。石野がギターを抱え、センチメンタルなメロディを伸びやかに歌い上げる。続く「水中少女」でもギターを掻き鳴らし、甘酸っぱい歌声を会場の隅々まで届けた。 すりぃ、やまもと、ツミキという強烈な個性派揃いのメンツだからこそ、その中心で凛と響く石野理子の歌声が際立つのを感じる。
「ハチャメチャに騒げますか!? 私たちと一緒に飛べますか!?」という石野の叫びからラストは「Yankeee」。切れ味鋭いプレイの応酬に「♪LaLaLa」のシンガロングが重なり、大きな歓声の中でステージを降りた。

◆須田景凪

続いてステージに立ったのは須田景凪。「<PENTATONIC>楽しみにしておりました、よろしくお願いします!」という挨拶から「パメラ」でライブはスタートする。「雨とペトラ」と、ボカロP・バルーン名義で発表した楽曲を続け、オーディエンスを一つにしていく。
実は須田は、この日のラインナップにおけるキーパーソンでもある。バルーン名義で2025年にリリースした企画アルバム『Fall Apart』にはChevonとなとりが参加し、ライブでの共演もある。syudouとは「ペンタトニック」でコラボレーションし、ツミキ、すりぃとも交流がある。MCで須田は「いろんなイベントに出てきたけれど、友達が主催して、出演アーティストも全員友達というのは初めて。誰よりも一番俺が楽しんでやろうという気持ちでやってきました」と嬉しそうな表情を見せた。



「希望の歌を歌います」と届けた「メロウ」では、サビのメロディをオーディエンスに委ね、会場全体が高揚感に満ちた温かい空気で包まれる。「ミーム」ではフックの強いフレーズの応酬で畳み掛け、さらに「ここで全部出しきっていこうぜ!」と「パレイドリア」へ。ハンドクラップが沸き起こり、フロアの興奮が加速する。「音楽のことを愛してますか? PENTATONICのこと愛してますか? そんなあなたへ最大級の愛を込めて」と披露した「ラストルック」では、力強い歌声が会場の隅々まで響き渡った。


MCでは「syudouと初めて会ったのが結構前で。はじめましての前にベロベロの状態でチューしてきて、やべえヤツだと思った記憶がある」と主催者syudouとのエピソードを語り、会場の笑いを誘う。「そんなsyudouにクソでかい拍手をお願いします」と友を称え、須田は続けて自身の思いをこう語った。「生きていく中でダルいこととかしんどいことってあるじゃないですか。でもそのしがらみがあるからこそ、解き放たれた時の自由が尊い。今日はまさにその“自由”の日だと思うから、暴れ散らかしてほしい」。そして「その“しがらみ”と“自由”について考えた新曲」として「リベラ」を披露した。
今の須田景凪を代表する「ダーリン」で大きなシンガロングを巻き起こし、「めちゃくちゃ幸せな時間でした」と告げてラストは「シャルル」。会場が一つになったアンセミックな余韻を残し、須田はステージを降りた。

◆なとり

続いてステージに現れたのはなとり。「誰よりもブチかましに来ました」という宣言通り、「IN_MY_HEAD」で最初からトップギアに入る。オーディエンスがタオルを振り回し、フロアは早くも沸騰状態だ。
バックを固めるのは、SuchmosのTAIKING(G)、BREIMENのジョージ林(Sax)、モチヅキヤスノリ(Key)、西月麗音(B)、神田リョウ(Dr)という実力派の面々。シルキーな低音ボイスを持ち味とするなとりだが、「エウレカ」では咆哮に近いパワフルなシャウトも聴かせ、そのボーカルの振り幅を見せつける。


軽やかな「プロポーズ」で会場を一つにすると、続く「金木犀」ではジョージ林の洒脱なサックスを活かしたジャジーなライブアレンジを披露。楽曲ごとに異なる表情を見せていく。
MCでは「ネット音楽をこんなに愛してくれる人がいて感慨深い。私たちを愛してくれる人がこんなにいることを嬉しく思います」と、自身のルーツと主催者への思いを語った。そして「初めて飲みに行った時に『フェスをやりたいんだ』と言っていたのを思い出して。今、こんなにたくさんの人が集まっていることを尊く思います」 とsyudouとの思い出を振り返る。敬意と喜びを抱えつつ、「全員ぶっ倒して帰ろうと思います」と彼らしい言葉で闘志を燃やした。



後半戦は、グルーヴィーな「DRESSING ROOM」でオーディエンスの身体を揺らし、ダークに疾走する「非常口 逃げてみた」へ。「跳べ!」と煽り、オーディエンスのジャンプにフロア全体が波打つ。そして、イントロが鳴った瞬間に大歓声が上がったのは代表曲「Overdose」だ。気だるくも中毒性の高いメロディが会場を支配し、ボルテージはさらに上昇する。ハイテンポな「SPEED」を畳みかけ、ラストは「本気でかかってこい!」と放った「絶対零度」。狂騒の熱気を極限まで高め、「次は愛するsyudouさんです! また会おうぜ!」と雄々しく叫んでステージを去っていった。

