“魔境”J2でジュビロが掲げた理想と突きつけられた現実。シーズン移行に備え、百年構想リーグで重視すべき姿勢
2022年9月に就任した藤田俊哉スポーツダイレクターは、26-27シーズンのJ1優勝を大目標に据え、ボールを支配し、試合を支配する攻撃的なフットボールを志向してきた。その方針のもと、23年には横内昭展監督(現・モンテディオ山形監督)を迎え、FIFAからの移籍禁止という制約下で、1年でのJ1復帰を果たしたが、24年は最終節で残留を逃し、再びJ2へ降格する結果となった。
シーズン序盤から、理想が結実した試合も少なくなかった。昇格争いを演じる上位チームとの直接対決や、ルヴァンカップでの清水エスパルス戦、ガンバ大阪戦では互角以上に渡り合い、アクションフットボールの手応えを示した。
一方で、徹底して対策を施してくる下位チームには苦戦が続き、アウェーだけでなく、ヤマハスタジアムでの勝率は安定しなかった。良くも悪くも試合内容と結果の振れ幅が大きく、積み上げがきかない状況が続いた。
決定的となったのは、31節のRB大宮アルディージャ戦だった。2−0とリードしながら、そこから逆転を許した試合は、チームの不安定さを象徴していた。藤田SDによれば、その前の藤枝MYFC戦での敗戦を受け、クラブは本格的に監督交代を検討するに至ったという。
戦術面に加え、トレーニング負荷の少なさや、夏の中断期間に6日間のオフを取ったことなど、フィジカルと試合感覚のマネジメントにも課題が残り、終盤の失速を招いた側面は否定できなかった。
残り7試合でチームを引き継いだのは、U-18を率いていた安間貴義監督だった。安間監督は就任直後から、あえて「昇格」という言葉を口にし、選手に自覚を促すと同時に、シーズン中としては異例の体力強化に踏み切った。残り2か月を一つのセットと捉え、最初の1か月を意識改革とフィジカルの立て直しにあてる。そのうえで、プレーオフを戦い抜く現実的なチーム作りを進めた。
リーグ戦の残り4試合でシステムを3−5−2に変更すると、磐田は粘り強く勝点を積み重ねていく。V・ファーレン長崎戦での1−0の勝利を皮切りに、レノファ山口FC戦では2−1の逆転勝ち、山形と2−2の引き分け、鬼門とされた敵地でのサガン鳥栖戦では2−1で勝利。最終的に5位でJ1昇格プレーオフに滑り込んだ。
特に鳥栖戦で見せた、終盤まで勝機を手放さない姿勢と、交代選手を含めた役割の明確さは、チームが掴んだメンタリティの成果と言えた。
しかし結局、J1昇格という歓喜のフィナーレには届かなかった。昇格プレーオフ準決勝で徳島ヴォルティスを退けることはできず、磐田の2025シーズンは幕を閉じた。試合後、ピッチに崩れ落ちた選手たちの姿が象徴するように、理想と現実の双方を背負った1年だった。
この試合の安間監督の采配に関しては批判的な声も多く見られる。1−0とリードしたところから、なぜ追加点を取るための積極的な選手交代ができなかったのか。チーム得点王であるマテウス・ペイショットをベンチに残したまま、試合が終わったことも不完全燃焼感の要因かもしれない。
ただし、絶望的な状況から5勝1分け1敗という、残り7試合の成績ではリーグ最高のそれでプレーオフに滑り込めたのは、間違いなく安間監督の功績だ。“たられば”を言えばキリはないが、突き詰めればリーグ5位という結果が、シーズンの位置付けを端的に表わしている。
J1昇格は通過点であり、最終目標はJ1で躍進し、タイトルを獲得すること。その理想を掲げること自体は間違いではない。ただし、J2での昇格争いは、J1でタイトルを狙うこととは異なる難しさをはらむ。
ハッチンソン監督が目ざしたような主導権を握るスタイルを軸にしながらも、安間監督が強調した“球際、切り替え、ハードワーク”に向き合う。そして磐田対策をしてくる下位との戦いほど、際の勝負にこだわることができるか。その姿勢を来季の百年構想リーグから見せて、来るシーズン移行に備えていってほしい。
取材・文●河治良幸
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