社員の平均年収としては1000〜2000万円は普通だが、毎週1本以上のペースで新規の契約を獲得し続けなければならないので、これは結構きつい。逆に言うと、それくらいの成果を出せない人は辞めてしまうので、生き残ることができるだけの能力がある社員はそれくらいの年収になる。

 誤解されがちだが、会社からノルマのようなものが課されることはあまりなく、成績が上がらなければ給料が低くなるだけで、会社から詰められるということもあまりない。生活できないほどの低い給料になれば辞めて転職すれば済む話なので、ある意味でフェアな環境だと個人的には感じる。先ほど働き方は自由と言ったが、金融機関なので顧客や保険募集に関係する第三者との金銭のやりとりにはシビアで、顧客などからお金を借りたりもらったりすることは社内規則で禁止されている。発覚したら解雇されても文句はいえない。教育制度は充実しており、金融知識のスキルアップを図りたい人にとっては良い環境だ。

 また、私がいた頃は年1回、成績上位者とその家族をハワイの高級ホテルで行う表彰式イベントに招待するという制度があり、会社のお金でハワイ旅行ができるというインセンティブも用意されていた」

◆「御用聞き」の信頼が招いた、予期せぬ落とし穴

 そんな同社で今回のような不正が起こった要因はなんなのか。

「保険の営業職に限らず、証券、住宅などの不動産、自動車の個人営業職の人は、一人ひとりの顧客とのつながりと信用を重視するので、たとえば保険の営業担当者が御用聞きのような立場で顧客から投資や不動産購入、旅行などさまざまな相談に乗り、信頼できるプロを紹介するといったケースは多い。なので、これらの業種の営業担当者が手を組んで、お互いに顧客を融通し合うことも少なくない。ちなみにその過程で内々にお互いに紹介数に応じてフィーの授受が発生することはプルデンシャルでは原則として禁止されている。

 そうしたなかで、プルデンシャルの営業担当者が協力関係にある投資関係の人物から依頼され、それが詐欺話なのかどうかよく分からずに、自分の顧客に投資話を持ちかけてしまったというケースは考えられる。これは保険商品の勧誘にからむかどうかという話以前に、個人による犯罪まがいの行為であり、裁判を通じて司法の判断を仰ぎ、個人が処罰を受けるべき話だろう」(同)

◆プライベートへの介入で、組織の活力が失われるか

 ここ数年、生保業界では不祥事が絶えない。20年には第一生命保険の元特別調査役による約19億円の金銭詐取事件が発覚。女性は計24人の顧客に架空の金融取引を持ちかけていた。23年には、日本生命保険の元営業職員が90代の女性に架空の保険契約を提案して約1532万円をだまし取っていた事案が発覚。24年6月には、明治安田生命保険の元営業職員が顧客10人から約1億3000万円をだまし取っていたことが発覚。25年3月には大樹生命保険が、元営業職員が顧客から約8130万円を詐取していたと発表。同12月には明治安田生命保険が、元営業職員が約2億円の詐取を行っていたと発表した。

 プルデンシャル生命は再発防止策として前出報告書内で「営業報酬制度等のインセンティブの仕組みの抜本的改善」「営業社員が、いつ、どこで、どなたに対し、どのような営業活動を行っているのか、を適時、適切に把握・管理する態勢を強化」などをあげているが、元社員はいう。

「プルデンシャルの競争力の源泉は完全歩合制に基づく高い報酬なので、その報酬制度が大きく変更されることになれば、社員のモチベーションは大きく低下することになるし、優秀な営業担当者は高い報酬が得られる別の会社・業界に転職していくだろう。

また、同社の営業担当者は顧客とゴルフに行ったり飲みに行ったりといったことも含めて、休日・深夜いとわず、さまざまなかたちで顧客との人脈を構築することで契約に結びつけているので、たとえばプライベートでの過度な交際を制限するなど、陰の営業活動を管理したり制限すれば、同社の競争力を大きく損なうことにつながる。

富裕層や高収入層の多くにはすでにプルデンシャル、そして他社の保険会社がべったり張り付き、なかなか新規顧客の開拓が難しくなりつつある。加えて、金融商品の多様化で生保商品以外の選択肢も増えるなかで、プルデンシャルの置かれる状況はますます厳しくなってくるのは確かだろう」

 近く行われる予定の会見でプルデンシャル経営陣が何を語るのかが注目される。

<TEXT/山田浩二>

【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。