◆syudou

そして2日間のラストを飾るのは主催者、syudouだ。大歓声に迎えられてステージに現れると、「大トリsyudou、始めます!」と宣言し、「神頼み」からライブをスタートさせた。バンドメンバーはKuboty(G)、ホリエマム(Dr)、長島涼平(B)、モチヅキヤスノリ(Key)という初ライブから不動の布陣。モチヅキは須田景凪、なとりに続いて3ステージ連続の出演だ。「インザバックルーム」ではsyudouはステージの端に腰掛けたりお立ち台に上がったりと縦横無尽に動き回りながら歌い、フロアを熱狂の渦に巻き込んでいく。
「昨日はガチの友達を軸にやったエモさがあったんですけれど、今日は関係値がある友達であると同時に、正直『2026年、絶対観といた方がいいだろ』というメンツが揃いました」と、キュレーターをつとめた2日間のラインナップを振り返る。「誰よりも謙虚に、全員から学んで、より大きくしていきたい」と主催者としての抱負も語った。


「昨日の夜は苦渋の決断で飲みに行かず直帰して…流石に今日やりきったら打ち上げをやりたい、というかへべれけになりたい!」と披露されたのは「へべれけジャンキー」。軽快なビートで踊らせた後は、「アタシ」から「ビターチョコデコレーション」へ。1日目にDREAMERSのステージで初音ミクが歌った同曲を、2日目は生身のsyudouが歌い継ぐ。この2日間の物語が繋がった瞬間だ。
この<PENTATONIC>というイベントは、単なる「ボカロシーン」の祭典でもなければ、「ネットカルチャー」という枠組みだけで語れるものでもない。Chevon、Aooo、須田景凪、なとり、そしてsyudou。彼らを一言で括る既存の音楽ジャンルは存在しないだろう。それでもこの日のオーディエンスは、そこに“シーン”が確実に存在するのを感じ取っていたはずだ。出演者全員が互いにリスペクトしながらも、ライブパフォーマンスでは本気で勝ちにいく。そんなバチバチとした緊張感が、イベント全体を貫いていた。


後半、syudouは自身の内面を吐露するように語り始めた。「さぞ陽気な人物なんだろうと思いの方もいるかと思いますが、正直僕は、こういう大きいイベントが楽しめなかった身で。どこに居てもイマイチ馴染めない、ある種の疎外感を感じてました」。そして、「俺自身が楽しい場所を作って、みんなと盛り上がる場を作るべきだった。媚びるべきじゃなかった、俺がやるべきだった」と、2日間の達成感を噛み締めていた。
そして「あの頃できなかったけれど、齢30にして、人前でギターをかき鳴らす。夢はいつからでも叶うぜ!」と叫び、ギターを抱えて新曲「暴露」を披露。フロアからは拳が突き上がる。ヘッドバンギングが巻き起こった「あいきるゆぅ」を経て、「最高に楽しい!」と絶叫。「笑って締めましょう!」と本編ラストの「爆笑」へとなだれ込み、狂気と熱狂が入り混じるカタルシスの中で本編を終えた。
アンコールで呼び込まれたのは、この日のキーパーソンでもある須田景凪。二人が掛け合いで歌うのは「ペンタトニック」だ。もともとは『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の5周年アニバーサリーソングとして書き下ろされた曲だが、「でも僕ら1人で行こうと独りではないんだ」という歌詞を声を合わせて歌うこの曲は、この<PENTATONIC>というイベントのテーマソングとしても機能していた。

須田がステージを去ると、syudouはこの曲への思い入れと共に、自身がシンガーとして歌い始めて5年目であること、各日5組のアーティストが出演することなど、いろいろな意味が重なったイベントタイトルの由来を明かす。Chevon、Aooo、須田景凪、なとりへの感謝を丁寧に告げ、「次の開催は決まってないけど、今回楽しかったですよね。またやりたいですよね」と語り、客席の反応を受けて「来年やろう!」と宣言し、「5年続けたい」と言い切った。
最後に「一番自分らしい楽曲で締めたい」として選んだのは「ギャンブル」。「このイベントが続いていくかも決まってない。だけど常にギャンブルなのが人生だ!」と叫び、フルパワーで歌う。集まった全員がエネルギーを出し切るようなエンディングだ。最後は生声で「本当にありがとうございました!」と叫んでステージを降りた。
新しいシーンが生まれる。ここから脈動が始まる。そんな実感を得た2日間だった。


なお、この<PENTATONIC>の2日間の模様は、2月5日20時よりABEMAにて1週間無料配信される。配信アーティストはsyudou、Aooo、須田景凪、すりぃ、DREAMERS、NOMELON NOLEMON、YOASOBI。こちらも是非チェックしてみてほしい。
文◎柴 那典
写真◎タマイシンゴ, toya
関連リンク
◆syudou オフィシャルサイト
◆syudou オフィシャルX
◆syudou オフィシャルInstagram
◆syudou オフィシャルYouTubeチャンネル
◆syudou オフィシャルTikTok
